■欧米には、厳しいドキュメント・タッチの商品テスト番組が有るのですが、日本はその逆で「太鼓持ち」番組ばかりが全盛です。テレビの宣伝を見ながら「本当かいな?」と思っても、大方は「まあ、テレビだから…」と大人の判断で許していたものが、いつの間にかテレビを親や教師以上に信用して信仰する人々が増えてしまったようで、「テレビで観た」「テレビで知っている」の一言が絶対の自信を生み出す根源になってしまったようですなあ。そんなテレビのカルト状態の中で長寿番組が詐欺容疑で破綻したら、米国仕込の「訴訟」「補償」「賠償」騒動が起こったら、テレビ局の一つや二つが吹き飛ぶのは目に見えていますぞ!
■そんな騒動の最中に、更に事態を冷静に考えていられなくなる裁判所の判決が出るというのは、何と間が悪いのでしょう?!
NHK教育テレビが放送した戦争特集番組を巡り、制作に協力した民間団体などが「放送直前、当初の説明とは違う趣旨に内容を変更された」として、NHKと下請け制作会社2社に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。南敏文裁判長は、「NHKは国会議員などの意図を忖度(そんたく)し、当たり障りのないように番組を改編した」と認定し、民間団体側の期待と信頼を侵害したとして、NHKと制作会社2社に計200万円の賠償を命じる判決を言い渡した。NHKは即日上告した。……
■皆様のNHKは、最後まで当該番組の「再放送」をしないままで、東京高裁の判決を迎えました。「改編」疑惑が有るのは20分にも満たない映像との事なのですから、「オリジナル」と「放送版」とを連続して放送するか、画面を2分割して同時放送するかして、受信料を納めている視聴者の皆様に見て頂かない限りは、この問題は解決しないだろう、と旅限無は主張し続けておりました。NHKは「上告」などしている暇が有ったら、視聴者の皆様の判断を仰いで「改編」が「改良」だったと証明すれば済む話です。ただし、企画段階から「改良版」まで一貫してトンデモないカルト番組だったとしたら、問題は更に大きくなりますが……。
一方、この番組に関して朝日新聞が2005年1月、「政治介入で内容が改変された」などと報道したことから、控訴審では政治的圧力の有無が争点となったが、判決は「(政治家が)番組に関して具体的な話や示唆をしたとまでは認められない」と介入を否定した。1審・東京地裁はNHKの賠償責任を認めず、下請け会社1社にだけ100万円の賠償を命じていた。
■裁判などに持ち込むから話がややこしくなります。NHKとしては、どうせ誰も見ない不人気な番組だから、と高を括って制作・放送までしてしまったのでしょうから、今更、その責任を取れ!などと言われても困ってしまうでしょうなあ。
問題となったのは、NHKが01年1月に放送した番組「問われる戦時性暴力」。判決によると、NHKの下請け会社は、民間団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット)が開催した「女性国際戦犯法廷」を取材する際、「法廷の様子をありのまま伝える番組になる」と説明して協力を受けた。しかしNHKは放送前に編集作業を繰り返し、「法廷」が昭和天皇を有罪とした個所などを省いて放送した。
■「天皇死刑!」拍手喝采、こういう場面は是非とも「ドキュメント」として放送して欲しかったと思います。視聴率が虫眼鏡で見ないと分からないほど低い番組なのですから、その内容を裁判で扱うのなら、「裁判員制度」を広く知って頂く絶好の教材になるはずです。現物の映像が一般の視聴者から隠されたまま、各種メディアあれこれと論争しても一向に埒が明きません。
判決は、放送事業者の「編集の自由」について、「取材対象者から不当に制限されてはならない」とする一方、ドキュメンタリー番組や教養番組については「取材経過などから一定の制約を受ける場合もある」と指摘。その上で、「NHKは次々と番組を改編し、バウネットの期待とかけ離れた番組となったのに改編内容の説明も怠った」と、NHK側の責任を認めた。
2007年1月29日 読売新聞
■その種の趣味を共有している人々にとっては、天啓か祝福に思える内容でも、共有できない人にとってはオゾマシイばかりの光景に見える物は世の中に溢れております。詐欺師が逮捕される時などは、その典型なのですが、拍手喝采と感動の涙で盛り上がっている映像が、後になって一生の後悔となる場合も有ります。「天皇死刑」の判決で盛り上がる人々を全国放送するという企画を通した人は、相当の根性と覚悟が有ったと思われますし、それを擁護する人々も是非とも映像記録として残しておかねばなりません。それがドキュメンタリーという厳しい表現手段の宿命です。『ETV』というシリーズは、NHK自慢のドキュメント番組のはずですから、こんな裁判沙汰になるのは不本意のはずです。一時、大変に盛り上がった「政治家の関与」やら「圧力」は、名指しされた安倍さんや中川さんは、当時はペーペーで、とてもじゃないが圧力など掛けられる立場には無かったと判明しているようですから、何だか「三方一両得」みたいな話になって行きそうですなあ。
■何はともあれ、若者が一生を懸けて就職したいと熱望するような産業にテレビが育ってしまったのですから、改めて視聴率の真の恐ろしさを知って頂きたいものであります。それは現場で汗をかいて日夜や知り回っている人達のことではありませんぞ!最近の不二家事件でも露見しましたが、エライ人達はまったく現場を知らずに出世して、根拠も無い権威に寄りかかって会社ばかりでなく業界全体を腐らせて行くもののようですから、今回の事件で関西テレビの社長やら重役やらがテレビ・カメラの前に引っ張り出されるというのは、非常に良いことなのではないでしょうか?さてさて、「テレビはテレビを裁けない」というジレンマを、一体、何処のテレビ局が破ってくれるのか、しばらくはテレビから目が離せないかも?
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雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
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NHK教育テレビが放送した戦争特集番組を巡り、制作に協力した民間団体などが「放送直前、当初の説明とは違う趣旨に内容を変更された」として、NHKと下請け制作会社2社に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が29日、東京高裁であった。南敏文裁判長は、「NHKは国会議員などの意図を忖度(そんたく)し、当たり障りのないように番組を改編した」と認定し、民間団体側の期待と信頼を侵害したとして、NHKと制作会社2社に計200万円の賠償を命じる判決を言い渡した。NHKは即日上告した。……
■皆様のNHKは、最後まで当該番組の「再放送」をしないままで、東京高裁の判決を迎えました。「改編」疑惑が有るのは20分にも満たない映像との事なのですから、「オリジナル」と「放送版」とを連続して放送するか、画面を2分割して同時放送するかして、受信料を納めている視聴者の皆様に見て頂かない限りは、この問題は解決しないだろう、と旅限無は主張し続けておりました。NHKは「上告」などしている暇が有ったら、視聴者の皆様の判断を仰いで「改編」が「改良」だったと証明すれば済む話です。ただし、企画段階から「改良版」まで一貫してトンデモないカルト番組だったとしたら、問題は更に大きくなりますが……。
一方、この番組に関して朝日新聞が2005年1月、「政治介入で内容が改変された」などと報道したことから、控訴審では政治的圧力の有無が争点となったが、判決は「(政治家が)番組に関して具体的な話や示唆をしたとまでは認められない」と介入を否定した。1審・東京地裁はNHKの賠償責任を認めず、下請け会社1社にだけ100万円の賠償を命じていた。
■裁判などに持ち込むから話がややこしくなります。NHKとしては、どうせ誰も見ない不人気な番組だから、と高を括って制作・放送までしてしまったのでしょうから、今更、その責任を取れ!などと言われても困ってしまうでしょうなあ。
問題となったのは、NHKが01年1月に放送した番組「問われる戦時性暴力」。判決によると、NHKの下請け会社は、民間団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(バウネット)が開催した「女性国際戦犯法廷」を取材する際、「法廷の様子をありのまま伝える番組になる」と説明して協力を受けた。しかしNHKは放送前に編集作業を繰り返し、「法廷」が昭和天皇を有罪とした個所などを省いて放送した。
■「天皇死刑!」拍手喝采、こういう場面は是非とも「ドキュメント」として放送して欲しかったと思います。視聴率が虫眼鏡で見ないと分からないほど低い番組なのですから、その内容を裁判で扱うのなら、「裁判員制度」を広く知って頂く絶好の教材になるはずです。現物の映像が一般の視聴者から隠されたまま、各種メディアあれこれと論争しても一向に埒が明きません。
判決は、放送事業者の「編集の自由」について、「取材対象者から不当に制限されてはならない」とする一方、ドキュメンタリー番組や教養番組については「取材経過などから一定の制約を受ける場合もある」と指摘。その上で、「NHKは次々と番組を改編し、バウネットの期待とかけ離れた番組となったのに改編内容の説明も怠った」と、NHK側の責任を認めた。
2007年1月29日 読売新聞
■その種の趣味を共有している人々にとっては、天啓か祝福に思える内容でも、共有できない人にとってはオゾマシイばかりの光景に見える物は世の中に溢れております。詐欺師が逮捕される時などは、その典型なのですが、拍手喝采と感動の涙で盛り上がっている映像が、後になって一生の後悔となる場合も有ります。「天皇死刑」の判決で盛り上がる人々を全国放送するという企画を通した人は、相当の根性と覚悟が有ったと思われますし、それを擁護する人々も是非とも映像記録として残しておかねばなりません。それがドキュメンタリーという厳しい表現手段の宿命です。『ETV』というシリーズは、NHK自慢のドキュメント番組のはずですから、こんな裁判沙汰になるのは不本意のはずです。一時、大変に盛り上がった「政治家の関与」やら「圧力」は、名指しされた安倍さんや中川さんは、当時はペーペーで、とてもじゃないが圧力など掛けられる立場には無かったと判明しているようですから、何だか「三方一両得」みたいな話になって行きそうですなあ。
■何はともあれ、若者が一生を懸けて就職したいと熱望するような産業にテレビが育ってしまったのですから、改めて視聴率の真の恐ろしさを知って頂きたいものであります。それは現場で汗をかいて日夜や知り回っている人達のことではありませんぞ!最近の不二家事件でも露見しましたが、エライ人達はまったく現場を知らずに出世して、根拠も無い権威に寄りかかって会社ばかりでなく業界全体を腐らせて行くもののようですから、今回の事件で関西テレビの社長やら重役やらがテレビ・カメラの前に引っ張り出されるというのは、非常に良いことなのではないでしょうか?さてさて、「テレビはテレビを裁けない」というジレンマを、一体、何処のテレビ局が破ってくれるのか、しばらくはテレビから目が離せないかも?
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