(1)コロナ社会の断絶の中で著名人のふ報が続いて、「ひとつの時代」の終わりと書いたが、30日に正真正銘の「ひとつの時代」を終わらせたゴルバチョフ元ソ連大統領(91)が亡くなった(報道)。
(2)米ソ冷戦時代で共産、社会主義国ソ連の統制計画経済の行き詰まりから、当時ゴルバチョフソ連大統領は国家統制計画経済に個人の営業を認めるペレストロイカ(立て直し)、チェルノブイリ原発事故によるグラスノスチ(情報公開)を主導して、その後ベルリンの壁(東西分離)崩壊からソ連崩壊という世紀的な出来事につながった。
(3)ゴルバチョフ氏が54才の若さでソ連最高指導者の党書記長になった時には、額の上にキズ跡のようなものがある面持ちに何かと米国と覇権争いをしてきたソ連の最高指導者としてコワモテのイメージが強かった。
(4)しかし、そのゴルバチョフ元ソ連大統領がペレストロイカを進めてベルリンの壁崩壊が実現しなければ、ドイツ統一、メルケル首相(東独出身)の誕生もなければ、メルケル首相が主導したその後のヨーロッパ統合のEUの誕生もなく、ロシアによるウクライナ(旧ソ連邦)軍事侵攻もなく世界の政治図は現在のものとは大きく違ったものとなっていただろう。
(5)その変化がゴルバチョフ元ソ連大統領のソ連を崩壊させたロシア国内での低評価と自由人権復活の西側諸国、国際社会での高評価と大きく二分されることになった。共産、社会主義国の統制計画経済の行き詰まり、中国も市場経済導入で米国に次ぐGDP2位の経済国家となったが米国と世界経済を争う中で資本主義の後退がいわれだして、今また中国、ロシアなどの権威、専制国家が台頭するという歴史振り戻しの政治図時代を迎えている皮肉だ。
(6)ロシアプーチン大統領が目指すのは大ソ連邦復活といわれて、旧ソ連邦国のNATO加盟に強い危機感を持ってのウクライナ軍事侵攻を招いている。
ドイツが東西両陣営に分断されてベルリンの壁で仕切られて越境者が住民の目の前で殺害されるという悲劇が解消されて、政治、経済、平和融合の壮大な実験場としてのヨーロッパ統合のEUが誕生したのは当時のゴルバチョフソ連大統領の柔軟な政治思想、判断によるところが大きかった。
(7)ヨーロッパとロシアの石油、ガスエネルギー供給協力体制にもつながり、今の時代にこそ必要な政治力でもあった。