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パチンコの歴史を学ぶ:「パチンコ産業史」(名古屋大学出版会)

2022年10月23日 21時04分25秒 | 歴史

取り急ぎのご報告です。10月26日に記事の一部を削除・修正いたしました。

拙ブログの守備範囲にはパチンコとその周辺も含みますが、ワタシは現行機種のスペックや攻略法などの「実用的」な情報にはまるで興味がなく、テーマはもっぱら1980年代以前の遊技機の変遷や発達、あるいは業界の歴史に限定されています。この傾向は今後も変わることはないと思います。

そんな偏屈なワタシは、過去に拙ブログで「パチンコ誕生博物館」と、その館長である杉山さんの著書、「パチンコ」及び「玉ころがし」(両著共に法政大学出版局)をご紹介してまいりました。

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法政大学出版局「ものと人間の文化史 186 パチンコ」のご紹介
法政大学出版局「ものと人間の文化史 188 玉ころがし」のご紹介

杉山さんは、著書「パチンコ」において、パチンコの歴史や変遷に関する、従来広く流布している説の瑕疵を指摘し、綿密な調査により異なる結論を導き出しています。そして杉山さんは、「パチンコ」に続いてそのルーツである「玉ころがし」を出版しました。実はこの後さらに「コリントゲーム」と「スマートボール」が続き、パチンコの歴史を辿る全4巻のシリーズとなる予定だったそうです。しかし、最近になってこの企画は没となってしまったそうです。

今回は、その代わりというわけではありませんが、パチンコの歴史を知るに良い本を一つご紹介いたします。

パチンコ産業史の表紙。2018年名古屋大学出版会刊、5400円(税別)

「パチンコ産業史」は、子供相手の露店商だったパチンコが、ピーク時には売上高30兆円(この数字が直ちにパチンコ業界の利益ではないことには留意しておく必要がある)の一大産業に至った理由を、メーカー、市場、社会情勢、さらには在日韓国・朝鮮人の関わりなど様々な観点から考察しパチンコが生き残り社会に定着していく過程を詳らかにして、2018年にはサントリー学芸賞を受賞しました。

ただ、「パチンコ産業史」では、重要な部分で杉山さんの「パチンコ誕生」を引いている部分がいくつかあるのですが、それにもかかわらず、例えば説明の図版には杉山さんが「ねつ造」と非難している画像が使われていたり、まだパチンコに進化していない段階の菓子自動販売機を、おそらくは元の資料を鵜呑みにして「パチンコ」と言っていたりなど、いくつか杉山さんの認識とは異なる部分があります。杉山さんは今日現在まで5つの問題点を、韓さんに向けてツイッターで指摘していますが、それが韓さんに届いているかどうかはわかりません。

Twitterにおける、杉山さんの、韓さんに対する指摘の一つ。正村ゲージの例としている台は、日工組の理事長であった武内国栄が正村ゲージをより早く世に出たものと偽装するための工作が施されたものと杉山さんは指摘している関連記事:「ものと人間の文化史 186 パチンコ」を勝手に少しだけ補足する

「パチンコ産業史」の中において杉山さんの研究と重なる部分は全体の一部であるので、韓さんは杉山さんの抗議をさほど重要視していないということなのかもしれませんが、杉山さんの研究成果の他の部分は引用しておきながら、杉山さんが重視している部分を無視する態度は、残念なところです。

ワタシはこの「パチンコ産業史」を、昨日図書館で借りてきたばかりで、本文だけで354ページに及ぶ大作のうちまだ第一章の途中までしか読めておりません。しかし、これまでにない視点でパチンコの成り立ちを解き明かそうとする試みと、これまでなんとなく言い伝えられてきたにすぎなかったパチンコの闇の部分に光を当てようとする試みには大きく期待できます。その意味で、パチンコ産業史は広く読まれて欲しい本であるとは思います。願わくば、重版がかかることがあれば、その時には杉山さんの抗議を考慮した内容になっていてもらえればと思います。


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