オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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メダルゲーム「TV21」(ジャトレ・1977)の謎

2017年07月08日 23時31分19秒 | スロットマシン/メダルゲーム

1977年のころのこと。当時東横線都立大学駅にあった「キャメル」というゲーセン(関連記事:柿の木坂トーヨーボール&キャメル)で、ワタシは「TV21」というメダルゲームに滅法ハマりました。




業界誌「アミューズメント産業」1977年1月号に掲載された「TV21」の広告とその筐体部分のアップ。

ゲーム内容は、基本的にはビデオブラックジャックなのですが、ルールは若干複雑でした。ブラックジャックでは始めに2枚のカードが配られますが、このゲームでは1枚しか配られません。プレイヤーはその1枚を見て、通常のブラックジャックを行うか、それとも最高200倍になる「ボーナスゲーム」を行うかを選択しなければなりませんでした。

「ボーナスゲーム」は、ブラックジャックとは異なり、役ができるまでカードをヒットし、役ができないままカードの合計が21を超えると負けとなります。

「ボーナスゲーム」を選択すると、始めにベットしたメダルと同数まで追加ベットができました。「ボーナスゲーム」の役には以下のものがありました。

 ・5 CARDS 21 OR UNDER (×5)
 ・6-7-8 (×10・違ったかも?)
 ・6 CARDS 21 OR UNDER (×25)
 ・6-9-6 (×50)
 ・7-7-7 (×100)
 ・A-A-A (×200)

1977年と言うと、ビデオゲームはもう普及していましたが、メダルゲーム分野でCRTを使用した機械はまだほとんど無く、これ以前の機種ではユニバーサルが1976年に発売した「BIG & SMALL」くらいしか思い当たりません。sigmaが「TV・POKER」をお披露目したのは1978年の秋のことです(関連記事:ワタクシ的「ビデオポーカー」の変遷(1))から、それよりも1年くらいは早く登場しています。



業界誌「アミューズメント産業」76年4月号に掲載されたユニバーサルの「BIG & SMALL」の広告(部分)。

この「TV21」を発売していたのは、「ジャトレ」という会社でした。社長の竹内清一氏は、現在の業界団体の一つ「日本アミューズメントマシン協会(JAMMA)」の前身である「全日本遊園協会(JAA)」という業界団体の監事を務めたこともあったようです。しかし、ワタシにとってジャトレは、ゲーム機メーカーとしての印象は限りなく薄く、業界におけるポジションが良くわからない会社です。

と言うのは、ジャトレは、当時これだけ完成度の高いメダルゲーム機を送り出していた割には、たいへん寡作なのです。また、失礼ながら技術力に優れているとは見受けられないジャトレが、特殊なノウハウを要するメダルゲームをいきなり開発できたとも思いにくいです。

ワタシは、おそらくジャトレには開発部隊が無く、よそから買ってきたものに自社ブランドを乗せて売っているのではないかと疑っています。それ自体は別に構わないのですが、この「TV21」を本当に開発したのはどこであるかがわからないのがワタシにとって癪の種になっています。

ヒントとして、「TV21」に表示されるカードのデザインは、sigmaの「TV・POKER」のそれと、おそらく同じと言えるほどよく似ています。このことから、比較的納得し易いのは、米国でサイ・レッド(関連記事:ワタクシ的「ビデオポーカー」の変遷(3))が作っていた電子ゲームの中に「TV21」の元ネタがあり、誰かがそれを何らかのルートでジャトレに売り込んだというストーリーなのですが、これを補強できるような資料は見つけられずにいます。

ただ、「TV21」の広告がアミューズメント産業誌に掲載された同じ年の11月号に、当時のバーリーの筐体と思しきキャビネットに入った全く同じ内容のゲーム機「JACK LOT」の宣伝が掲載されました。





業界誌「アミューズメント産業」77年11月号に掲載された「JACK LOT」の広告(上)と筐体のアップ部分(下)

「JACK LOT」の広告主である「関西トレード」という会社については、ジャトレ以上に良くわかりませんが、当時のバーリー製品の部品を扱う商社に見受けられるところから、現代のパチスロの元祖となる「ジェミニ」を開発した「大阪パブコ」社と、ひょっとすると何らかのつながりがあるところなのかもしれません。「ジェミニ」も、バーリーから筐体を供給してもらい、流用して作られていました。

そして、「JACK LOT」の筐体アップ部分をよく見ると、右下に電気用品取締法(電取法)申請中の文字が見えます(逆三角に〒マークは電取法を意味する)。ワタシは電取法には詳しくありませんが、当時、輸入されるゲーム機(国産機でも同様ですが)は電取法に照らして認可を受ける必要があったようで、これを怠ったために罰を受けたり稼働を停止させられた例も多くあります。このようなペナルティは、しばしば社会に悪影響を及ぼすギャンブルマシンや、「殺人ゲーム」として社会問題となった「デスレース」を封じ込めるための「別件逮捕」に使われました(関連記事:【ビデオ】【小ネタ】デス・レース 社会から非難を浴びた殺人ゲーム)。

これは根拠と言うにははなはだ弱いですが、関西トレード社が扱っていた「JACK LOT」は、ジャトレが扱っていた「TV21」と同じもので、筐体で輸入されたか、基板またはROMの形で輸入されたかの違いという可能性も考えられそうです。これを証明するため、ワタシはこれからも、「TV21」もしくは「JACK LOT」と同じゲームをアメリカで探し続けたいと思います。

ジャトレは、1980年頃に一度倒産してしまいましたが、不屈の根性で復活し、現在も事業を継続しています。「NEWジャトレ」のブランドで発売したレーザーディスクによる実写映像を見せる脱衣ゲーム「野球拳」シリーズは、80年代中ごろから90年代中ごろにかけてそこそこヒットしたので、ご記憶の方もいらっしゃると思います。

【続報】「TV21」の元ネタ発見! 「メダルゲーム「TV21」(ジャトレ・1977)の謎 その後」を参照してください!(2023.02.12追記)