(1)ノーベルウイークの10月が近づいてきた。医学生理、物理、化学分野に関心が集まり、今年はナノチューブに注目が集まっているともいわれているが、日本では作家村上春樹さんが文学賞を授賞するのかにも関心が集まる。
(2)最近の新聞コラムで村上春樹さんの初期代表作の「ノルウェイの森」に関して、当時「文壇ではあまり評判がよくないのに、一般読者の圧倒的な支持を得ている」(同コラム)コメントが紹介されていた。
「ノルウェイの森」は上下巻合わせて2百万部を超える売れ行き(同)を記録してベストセラーとなった。村上作品は海外での翻訳本がとりわけ多く、どちらかといえば日本より海外市場での人気、評価が高い作家であり、こうしたことが村上春樹さんをノーベル文学賞の授賞者に押し上げる、期待する声が高い理由でもあると考える。
(3)しかし、なかなか村上春樹さんには毎年のようにノーベル文学賞授賞が期待されながらその機会は訪れない。その間に米国歌手のボブ・ディランさんが「風に吹かれて」の叙事詩(epic)な反戦、社会性を帯びた詞が評価されてノーベル文学賞を授賞するなどノーベル文学賞の選考が文学性、社会性、話題問題性の高い文学評価に集まっている傾向が見えて、純文学、小説の本流作家にはなかなか機会はないようにみえる。
(4)それでも「ノルウェイの森」が村上春樹さんのヨーロッパ滞在中に書き上げられ、海外を含めて2百万部超の売り上げを記録するというのは特別な国際的作家であり、ノーベル文学賞としての評価にそん色はないものと考えられる。
(5)かって村上作品が文壇での評判はよくなかったが一般読者の圧倒的な支持を得ていたことが、村上作品を考えるときに文学的価値、時代考証、文学論で村上文学の「邪魔」をしているように感じることがある、村上文学のオリジン(origin of murakami literrature:起源)だ。
村上作品、作家村上春樹さんには、時代に先駆けた先進性があったのではないのかと思わせる。