林佑樹「カイチュー!」9巻読了。
いや、この漫画本当に面白いのな。元々女装少年ネタから始まった作品ですけど
気が付けばそんなの関係ないくらい実直にスポーツ描写に燃えられる作品になってきた。
その片鱗は数巻前から感じてたんですけど
今回の山王vs安政の試合って言うのは主人公サイドのお話でないのにも関わらず・・・というか
この9巻はゴンちゃんも立川くんもほぼ出番なしなのにも関わらず
非常に「カイチュー」らしい荘厳さが出てるっていうか
今まではギャグとシリアスのメリハリが売りの作品だったと思うんですけど、ここに来て
シリアス要素を前面に出してきていて化け始めたスポーツ作品ならではの臨場感がちゃんと出ていて
その作画やネームから伝わる緊張感だけでも熱中してしまう程度の迫力で。
先の読めない展開も、納得の出来る勝敗の結果も
全部含めて真っ当なスポーツコミック、弓道作品として魅せられてしまった感覚が個人的にあって。
この熱さと緊迫感は昔大好きだったリベロ革命や帯ギュに通じるものがある。
割と邪道的な感じで始まった作品って記憶があるんだけど
もしかしたら本当に弓道作品の金字塔になれるだけのポテンシャルは真面目に秘めてるのかもしれない。
元々が女装少年ネタから始まってるので異色の作品ってイメージを持たれてるかもですが
学生時代に夢中になってたスポーツコミックと同等の興奮が感じられた9巻でしたね。
っていうかこれ読んでると弓道がしたくなるんですけど(笑)。
上手いと思うのは、メンタル面の描写、揺れ動き、説得力がちゃんと出せてる事。
弓道は一見漫画の題材としては描き難いんじゃないか、ってイメージもあったんですけど
メンタル面が重要なスポーツって散々作中で強調されて来たからこそ
めまぐるしく移り変わる心情の流れだったり
それぞれの選手の立ち位置やバックボーンを利用して面白い展開を作れたり・・・。
むしろ漫画向けの題材なんじゃないか、って思えるのがこの作品の凄いところですよね。
山王と安政の試合の変遷も逐一納得の出来る流れだったと思うし
何よりも一ノ瀬主将があまりにも男前過ぎて・・・(笑)。
必死に頑張った結果に対して
言い訳しないっていうか、部員の苛立ちに対して手を大事にしろ、と示唆するシーンを読んだら
不思議と涙腺が緩んだりなんかもしちゃったりして。自分も辛いはずなのにね。
顔もイケメンなのに心もイケメンっていうのは何かとズルい
でもそんな彼の、彼らの想いの強さは往々にして伝わって来てそのドラマチックな描き方
そして結末に真面目に感動してしまった9巻目でした。
また、松平さんが良い味出してるのよ(笑)。寂しそうに弓を引く姿~って言葉に奮えましたねえ・・・。
女子の試合は男子と比べるとどうしても劣ってる節があったけど(基本男子のが掘り下げ多いし)、
二川さんの経験地の問題が如実に表れたりと何気にこっちもこっちで盛り上げ上手!
目頭の熱くなる新刊でした。
この後の展開もめちゃくちゃ楽しみです。