THE NOVEMBERS全曲レビュー通算26曲目「dnim」です。
2.dnim
タイトルは「mind」の逆さ読みで心が吊るされてる状態を示していると思われる。
初っ端からザクザク切り刻むように鳴らされるギターリフやタフで重厚な演奏を聴かせるリズム隊
サビでは直情的な叫びを歌い散らかすボーカリゼイションを炸裂させる。
それと同時に、
何気に隙間のあるサウンドにもなっていて、メロディアスな部分も健在で
ノベンバの楽曲の中でも特にキャッチーでエモーショナルな魅力を秘めている一曲
単純に激しい曲ですけど
その中にも美しさを感じさせる雰囲気が漂ってたりで、
人間の悲鳴のような汚さと、それが与える耽美的な感覚を上手く融合出来てる印象の曲で中々に面白く
部屋で一人で聴いて盛り上がるのにも適している勢いのある名曲
勿論ライブで聴いても相当の迫力が滲んでいます。
特徴的なのは、叙情的なギターフレーズが鳴り響く中で歌い叫ぶボーカルとの対比といいますか
片方は美しい旋律を奏でているのに片方は赤子のように激しく泣き叫ぶ原始的な音を出している訳で
その心地の良い、オルタナティブなミスマッチ感がこの曲の最も強い魅力であり
ある意味ではノベンバの本質とも思える
バンドを象徴する楽曲の一つにもなってるんじゃないかと。
汚れの中にある美しさ
美しさの中にある汚れ。
そんな風に考えると余計に感情を込めて聴けるからそこも含めてオススメの一曲ですね。
感情的な部分は往々にしてあるんですけど、その実哀愁や儚さ、郷愁までも漂ってるのが秀逸な曲です。
【止まればつかまり 走れば落ちそうな】
立ち止まる事は許されないけれど
かといっても一生懸命走っても墓穴を掘るって言う
あまりの逃げ場のなさ
選択の余地のなさ。
頑張っても頑張ってもその度に限界にブチ当たって何のイメージも広がらず、
でも止まってりゃ不安だし生きられないしで
結局は苦しみを味わうしかないんだ、っていう根本的な事実が歌われています。
その真ん中でやり切れない気分に陥った時に
身に沁みるフレーズ、
剥き出しのようで剥き出しにもなれない本音と建前の真ん中をウロウロするだけの日常。
正に「裸ですらない」僕や誰かの日常の歌。
【ここにいたいなら笑っていろ】
自由気ままになんて言葉はどこ吹く風で、
逆らえば落とされ、誰の尾っぽに巻かれてご機嫌伺って
結局は従うだけの人生な訳で
半分は作り物でしかない
したくない顔をして、苛立ちを飲み込んで、ヘラヘラ笑って過すだけのしょうもなさの中で
絵に描いたようなまともな世界は永遠にやってくることはない
本当の自分を見せれるのは自分だけって現実もありつつ
誰の言う事も
誰の知る事も分からなくなって
無力で置き去りにもされるけれど、だけど・・・
【愛してるだけ】
じゃあなんで諦めずに生きてるのかというと、
それでもここに存在する自分だったり最低限の快感が存在するこの世界を愛してるだけ、
それら以外の目的なんてないと言っても過言ではない
でもそれが何よりも大切で。
自分が嫌いなんて言ってる人もいるけど、ちゃんと毎日生活して自分をある程度幸せにしてる時点で
本質的な意味で嫌いな訳がないんですよね。それは単なる逃げだとは思うけど
そんな自分自身を幸せにする何気ない行為や
生活の糧に生かされてるのは間違いなく
逃げ場なんて一つもなくても、仮面だらけの日常でも、それでも自分は愛してるだけ
逆に言えばそれが生きていく指標にもなりえる、っていう。
そういう強い気持ちが滲み出てる渾身の一曲
頭の中でいろいろこんがらがって訳が分からなくなった時に作用する楽曲でもあります。
何の理屈も理由も建前もしがらみも捨てて、ただ愛してるだけなんだって。
シンプルで人間らしい詞だなあ、とも思います。
歌やサウンドだけ聴けば格好良い曲ですけど
その本質はものすごく余裕がなくて必死にあがいてる曲だったりして
そういうギャップもまたノベンバらしい部分だなあとしみじみ。