超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

リューシカ・リューシカ 4巻/安倍吉俊

2012-03-22 23:59:13 | 漫画(新作)





安倍吉俊「リューシカ・リューシカ」4巻読了。





今回は今までの巻と比べるとより絵本っぽくなった印象があって
正直子供にも読んで欲しいな、って思う程度には間口が広くなった感覚
お話も目的も分かりやすい部分が目立つし
感情移入もしやすい
一見さんには最もオススメ出来る内容の巻に仕上がったんじゃないかな、って読後の4巻でした。
同時に、大人向けでもあるといいますか、あの頃(幼少)感じていた不思議だったり
こういう事一度は思うよね、っていう
所謂あるあるの観点から見ても面白い作品であり、かつそのあるあるの種類が実に普遍的なので
子供でも大人でも、マニアだろうが一般だろうがそういう垣根を越えて色々な人に楽しんでもらえそうな
そんな可能性に満ちた優良コミックには仕上がってるな~って感じなんですけど
実際のところは、まあいつも通りの読者層に落ち着くんでしょうね(笑)。
でも前述の様に絵本っぽさ、子供が読んでも理解出来る楽しさ
そういった部分は往々にして強いので、是非少しでも読者層広がるといいんですけどね。
まあとはいえリューシカは今回も今回で普通に可愛かったりするんですが。
そんな子供らしい可愛さを楽しむのも十分にアリな作品、かな。

個人的に、みんなで映画を観るお話が一番好きだったりして
あの話はリューシカ以外の人々が大人らしい冷めた目線、
或いはマニアから見た偏執的な目線だったりするんだけど
リューシカだけは純粋に展開だったり登場人物だったり、その結末だったりを本気で楽しんで
時には真面目に心配とか応援しちゃったりして、
でもその様子が他人から見ると最も彼女があの映画を、物語を一番楽しんでいるように見えた、
熱中していたっていう何ともオチに唸らされるようなお話であって。
色々な意味で大人になっちゃうと
経験を積んで冷めた見方になったり、「あーこれはこういう展開なのね」って
過去作品と照らし合わせて自らドキドキを殺しちゃう側面もあったりするんですけど
それもまたしょうがないと言えばしょうがない
見てしまった、積み重ねてしまった経験値は消えないし、だからこそ他と比較して楽しめる節もある。
けど、やっぱり何も知らなかった頃の自分と比べれば全然だなっていうか
無知の時が一番物事を楽しめるよね、っていう事実でもあって。
それ考えるとちょっと寂しくもなるんですけど、だからこそ心持ちって大事なんだなって感覚もあって
要するに出来るだけバカになった方がお話なんていうのは面白いってことなんですよね。
勿論完璧に無知になることなんて不可能なんですけど
出来れば、自分も少しでも空っぽの気分で、初めての感覚を忘れずに
過度に慣れていくのなんてやっぱりつまんないな、と。
そんな想いを改めて想起させてくれるような秀逸な話とオチだったと思います。これまででもトップクラス。






他にも、冷蔵庫の話とか、起きてる時と寝てる時の境目とか、マジで子供の頃の自分も同じ事考えたな~って
普通に自分の幼少期や少年少女時代を思い起こせるお話ばかりが並んでいます。
確かに何かを買い換えるときって妙な空しさが昔はあった気がするし
起きてる時と寝てる時の境目なんて今でも時々考えたりもしますしね。中々に奥深い漫画だと思います。