前回の記事でご紹介した通り、セガが自認する(大型)メダルゲームの国産第一号(注)は「ファロ」ではなく「シルバーフォールズ」であることが明らかになりました。
シルバーフォールズ。セガが1974年に頒布したメダルゲーム機の総合カタログより切り取った画像。
ワタシは過去記事「初の国産メダルゲーム機の記憶」で、「(初の国産メダルゲーム機は)1974年の春頃にセガから発売された『ファロ』と『シルバーフォールズ』になろうかと思います」と述べていますが、その本文では「ファロ」の説明しかしておらず、「シルバーフォールズ」はまるっきり無視しています。そしてその後もワタシは事あるごとに「ファロ」を初の国産メダルゲーム機と述べてまいりました。
しかしそれが誤りであることが判明した今回は、改めて国産初のメダルゲーム機として「シルバーフォールズ」を記録しておきたいと思います。
(注)拙ブログでは、「国産メダルゲーム機」とは、国内メーカーによってメダルゲーム営業に供することを目的として作られた「メダルゲームネイティブ(そんな言葉があるかどうかは知らない)」のゲーム機を指しており、メダルゲームとして稼働していても本来がメダルゲーム営業以外の市場に向けて作られたゲーム機は除外しています。
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とは言うものの、ワタシはシルバーフォールズはコインプッシャーであること以外ほとんど知りません。今までは「あー、はいはい、こんなプッシャーもありましたねー」で終えていたので、これは大いに反省しなければなりません。
それでも手持ちの資料を改めて調べていると、新たに気づくことがありました。セガが頒布したフライヤーで、「シルバーフォールズ」と「ファロ」は、総合カタログでしか見たことがありません。そのうち、1974年の早い時期に頒布された二つ折り4ページのメダルゲーム総合カタログでは、「シルバーフォールズ」が表紙を飾っています。
1974年に頒布されたセガのメダルゲーム総合カタログの表紙。「シルバーフォールズ」が大きく採り上げられている。
ここに見られる画像が、ワタシが持つ最大の「シルバーフォールズ」画像です。まずはこれを観察してみました。
上記総合カタログ表紙より、シルバーフォールズの拡大図。
この画像によると、「シルバーフォールズ」は、
①8人用。
②プレイフィールドは円形で8等分に区切られている。
③プッシャーボックス(コインを押し出す機構)は円形。
であることが見て取れます。こうしてじっくりと見て初めて気づいたのですが、「シルバーフォールズ」のプッシャーボックスは回転軸が偏心した円運動をしているようです。円板カムの動きというものでしょうか。それまで日本で見られた英国クロンプトン社製のプッシャーボックスは直線運動でしたから、これはオリジナリティの高いアイディアだと思います。
このように円形のプッシャーボックスで同じような動きをするプッシャーは、90年代の後半に発売されたこともありました。
円形のプッシャーボックスの円運動でメダルを押し出すプッシャー「ドリームターボ」。製造元がよくわからないのだが、Gマシンで良く知られたところだったような気がする。
ワタシはこれと非常によく似たプッシャーを1995年頃に米国で見かけており、「ドリームターボ」はそれをパクったものと疑っていますが、いずれにしても、その20年も前に同じアイディアのプッシャーをセガが作っていた事実は、ワタシにとって全く新しい知見でした。
ただ、「シルバーフォールズ」が普及しなかったことと、「ドリームターボ」以降同様の機構を持つプッシャーが継続して現れなかったことから、このような機構はアイディアではあるけれど、あまり面白さには繋がらなかったと言わざるを得ないとは思います。
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ところで、「シルバーフォールズ」の装飾はアラビアをテーマとしており、プッシャーボックスの上には4体のベリーダンサーの人形が置かれており、その上部には円形の飾り看板が付いています。セガの社内報での記事では、「(プッシャーボックスの上にある)照明装置に書かれている、何やらアラビア風の文字の意味、おわかりですか・・・。」とあります。
セガの社内報で「照明装置」としている部分の拡大図。
確かにそこにはアラビア文字のようにも見えるものが書いてあります。しかし解像度が低く、本当にアラビア文字であるかどうかも判別できません。社内報では「(解答は24頁)」と続くのですが、ワタシが見せていただいた画像はこの1ページのみで、24ページはありません。一体ここには何が描かれていたのでしょうか。
謎の文字も気になりますが、それ以上にワタシのマニア魂を揺さぶったのは、「照明装置」に描かれている謎の「模様」です。
ワタシのマニア魂を揺さぶった「照明装置」の謎の模様(赤円内)。
この模様はひょっとしてアレではないかと思い当たり、セガが1973年にリリースしたピンボール機「アリババ」(関連記事:初期の国産ピンボール機:Ali Baba(SEGA、1973))のフライヤーを見ると、二つ折り4ページの裏表紙側に、フォルムが非常によく似たアラビア女性の絵がありました。
セガのピンボール機「アリババ」(1973)のフライヤー(裏表紙の部分)。左上のカットが「シルバーフォールズ」の「照明装置」に見える模様とフォルムがそっくりであるように思われる。
「シルバーフォールズ」の画像でこれよりも鮮明なものが無いのが残念ですが、発売年は「アリババ」が1973年、「シルバーフォールズ」は1974年(ひょっとすると1973年の遅い時期かも)ですので、同じアラビアンをテーマとした「シルバーフォールズ」に、「アリババ」のフライヤーで使用したカットを流用したものと思われます。だからどうしたと言われても困るのですが、マニアと言うものはこういう些細なトリビアに反応するようにできてしまっているのです。すみませんね。
照明装置の模様が一瞬ペンギンに見えたのですが、記事を読んでいくうちに女性だったとは!
ところでプレイヤーに近づくにつれて円周長が長くなるのでメダルはなかなか進んでくれなくなると思うのですが、そこにイライラする人はいなかったのでしょうか。
>tomさん
昨年、「初期の国産ピンボール機」で「アリババ」の記事を書いていたので気づくことができました。ただ悲しいかな、実生活には何の役にも立ちませんw
>EM好きおじさん
1982年に発売されたセガのプッシャー「ミラクルハット」も、「シルバーフォールズ」とは少し違うのですが、円運動する円形のプッシャーボックスでメダルを押していましたが、確かにメダルが落ちにくいように感じていました。偏心した円の軌道はワタシには難しくてよくわかりません。カムでモノを動かすものを設計している人の頭の中っていったいどうなってるんでしょう。
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