超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

THE NOVEMBERS「paraphilia」全曲レビューその2「dnim」

2012-03-03 23:02:29 | THE NOVEMBERS 全曲レビュー





THE NOVEMBERS全曲レビュー通算26曲目「dnim」です。





2.dnim




タイトルは「mind」の逆さ読みで心が吊るされてる状態を示していると思われる。
初っ端からザクザク切り刻むように鳴らされるギターリフやタフで重厚な演奏を聴かせるリズム隊
サビでは直情的な叫びを歌い散らかすボーカリゼイションを炸裂させる。
それと同時に、
何気に隙間のあるサウンドにもなっていて、メロディアスな部分も健在で
ノベンバの楽曲の中でも特にキャッチーでエモーショナルな魅力を秘めている一曲
単純に激しい曲ですけど
その中にも美しさを感じさせる雰囲気が漂ってたりで、
人間の悲鳴のような汚さと、それが与える耽美的な感覚を上手く融合出来てる印象の曲で中々に面白く
部屋で一人で聴いて盛り上がるのにも適している勢いのある名曲
勿論ライブで聴いても相当の迫力が滲んでいます。

特徴的なのは、叙情的なギターフレーズが鳴り響く中で歌い叫ぶボーカルとの対比といいますか
片方は美しい旋律を奏でているのに片方は赤子のように激しく泣き叫ぶ原始的な音を出している訳で
その心地の良い、オルタナティブなミスマッチ感がこの曲の最も強い魅力であり
ある意味ではノベンバの本質とも思える
バンドを象徴する楽曲の一つにもなってるんじゃないかと。
汚れの中にある美しさ
美しさの中にある汚れ。
そんな風に考えると余計に感情を込めて聴けるからそこも含めてオススメの一曲ですね。
感情的な部分は往々にしてあるんですけど、その実哀愁や儚さ、郷愁までも漂ってるのが秀逸な曲です。




【止まればつかまり 走れば落ちそうな】

立ち止まる事は許されないけれど
かといっても一生懸命走っても墓穴を掘るって言う
あまりの逃げ場のなさ
選択の余地のなさ。
頑張っても頑張ってもその度に限界にブチ当たって何のイメージも広がらず、
でも止まってりゃ不安だし生きられないしで
結局は苦しみを味わうしかないんだ、っていう根本的な事実が歌われています。
その真ん中でやり切れない気分に陥った時に
身に沁みるフレーズ、
剥き出しのようで剥き出しにもなれない本音と建前の真ん中をウロウロするだけの日常。
正に「裸ですらない」僕や誰かの日常の歌。


【ここにいたいなら笑っていろ】

自由気ままになんて言葉はどこ吹く風で、
逆らえば落とされ、誰の尾っぽに巻かれてご機嫌伺って
結局は従うだけの人生な訳で
半分は作り物でしかない
したくない顔をして、苛立ちを飲み込んで、ヘラヘラ笑って過すだけのしょうもなさの中で
絵に描いたようなまともな世界は永遠にやってくることはない
本当の自分を見せれるのは自分だけって現実もありつつ
誰の言う事も
誰の知る事も分からなくなって
無力で置き去りにもされるけれど、だけど・・・


【愛してるだけ】

じゃあなんで諦めずに生きてるのかというと、
それでもここに存在する自分だったり最低限の快感が存在するこの世界を愛してるだけ、
それら以外の目的なんてないと言っても過言ではない
でもそれが何よりも大切で。
自分が嫌いなんて言ってる人もいるけど、ちゃんと毎日生活して自分をある程度幸せにしてる時点で
本質的な意味で嫌いな訳がないんですよね。それは単なる逃げだとは思うけど
そんな自分自身を幸せにする何気ない行為や
生活の糧に生かされてるのは間違いなく
逃げ場なんて一つもなくても、仮面だらけの日常でも、それでも自分は愛してるだけ
逆に言えばそれが生きていく指標にもなりえる、っていう。
そういう強い気持ちが滲み出てる渾身の一曲
頭の中でいろいろこんがらがって訳が分からなくなった時に作用する楽曲でもあります。
何の理屈も理由も建前もしがらみも捨てて、ただ愛してるだけなんだって。
シンプルで人間らしい詞だなあ、とも思います。





歌やサウンドだけ聴けば格好良い曲ですけど
その本質はものすごく余裕がなくて必死にあがいてる曲だったりして
そういうギャップもまたノベンバらしい部分だなあとしみじみ。



妖狐×僕SS(いぬぼくシークレットサービス) 第8話「お茶と距離」 感想

2012-03-03 03:35:36 | アニメ





ありあまるピュアネス。




いや~本当に素晴らしい話でしたねー(笑)。積み重ねの作品ならではの感動。
今時ここまで丁寧に距離感を縮めるお話ってあんま見かけないんですけど
だからこそ古き良き恋愛作品って感じでグッと来るのも事実
一つ一つの展開や演出を重ねて辿り着いた結末が素敵で
それはまるで編み物のようなストーリーですよね。添加物っぽい作品に思えて実際は無添加っていうか。
そんな登場人物のたっぷりのピュアな気持ちが詰まってた8話、今まででもベストの出来だったかと思います。

ある意味無垢すぎて昭和にまで戻ってるんじゃないの、って内容で
とても平成24年に放送される作品とは思えない純粋さ
でもこういうのが本来の距離感の描き方なんじゃないかなあ、って思ったりもする。
その辺は少女漫画のエッセンスも感じるんですけど
裸Yシャツだったり、美少女多目にトッピングだったりと絵的には男向けの作品なワケで
そんなルックスで編み物みたいに丁寧な展開っていう本質が面白いし
大雑把な部分が一切ないっていうのは大きな個性ですよね。
珍しいくらいに健気で、一人でじっくりシュミレートして、思い出を頼りに頑張って・・・
メインヒロインであり主人公でもある凛々蝶の魅力を余すことなくめいっぱい描いている上で
そのこの作品最大限の武器を駆使した後に
お話的にも満足のいく着地点を用意してるっていう脚本の素晴らしさ。
キャラ良し、展開良し、結末良しって事でオートマティックに楽しめた印象の回でもあって
いぬぼくの面白さが一気に凝縮されてるなー、とも感じられたお話でしたね。
純朴過ぎるラブストーリー、
でもその純朴っぷりが振り切れているから
これはこういうものだ、って感じで観れる良さと分かりやすさがある。
そんな繊細さと雰囲気描写の秀逸さが光った、それに加えて感動も追加された傑作回でした。
テーマ的に持続してるからこそ、持続の果ての縮まる瞬間が楽しいっていう。


双熾は完璧人間みたいに描かれてるけど
実際はご奉仕を中心に、爛れた関係も含めてそれだけで生きてきたから
それ以外の接し方が分からない、っていう。これってよくよく考えたら凛々蝶とは反対の性質な訳で
その対比も面白いんですけど、彼女が言ってた通り似てるっちゃあ似てるんですよね。
両方偏執的な生き方をしてきたなっていうか、決して器用じゃない接し方ばっかりだったと。
だから表向き高飛車と奴隷の如く尽くす側って事で均等は取れてたんですけど
でもそれじゃ何も変わらないな、って事で
凛々蝶は素直になれたんですけど
じゃあ今度は双熾の番だなという感じで要するに今度は彼の方が心を開く段階だと思うんですよね。
それにも事情があるって知った今、また一つ双熾の本質を知れたとも言える訳で
文字通りスタート地点っていうか
ここからは凛々蝶自身がどんどん引っ張っていく番なんじゃないかな、とも思いました。
そう考えると都合の良いようで実は堅実なお話だなって気もしてくるから不思議です。
その為の一歩を踏み出せたって内容の今回、
正にここ数週の一つの成果が結実したって感触で
更に言えば友達作りも微妙に成功してるしで堂々巡りのようでちょっとづつ進んでるって構成がステキ。
双熾の抱えるコンプレックスが改めて明らかになった今、二人三脚で頑張って欲しいものですね。





美少女キャラをめいっぱい楽しむというお手軽な部分と
一歩ずつ確実に縮まる距離を楽しむという繊細が手を組んだ素敵なお話でした。
目にクマが出来るほど相手の為を想って悩む凛々蝶さまは本当に可愛かった、と同時に
彼女が思ってるほど気付けてないって訳でもないのかな?とも思いました。
そういう尽くしたいって部分も何気に似てて微笑ましいですよね。