旅限無(りょげむ)

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フラット化する世界? 其の弐

2007-01-30 15:04:42 | 外交・世界情勢全般
■人間の力では、今のところ「フラット化」し得ない事がまだまだ沢山有るという事を再確認させてくれるニュースを幾つか拾ってみました。

干ばつに苦しむオーストラリア北東部クインズランド州政府は28日、下水を飲料用にリサイクル処理した水を同州の一部で2008年から使用すると発表した。同州は、下水再利用の是非を問う住民投票の取りやめも明らかにした。住民に是非を聞いている余裕がないのが実情という。州政府のビーティー首相は、「大変な決断だが、水を飲まなければ死ぬ。ほかに方法がない」と、住民に理解を求めた。地元紙によると、このまま干ばつが続けば、同州の水源は09年に枯れるという。オーストラリアは現在、史上最悪といわれる干ばつに見舞われており、全国で下水再利用への関心が高まっている。ただ、住民の抵抗感は強く、最大都市シドニーを抱えるニューサウスウェールズ州首相は再利用に反対を表明、これまでのところ再利用を実施している州はない。
1月29日 読売新聞

■アフリカ東北部・インド・南米西部など、常に水不足が危険領域に入ったままの国々が有りますし、ユーラシア大陸を東西に貫通してアフリカのサハラに連なる大乾燥地帯も有ります。オーストラリアは国土の8割以上が砂漠地帯とは言いながらも、統計上は水不足の心配がほどんどない所に分類されています。全世界の人口の半分は不衛生な水を飲んで暮らしているとも言われますし、毎日6000人以上の子供が悪い水が原因で死亡しているという数値も有ります。「地球温暖化」の本当の原因は突き止められたとは言えない状況ながら、異常気象が各地で頻発しているのは事実です。非常に長い周期で起こる変動と、短期間に激しく現れる変化との組み合わせは複雑で、まだまだ人類が正確に予測できるような段階には達していないとも聞きます。

■日本にも天からの貰い水で命を繋ぐ場所は幾らでも有って、地方自治体ごとに水を管理しているので、極度の渇水災害に見舞われると恐ろしい水争いが起こることも有りますなあ。それが国境を挟んで起こったりすると、水戦争が起こるわけで、20世紀は石油を奪い合って巨大な戦争が起こりましたが、21世紀は水を奪い合う戦争が頻発するだろう、と物騒な予測をする科学者も増えているそうですなあ。オーストラリアのクインズランド州が決定した「下水の再利用」は、技術的には何の問題もないはずなのですが、どうしても人間には拭(ぬぐ)い難い思い込みが有りますから、個人的な拘りを公的な機関や科学者の力で啓蒙して解きほぐすよりは、各自が渇きに負けて妥協して嗜好を変更するように仕向けるしかないでしょう。スペース・シャトルや豪華客船などのような密閉された空間では、水を浄化させて循環させるシステムを備えているそうですし、確か日本の新幹線でも汚水や下水を飲料には向かない「中水道」として循環させていると聞いた事が有りましたなあ。

■地球上の真水の9割以上は南極大陸に集中していて、雪や氷になって貯まっているのだそうです。1割にも満たない水が大気中を流れて雨や雪になって人の住む大地を潤しているのですから、地形と風向きによって意地悪な「偏在」が起こってしまいます。情報がどんどんグローバル化すると、車軸を流すような集中豪雨のニュースと渇水が続いてひび割れた大地の映像とを連続してテレビで観るようなことになります。こうした不平等を技術的にも政治的にも、人間はまだ解決できないようです。海水の淡水化技術は日進月歩だそうですが、コスト面での困難がなかなか解決できないそうですし、人工降雨も雲が湧かない限りはまったく手の打ちようが無いとも聞きますなあ。

■先のインドの話ですが、経済的に成長を続けられれば貧困問題が無くなり、文化的で清潔な生活が送れるようになるのは結構な話ですが、水洗トイレだのシャワー設備だのを15億の人々が一斉に求めたらどうなるのでしょう?米国の大統領は、「民主主義と自由」の伝道師になったつもりのようですが、何処の国も米国と同じように変わる事が善だと言うのなら、政治制度に伴って生活スタイルも米国化するのは尚すばらしい事だと考えている節が有ります。そうなれば、エネルギーも水も食糧も、すべてが今の2倍から3倍必要になって地球は人間の欲望によってパンクするか、際限の無い資源の奪い合いになって凄惨な戦いが続くことでしょうなあ。完全に密閉された建物の中で年中変わらない室温と湿度を保つのは、既に技術的には簡単なことになりましたが、それを世界中で始めたら大変なことになるのは目に見えています。

■住む場所によって環境が違うからこそ、地域別に文化が異なっているというのが歴史の真相というものです。大して牧場も無い島国の住民が、毎日牛肉を食べたがったり、海から遠い内陸国でマグロの握りが大好物だ!などという声が上がったりするのは、どう考えても異常な事なのでしょうなあ。広大な砂漠に囲まれている国が、下水を処理して飲料水にするというのは、まだ悲劇とは呼べないような気がします。再処理する水さえも無くなる事を考えておかねばならない時代になっているのかも知れませんからなあ。


販売台数が700万台を超えて世界第2位となった中国の自動車市場で、外資系、国有企業系、民営企業系のメーカーが三つどもえの販売合戦を繰り広げている。国内メーカーは100社以上が乱立し、激烈な「春秋戦国時代」を勝ち抜く安売合戦により、“価格破壊”と過剰生産に悩まされている。有り余る中国車は最近では海外輸出に振り向けられ始め、中国当局は「無秩序な輸出は対外イメージを損ねる」として抑制に乗り出した。

■工業社会が高度に発展すると資本家と労働者の間に解決不能の矛盾が生じ、最後は数で勝る労働者が暴力によって生産手段を奪い取って国家権力まで掌握する、とマルクスやエンゲルスが予言したそうですが、実際に社会主義革命が起こったのは農業国や貧困に苦しむ非工業国ばかりでした。究極の官僚主義と言われる統制(計画)経済を採用して国民を幸福にした例はまだ有りませんし、インドは紛れも無く戦後にソ連からの援助と指導で社会主義体制を導入していたのです。それが91年に終わって経済を自由化し始めたという話でしたなあ。中国の改革開放政策に遅れること10年余り、ソ連の崩壊の直後という時期に当たります。後進農業国家が社会主義を採用して強引に重化学工業を発展させようとしても、何故か民生品は貧弱で劣悪なまま放置されて原水爆に到る武器ばかりが発展してしまいます。

フラット化する世界? 其の壱

2007-01-30 15:04:10 | 外交・世界情勢全般
■1月30日と言う日は、何故かインドに絡む話題が目立ちます。NHKが三夜連続で『インドの衝撃』が完結するかと思えば、讀賣新聞が『興隆インド』という特集記事の長期連載を始めました。第一部は『夢の大地へ』という題名で「ホットメール」を開発したサビル・バティア氏、「インフォシス・テクノロジーズ」の名誉会長ナラヤナ・ムルティ氏、同社社長のナンダン・ニレカニ社長に取材し、91年から始まった経済自由化の立役者だった元財務省主席顧問のアショク・デサイ氏という錚々たる面々に対して行ったインタヴューを柱に、インドが経験したこの17年間を総括して現状、そしてインドの未来を考えるという力作だそうです。

■讀賣新聞の特集は、一時期に大流行した「中国へ、中国へ」と草木も靡(なび)くような提灯記事ではなさそうで、インド社会が抱え込んでいる問題にも言及して、取って付けたような「輝かしい未来」を偽造するようなものではないと思われます。初回の分でも、電力を始めとする社会インフラが未整備であること、毎年1200万人もの新しい雇用を生み続けねばならないこと、製造業を卑しむヒンズー教の伝統が重く圧し掛かっていることなど、決してインドが「地上の楽園」になっているというヨタ記事でもなさそうです。常態的に過剰な人口に苦しんでいた中国が、1人子政策の断行によって人口増加率が下がり続けると、インドが世界最大の人口を抱える国になると言われています。

■一説には、菜食主義の伝統が広く行き渡っていることで深刻な食糧危機が回避されていると言われています。しかし、NHKスペシャルでも讀賣新聞の特集でも、「消費者の目覚め」を特記大書している通り、穀物を中心とする質素な食生活ががらりと変わって鶏などの肉食文化が急速に拡大して行くと、食糧が飼料に回されてカロリー効率が低下し、近い将来に深刻な食糧不足が懸念されるという話も有ります。インドは典型的なモンスーン気候の国なので、量だけで考えれば水資源に恵まれているわけですが、清潔な飲み水となると事情は違って来ますし、莫大な飼料を生産するようになると定番の過剰な灌漑による耕地の疲弊や砂漠化の難問に直面するでしょう。

■「過剰な人口」を「優秀な人材の宝庫」に変え、豊かな水資源を優良な飲料水に変え、広大な大地を荒らさずに生産性を上げられれば、おおむねインドの未来は明るいものになるでしょう。巨大な国なので、バランスが崩れた時はどうしようもない危機的状況に陥る危険は常に有るでしょうが、輪廻思想に基づく恐ろしく気長な時間感覚を上手に利用して、ゆっくりと慎重に変革を続けて行けば、社会の動揺も少なくて済ませられそうな気もします。しかし、悠久の時間を実感するような人達に近代化には欠かせない「定刻」という概念を根付かせるのは大変でしょうなあ。


……ニレカニ社長は、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、トーマス・フリードマン氏に対して、経済と社会のグローバル化を「世界は平らだ」と表現したことでも知られる。この言葉はそのまま同氏の書名『ザ・ワールド・イズ・フラット』(邦題は『フラット化する世界』)にも使われ、近年の世界的流行語にもなった。…

■この本は未見ですが、題名と同書を引用した文章などからすると、はなはだ「予定調和」の強い臭いを感じます。グローバル化は確かに世界を均一化して行く運動のように見える面は有るでしょうが、本家本元の米国を見れば、恐るべき格差が広がっていますし、それを見習おうともがいている日本でも「格差社会」が深刻な問題になってしまいました。皮肉な見方をすれば、インドにはカースト制度と強固な男尊女卑の文化が有るのですから、万が一、世界がフラット化しても、インド社会だけはフラット化しないという皮肉な結果になる可能性さえ有ると言えるでしょうなあ。グローバル化がフラット化と同義だとしても、そして、ニレカニ社長の「予言」が的中したにしても、果たして、それが人類にとって幸福なのかどうかは別問題でしょう。

衛星破壊の波紋 其の伍

2007-01-30 07:05:56 | 外交・情勢(アジア)

ロシアにとってインドは、「特別な信頼関係」(プーチン大統領)で結ばれた国だ。冷戦時代からの友好国で、欧米が非難したチェチェン問題でもロシアの立場を支持した。インドも、ロシアが隣国パキスタンに武器を売らない姿勢を貫いたことに信頼を寄せる。シン首相は「大国同士が数十年にわたって友好を維持しているというのは、他にない」と語った。

■「パキスタンに武器を売」っているのは中国と米国で、それに対抗するようにロシアと結ぶインドの外交は、高等数学の多元高次方程式を解くような印象が有ります。さすがは数学王国と言うべきでしょうか?


対ロ関係でインドが期待するのは、増大するエネルギー需要への対応だ。サハリン沖の石油天然ガス開発プロジェクト「サハリン1」に続き「サハリン3」への参画も狙う。近年は米国をはじめさまざまな国が経済成長がめざましいインドへのアプローチを強めるが、インドは、特定の国や勢力に偏らずに関係を築こうとしている。2月には、中印ロの外相会議が2年ぶりにニューデリーで開かれる。……2007年1月26日 朝日新聞

■とうとう日本が追い出された「サハリン」にインドが入り込みます。「中印ロ」の会議には日本などにはまったく声が掛からないのでしょうなあ。北朝鮮に対しては「対話と圧力」、米国とは強固な軍事同盟、中国相手には靖国参拝はしない、そしてロシアとは北方領土もエネルギーも交渉の糸口さえ見つかりません。


プーチン露大統領は25日、中国が先に実施した弾道ミサイルによる人工衛星破壊実験について触れ、友好国中国の立場に理解を示した。大統領は「宇宙の軍事化には反対だ」と基本姿勢を示したうえで、「同様の実験は80年代に(米国で)行われた。米国ではいまも宇宙の軍事化を進める動きがある」と米国を批判した。
1月25日 毎日新聞

■6箇国協議が何の成果も出せない理由がこの辺に見えるような気がします。米国や欧州が昔は同じ事をしていたぞ!などと言い出したら、「京都議定書」など紙くずになってしまいます。同じ理屈で世界中が核武装に走り出したらどうするのでしょう?このロシアの暴論を否定する話が、讀賣新聞に掲載されています。


……破壊実験は冷戦終結以降、どの国も行っていない。能力誇示だけが、中国の意図なのか。米政府は「宇宙分野の国際協力の精神に反する」と批判した。日本や韓国なども、同様の懸念を表明した。国際社会が中国に抱いた懸念の一つは軍事情報に対する中国の変わらぬ秘密主義である。米軍が今月12日(日本時間)の破壊実験を確認し、米メディアがその概要を伝えた。中国政府が実験実施を公式に認めたのは、10日以上たってからだ。中国政府はこの間、「過去も現在も将来も、宇宙の軍拡競争に加わるつもりはない」と表明するだけで、実験の有無の確認さえ避けた。……中国は近年、有人宇宙船の打ち上げ成功など、宇宙技術を急速に向上させてきた。そうした技術の軍事転用の懸念は、今回の破壊実験で一層強まった。中国政府が昨年末に公表した「国防白書」は、宇宙技術の向上を国防科学技術工業の柱に位置づけると明記している。今回の破壊実験はどう行われ、全体の国防計画とどう関連するのか。中国は情報を公開すべきだ。

■奇怪な暗殺事件が起こるようなロシアですから、宇宙戦争の計画が極秘に進められるのは当然の事なのでしょう。裏に回って中国と共同で宇宙開発を進めて徐々に米国との協力体制を修正して行くつもりなのかも知れません。


米政府は昨年、国家宇宙政策を10年ぶりに改定し、安全保障面の宇宙開発重視を打ち出した。米政府内には、中国の実験は宇宙開発で圧倒的優位に立つ米国への挑戦の一歩、との警戒論も出ている。そうした動きは、宇宙を舞台にした軍拡競争を拡大させよう。破壊実験で発生した「宇宙ごみ」も懸念材料である。ミサイル搭載の弾頭が高度850キロの中古の気象衛星を破壊した際に、1ミリ以上の破片200万個が発生した。最低10年以上は浮遊し、ほかの人工衛星に損傷を与える恐れがある。既に攻撃能力を持つ米国が過去20年、実験を控えてきたのも「宇宙ごみ」が一因だ。冷戦時代に比べ、宇宙の民生利用は格段に進んだ。国際通信システムなどを混乱させるような事態になれば、中国自身にも被害が及ぶ。……
2007年1月26日 読売新聞)

■中国国内の環境汚染やゴミ問題は何度も報道されていますが、海ではエチゼンクラゲの大繁殖が起こっているように、その汚染はどんどん海外に広がっています。それがとうとう宇宙空間にも達したという事です。大気中には有害物質や恐ろしいウィルスが中国から流れ出しているのを、誰も止められませんし、目に見えないほど小さなゴミが200万個も散らばったら、一体、誰が拾い集められるでしょう?こんな事を平気で出来るのは、初めからゴミ処理をまったく考えない連中だけです。これは長年の伝統と文化の問題に帰着しますから、国連や国際会議で何度取り上げても治りません。中国の膨張も治りませんし、食糧とエネルギーの決定的な不足も治りません。

衛星破壊の波紋 其の四

2007-01-30 07:05:18 | 外交・情勢(アジア)
■こうした大きな世界のうねりを見ていないと、どんなに「美しい国」になっても間抜けな成金国家に成り下がってしまいます。「憲法改正」程度の問題でもたもたしている日本は、実に扱い易い外交相手でしょうなあ。冒頭から引用しているインタヴューの最後はこうなっております。

……さらに軍事面でも、胡政権は「昨年の国防白書で、今後の軍事問題の主軸は『平和と発展』と強調する半面、衛星攻撃実験を行い国際的な非難を招来するなど言動が大きく異なっている」と批判。「超大国を目指す動きが露骨になっており軍事的に日中間が緊張する恐れが強い」と警告した。
2007年1月29日 東京新聞

■東アジアの軍事的緊張が高まる可能性については、昨年秋に起こった米海軍の航空母艦を中国の潜水艦が追い回して威嚇した事件が起こった時にも、胡錦濤さんは何も知らなかったのではないか?という疑惑が取り沙汰されましたが、今回の衛星破壊も同じような心配が有るようです。


22日付のニューヨーク・タイムズ紙によると、ハドリー米大統領補佐官(国家安全保障担当)は同紙とのインタビューで、中国の衛星攻撃兵器実験に関して、「問題は中国政府のどのレベルまで(実験について)知らされ、承認されたかだ」と指摘、胡錦濤国家主席ら中国指導部が軍部による実験を十分に把握していなかった可能性もあることを示唆した。 
1月23日 時事通信

■建国以来、一党独裁体制を支えているのは人民解放軍ですから、うっかりすると政府が軍部に引っ張りまわされる危険は常に存在している国です。北朝鮮でも、ミサイル発射を将軍様が知らなかったという噂も有りましたなあ。そんな国と国境問題を抱え込んでいるインドなどは、ゆめゆめ油断なく、しっかり対応していますぞ。


Shashi Tyagi空軍大将は28日、「宇宙空間の利用」を視野に入れた航空宇宙防衛司令部を設立すると発表した。通信社PTI(Press Trust of India)が明らかにした。Tyagi大将は西部ガンディナガル(Gandhinagar)で記者会見に臨み、「空軍の活動領域が拡大するにつれ、宇宙開発の重要性が増しており、そのための施設が必要だ」と語った。
1月29日 AFP

■中国と北朝鮮を技術的な後ろ盾に持っているパキスタンという隣国に備えるインドですから、「飛び道具」でも遅れを取ってはいられません。NHKでは1月28日から三日連続で特集番組を放送するくらいにインドは注目されているようですが、実質的にはパキスタンとは戦争状態に有り、懸案のカシミール問題では中国も一枚噛んでいる事を忘れては行けません。IT技術で世界の舞台に登場したインドが、軍事的にも更に上を目指してインド洋やらヒマラヤ山脈の上?へと勢力圏を広げようとするのは当然の話です。そんなややこしいインドにロシアが接近しているので、ますます構図が複雑になっておりますなあ。


ロシアのプーチン大統領は25日、インドを訪問しシン首相と首脳会談を行った。会談後、両国の戦略的パートナーシップの発展をうたった共同声明を発表。原子力、宇宙分野などでの関係強化に向けた合意文書に署名した。急成長する経済を支えるエネルギー面の協力など、インド側の期待を反映した。共同声明や合意文書には、インド南部のクダンクラムでのロシア製原発4基の増設、ロシアの全地球測位システムGLONASS(ロシア版GPS)へのインドの参加、10年までに両国間貿易額を3倍の100億ドルに高める目標、軍用輸送機の共同開発計画が盛り込まれた。……

■中国が欧州の「ガリレオ」に参加するなら、インドはロシアのグロナスに参加するし、米国から核技術への協力を得られたら、直ぐにロシアとも同様の約束を取り付ける。世界を手玉に取るような外交ですなあ。

衛星破壊の波紋 其の参

2007-01-30 07:04:52 | 外交・情勢(アジア)

…今回の訪問で胡主席はまた、ダルフール紛争などの解決に向け、“調停役”をアピールする見通しだ。……政府特使としてスーダンを訪れた●(=櫂のつくり)★(=携のつくり)・外務次官補はダルフール問題について、「平和・安定に向け積極的な役割を果たしたい」と述べるとともに、新たな制裁については「問題を複雑にするだけ」(同次官補)と、反対する姿勢を表明、スーダン政府に対し配慮を見せた。

■北朝鮮問題でもイラン問題でも、穏健な立場を堅守している北京政府には、世界中に散らばる人権問題を抱えた問題国家との交易という隠れたテーマが有ると思われます。勿論、人権問題が取り上げられるとロシアと共に吊るし上げられる心配も有るでしょうが……。


…ただ、中国は2005年3月にアラブ系民兵組織指導者の渡航禁止などを含む国連制裁決議と、同年9月のダルフール地方に国連の平和維持活動(PKO)部隊を派遣するための決議についてはいずれも棄権している。一方、アムネスティ・インターナショナルなど人権団体は、中国のスーダンに対する武器輸出が紛争をあおっていると批判。これに対し、中国側は正当な取引だとして、反論している。

■「死の商人」として急成長している中国の姿に関しても、日本ではほとんど報道されていません。今でもインドシナ半島に埋められている地雷の大半は、メイド・イン・チャイナですし、「アフリカ大戦」とも呼ばれる巨大化するアフリカ大陸の紛争が起きている地域では、メイド・イン・チャイナの軍需物資が敵味方の区別無く、大量に売り付けられているのも衆知の事実です。中国は、アフリカ全土を相手にする総合商社になるつもりのようです。かつては日本の商社は「インスタント・ラーメンからミサイルまで」と言われたものですが、今では中国にすっかりお株を奪われているようですなあ。


…胡主席は、昨年4月にナイジェリア、ケニアなど3カ国を訪問、6月に温家宝首相がアンゴラ、南アフリカなど7カ国を訪問した。さらに11月にはアフリカ48カ国の首脳らを北京に招き、協力フォーラムを開き、「新しい戦略パートナー関係を築いた」(唐家セン国務委員)と自負する。中国は、国連で重要な発言力を持つアフリカ諸国との関係を強固にし、中国の影響力を高めたい考えだ。さらに、中国からの対アフリカ投資は「70~80億ドル」(中国外務省)、800社以上が進出している。経済援助の対象国は約50カ国に達し、ナイジェリアでも石油採掘権を獲得するなど、資源外交を一段と加速させている。
2007年1月27日 産経新聞

■こうした背景を理解すれば、人工衛星を撃ち落として見せることが国際市場での戦争商売にとっては大いなる追い風となる宣伝だという事も分かりますなあ。ますます中国製ミサイルが人気商品となるでしょう。スーダンに関しては、驚くべきことに米国との連携の動きまで有るようですぞ!


……スーダン問題では、胡主席のアフリカ歴訪を見据えてブッシュ米大統領が先週、ナチオス・スーダン問題大統領特使を中国に派遣。中国の唐家●(●は王へんに旋)(タン・チアシュワン)国務委員らと会談し、協力を求めた。また、中国もナチオス特使と北京で協議した▲■(▲は曜のつくり、■は携のつくり)外務次官補を政府特使としてスーダンに派遣。▲特使は16日にバシル大統領と会談し、「中国はダルフール問題に強い関心を持っている」とクギを刺したうえで「対話による平和解決」の必要性を強調した。米国に次ぐ世界第2位の石油消費国となった中国は近年、対アフリカ外交を強化。政情不安や人権弾圧などで他国が尻込みする国々にも積極的に進出している。とりわけスーダンへの接近は顕著だ。中国の石油大手・中国石油天然ガス(CNPC)などが、欧米企業の撤退の空白を埋める形で油田開発権の買い取りや石油精製所の建設を進め、同国の石油輸出の約半分は中国向けとの見方もある。

■まるでサバンナのハイエナ君たちのような動きでありますが、長年に亘って日本がばら撒いた援助資金が効果を上げた後、果実は全部中国が持って行くというわけです。国連で日本の要望や提案が次々と潰される理由がここにも表われていますなあ。


……中国はスーダンに武器も輸出。一方で「世界最悪の人道危機」と呼ばれるダルフール問題では国連制裁に反対してきた。しかし、昨年4月に国連安全保障理事会が採択した制裁決議や、ダルフール地方に国連の平和維持活動(PKO)を展開するための同年9月の決議では、中国はロシアと共に棄権に回って事実上黙認。中国に「責任ある利害関係者」の自覚を促す米国や「アフリカを植民地化している」という先進諸国の厳しい視線を意識し、国際協調路線に傾きつつある。……
2007年1月19日 朝日新聞