オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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メダルゲーム「TV21」(ジャトレ・1977)の謎 その後

2017年07月17日 00時25分22秒 | スロットマシン/メダルゲーム
前回の記事、「メダルゲーム『TV21』(ジャトレ・1977)の謎」で、「このゲームをジャトレが独自に開発したとは考えにくく、これからも元ネタを探していくつもり」という趣旨の事を述べました。その後、何か手がかりはないかと手持ちの資料をひっくり返していたら、米国SIRCOMA社の「AMUSEMENT 21」というゲーム機のフライヤーを発見しました。


SIRCOMA社の「AMUSEMENT 21(製造年不明)」のフライヤーの表と裏。

ワタシの記憶では、この「AMUSEMENT 21」のカードのデザインと画面のレイアウトは、ジャトレの「TV21」とほぼ同じと言ってよいものです。そして、こんな気になる一文があります。

「Winning hands are credited two for one. Double down play can be made on special hands」
(勝つとクレジットが2倍になる。 特別な手では倍賭けプレイをすることが可能)


「倍賭けプレイ(Double down)」とは、通常のブラックジャックのルールにあるダブルダウンを指しているようにも思えますが、「on special hands」という文言は、始めにベットしたメダルと同数まで追加ベットできる「TV21」の「ボーナスゲーム」を指しているようにも思われます。このフライヤーには、遊び方についてはこれ以上書かれていないので、どちらの意味であるかは判断が付きません。

ただ、SIRCOMA社ができたのは1979年です。ジャトレの「TV21」は1977年に出ていますので、これだけを見て、これがジャトレの元ネタとすると、時系列のつじつまが合いません。

しかし、SIRCOMA社にはさらに前身となる企業があります。この辺の歴史については過去の記事「ワタクシ的ビデオポーカーの変遷(3)米国内の動き」に少し詳しく述べていますのでご参照いただきたいのですが、かいつまんで説明すると、「William ”Si” Redd」という人物が、ビデオスロットやビデオポーカーを開発するため、1970年代に当時のアメリカのビデオスロットメーカーを全部自分の傘下に置いて「A-1 suplly」という複合企業体とし(その詳しい年代は不明)、1979年に「SIRCOMA」社に名前を変え、そして1981年にはさらに「IGT」社に名を変えて株式を公開して、やがて世界最大のスロットマシンメーカーへと成長していったという経緯を辿っています。

この辺の関係がわかるような資料はないかとあちこち探していたら、「King of the Slots: William "Si" Redd」という本の存在に行き当たりました。ウェブ上で立ち読みできる目次には、「A-1 Supply Company's gray-area video twenty-one slot machine」と言う文字が見えることから、A-1 Supply社がビデオブラックジャックを作っていたことは確実と思われます。そして、そのA-1 Supply社は、どうやら1975年には既にできているらしいことがわかりました。

ウェブ上では目次しかわからないので、決して安い本ではなかったのですが、購入することにしました。また辞書を片手に苦労して読むことになるのでしょうが、ここは越えなければならない壁です。本は今月末くらいに到着する予定です。今から楽しみです。


King of the Slots: William "Si" Redd」の表紙画像。Amazonから購入。