超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

咲-Saki- 9巻/小林立

2012-03-24 22:17:47 | 漫画(新作)





小林立「咲-Saki-」9巻読了。





中々にサクサク進む全国大会、あっという間に和の出番になりましたが
その過程も過程で随分と面白いなあって感触でした。
まずはやっぱり個性豊かな新キャラ達の動きが面白いといいますか
割と手早く試合自体は終わったりするんですけど
その中でもどのキャラも振り返ればそれなりに印象強い部分は往々にしてあって、
それを眺めてるだけでも楽しくて賑やかで盛り上がって、おまけに試合のオチもそれぞれ納得の出来る形だったので
次の和や咲の爆発の一歩手前、バトンって観点から考えると非常に抜群の9巻だったんじゃないでしょうか。
前巻も前巻で嵐の前の静けさ、って感じでとっても楽しめた印象だったんですが
今回はそこに全国の重みや壁がのしかかってきて
それを手玉に取るキャラだったり
大舞台での緊張にやられてしまうキャラだったりと
既にキャラが動くだけでどんどん展開が面白く進んでいく印象なので
安定といえば安定
でもその中にも突出したハッタリ描写があったりで順当に読める、真っ当に楽しめる
総合するとそういう巻だったかな、って思います。
それでもまだ全国大会は始まったばっかり
前段階でここまで面白いんだから
極まった時のワクワク感は尋常ではなさそうですよね。これからの展開に想いを馳せるのも楽しいんですが
進むペースが速くなってる分、その時々のキャラの個性も見逃せない感じで
爆発の前触れ的な印象はあれどこの巻もこの巻で非常に重要
隅から隅まで楽しめた印象の新刊でした。
何気に神代さんが凄く好きなんですけど(笑)。また出番も欲しいっすなあ。


個人的に初期から思ってたんですけど
部長はやや自信過剰過ぎるっていうか
不敵な印象がどうしてもあって、でもそれが彼女の持ち味でもあるとは思うんですけど
人間らしさって観点からすると物足りない部分はどうしてもあって
それでもそれで他のキャラが輝いてたから全然OKだったんですが
でもここで、こうやって彼女の内面
彼女もまたいち女子高生であるって部分が大きくクローズアップされるとそれはそれで新鮮っていうか
ここでより部長の存在を身近に感じられるようになった節は絶対にありますよね。
自信家にもちょっと見えていた彼女の混乱不調
でも、結果彼女を揺さぶり起こしたのは他ならぬ彼女自身
それ即ち本当に自分の事を決起させられるのは自分でしかないって事実の裏づけでもあって。
誰かの為に、体裁の為にやる試合ではなく、あくまで基本は自分が楽しむ為
それを忘れたら何もかもが義務になるだけ――――
そんな思想が込められてた気もして
ここに来てようやく部長の試合で本気で感情移入出来るものが来て個人的には嬉しかった。
やっぱり人間上下あってこそ、ですからね。
その他にも相変わらず効いてるハッタリ描写は部長の気合を取り戻したシンボルとしても描かれてたり
和の試合が始まる前の不穏な空気がこれからの嵐への期待感を煽ってたり
本質的な部分はやっぱり少年漫画なんだなー、っていうのが
如実に感じられたのもまた面白かった9巻。
本格的な試合だけの巻も結構久々に読んだ感触なので、その意味でもまた盛り上げてく気が満々の
それでいてキャラ描写も相応に濃い中々の出来の新刊だったんではないでしょうかね。
この引きだと、また10巻に関しても期待をせざるを得ない感じで(笑)。楽しみです。





しかし、この漫画目の保養には本当に良い作品ですよね。
扉絵がみんな傑作レベルの作画です。
その上で少年誌の方法論で漫画進めてるその欲張りっぷりは相変わらず最高って話で。
余談ですが142ページ目の部長の表情は可愛すぎです!(笑)。
こんな表情も出来るんじゃないか。初めてグッと来た気もしましたね。美少女的に。



学校のせんせい 5巻/巣山真也

2012-03-24 06:49:18 | 漫画(新作)





巣山真也「学校のせんせい」5巻読了。





う~んこれで終わっちゃうのは惜しいねえ(笑)。
でもなんでしょう、何気に最終回の雰囲気っていうのは非常に心地良くて
ほんのり感動も出来るラストだなあとも思えた訳で
それ考えるとカタルシスこそちゃんと存在してたからこれはこれでいいのかな、というか
ちゃんとキャラがまとまりかけて初期よりもグッと教師漫画らしくもなりつつある
ここで終われば「良作のまま」って印象が残るのかなと思うと
あながち否定も出来ない
何とも罪作りな作品ですね、っていう(笑)。でも、ちゃんと惜しめたしちゃんと最終回っぽかったし
盛り上がりも意外性もあったんで思った以上にスッキリは出来たかなって感触でもあって。
最後までこの漫画らしさを貫き通した、美少女コメディ作品の中でも際立った傑作にはなったかな、と。
とはいえヒットしたとまでは言えないので若干隠れてるのが口惜しいんですけどね。
でも正直初連載の時よりもグッと面白味を増した世界観
キャラメイキング、安定した絵柄の良さだったり如実に成長を感じる事が出来て
昔から巣山さんの作品を好きな自分にとっては嬉しい連載でした。

美少女コメディっていっても、設定としては教師って肩書きになる訳で
通常の日常系コメディが出来ないネタや哀愁の出し方もこの漫画には出来たし
当初こそ設定は肩書きだけ~って雰囲気もありましたが
徐々に生徒との絡みだったり
教師ならではの悩みのネタだったりこの漫画ならではの部分も角を出し始めた感じで
終わる間際には立派な教師コメディになっていた・・・とは思います。
一部際どいネタもありましたけど
そういう面含めてスパイスが効いてて楽しかったというか、正直こんな愉快な先生だったらなー、って感じで
コメディ抜きにして教師作品としても楽しめる部分があったりと中々オールマイティさを感じたり
その上で百合ネタがちょっぴり多目だったり(笑)。
同じ美少女コメディでもちょっと舞台を変えるだけで~って側面はあるけれど
ぶっちゃけ「学校のせんせい」みたいな作品ってないと思うし
ある種新しさもちゃんとあったと思うんですよね。
っていうのをこの最終巻を読んでて再確認したし、何も若さだけが価値ではない
20代の女子は女子なりに魅力的で彼女らならではの面白さやおバカっぽさがあったりして
そのいい年こいてアホやって楽しんでる感覚っていうのは思った以上に自分の気持ちとフィットもして
個人的にはもっとこういう漫画増えてもいいのにな?とはちょっと思いましたね。
こういう洗練された絵柄でね。
またいつか続編とかやってくれたら凄い嬉しいなあ。


サクラも凄く魅力的な主人公だったし、最後の話では多少大人になったなって感触もあったりで
成長は成長したと思える描き方もまた好きなんですけど
やっぱり自分はゆり子が好きで好きで、母性って云うか普段ふざけてるのに時々優しい所なんかもグッと来て
まあルックス的な印象も含みつつ(笑)。最後までサクラを支えてくれたかなって事で
より好きになれた感覚もあったりで素晴らしいキャラ造詣だったなあ、と。
あかねのどんどん女子力がUPしてんの?って言いたくなる位女性っぽさが増してたのもまた面白いし(笑)、
すみれ先生も結局はなんだかんだで良い先生なのもきっちり伝わって
いつみ先生は微妙に出番少なかったけど、でも存在感はちゃんとあったり
主任は主任で最後ようやくデレを見せたりと
振り返ると良キャラ、役割分担も良く出来てて何気に無駄なキャラっていなかったし
安易にキャラを増やさなかった所もまたこの作品の良い部分でね。
だからこそ、別れは寂しいんですけど(笑)。
でも、無事にダレずに終わってくれたのは良い事ですね。
この巻はもうキャラが動くだけである程度面白さを演出出来る感じにもなってて
だから過去最も安心して読めた巻だったかなあ、と個人的には思いました。
それだけ完全に馴染んでたって事なんですよね。
そんな作者の手さばきに敬意を込めつつ、最後まで面白かったです。お疲れ様でした!という〆で。





この連載でグッとネーム力とか持続力が高まった印象でもあるので
次回作が早くも楽しみです。
美少女ラブコメから美少女コメディにシフトして、次はどこに行くのか。
学生時代から読んでる作家さんなのでこれからも追いかけますぜ。




妖狐×僕SS(いぬぼくシークレットサービス) 第11話「陽炎」 感想

2012-03-24 03:36:23 | アニメ





誰も知らない。





双熾は凛々蝶の本当の性格や気持ちを誰も知らないんだ、って表現してたけど
でもよくよく考えてみればそんな双熾の気持ちも誰も知らない、誰にも伝わってないと思うので
お互い様って言えばお互い様なんですよね。
完璧超人に思えた双熾に関して言えば、完璧超人っていうよりはそうならないといけなかった
生きてく術がなかった、っていう方が本当は正しいんだ、って事が分かって
感情移入って観点から言えばようやく幅が広がった感じ
でもその過程で
器用にしたたかに他人に合わせる生き方を選んでしまった所為で大切な自分自身を失ってしまった
その分本来そこにあるべきだった自分自身やこだわりを失くしてしまった・・・って訳で
要するに1年間家に篭りっきりだとコンビニ店員とすら話せなくなる、って例のアレですね(違う? 笑)
いやでもそれが当たり前になってしまった、自尊心がないのに慣れてしまったっていうのは
人間としては致命的な欠陥だわな。
それを再び、そんな何かに対して感じる気持ちを呼び覚ましてくれたのが凛々蝶だった
彼にとっては人生を捧げる価値のある恩人だった、って話なんですね。
生まれてからずっと監禁生活を強いられてた彼にとって
ヒヨコの母親っていうか、初めて本心から会話出来た相手であって、だからこそ自分の自由を彼女に使う
それが自分の満足の為でもあるんだっていう。何気に凄く深くてシリアスなお話だったんですが
不思議と重いっていうよりは・・・
純粋だったのかな?双熾のピュアな気持ちばかりが画面からモノローグから溢れんばかりに伝わって来て
その醜さの中にある美しさって表現に対して見惚れてしまった11話でした。丁寧な作りだなあ。


やっぱりね、きれいなだけのものって何か味気ないんですよ。
汚い部分があるからきれいさが輝く
きれいな部分があるから汚さが印象に残る。
表裏一体っていうかそれは切っても切り離せないものだと思うから。
そういう観点から考えると今回のエピソードには本当に納得出来たといいますか
自分としてもちょっと遠くも感じてた双熾が近くなった
これでようやく2人とも裸ですね、っていう
ある種の記念碑的な回だったんじゃないかなあ・・・って個人的には感じますね。
何故双熾があそこまで凛々蝶にこだわるのか
何故そこまで知ってるのか
何故自分を出す事を頑なに拒むのか。そんないくつもの理由や行動理念が明かされて
その事実や過去も凛々蝶に受け入れてもらえて、本当の意味で対等になった感覚は以前より強く
これでやっとお茶会の準備が整いましたね、っていうか
無事に終われそうな気配は満々でね。
原作付きでここまできれいに着地するのも中々ないとは思うので、是非頑張ってファイナル決めて欲しいですね。
映像の美しさは勿論、双熾の心情も包み隠さずに伝わって来て本当に素晴らしい回だったと思います。
蜻蛉のキャラに関しても何気に良い奴っていうのが分かったしね(笑)。
憑き物がちょっと取れたみたいだった。





手紙の中で自分を曝け出してしまった、って事は
やっぱ恥ずかしい部分も含めって事で
どこかで嫌われたくない、完璧な自分で居たいって気持ちも少なからずあったのかなあ。
でも、人間は美しいだけの生き物じゃないですから汚点があった方がむしろ人間らしいんじゃないかと思う。
そんなピュアピュアだったのは双熾くんもだったんだね!って訳で
ますます物語の好感度上がるようなお話でしたね。傑作回。