旅限無(りょげむ)

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鳥インフルエンザ 其の壱

2007-01-23 12:51:32 | 健康
■宮崎県で高病原性鳥インフルエンザ・ウィルスによる鶏の大量死が起こりました。忘れもしない04年2月に起こった京都府での大量死では、事件が内部告発によって発覚した事に加えて、素人染みた隠蔽工作も明らかになって、ワイド・ショーとテレビ・ニュースでは親子を画面に連日大写し、極悪人のように吊るし上げながら、汚染現場を勝手に歩き回ってウイルスを撒き散らしている自分達の愚かさを棚に上げて、どんどん感情的で扇情的な報道をエスカレートさせて、地元の養鶏業の功労者だった父親と妻とが首吊り自殺をして、実質的な経営者だった息子が泣き崩れるまで、過熱報道は収まりませんでした。

■その時の反省からか、マスコミも冷静な報道をしているようですし、鶏が大量死した養鶏場も早めに報告して事後の対処を公的機関に全面的に任せたようで、隠蔽→追及、逃亡→追跡、会見=集団リンチという悲しい騒動は起こらずに済みそうですなあ。どうやらウイルスの侵入路は養鶏所周辺の局地的に限定されているそうですし、ウイルス感染の基礎知識など皆無の日本製パパラッチがうろうろしたりしていないようですから、今のところは限定的な衝撃と騒動で終わりそうな気配です。

■新聞報道によりますと、人智を超えた渡り鳥たちが作っている地球規模のネットワークが真の原因と考えられるようですから、感染が疑われる事象が隠さずに早期に通報して迅速に対処して抑え込んでしまうしか対処方法は無いようです。


2003年、韓国で鳥インフルエンザが流行。
2004年1月11日。山口県東部の採卵場で、強毒性のH5N1型ウイルスで鶏が大量死。
同年 2月。大分県、京都府に感染が広がる。

■鳥インフルエンザもインフルエンザですから、基本的には冬季に活発化するようです。毎年、新型に変異して襲来するインフルエンザは風邪とは違う感染症だ!という事も、まだ十分に周知徹底しているとは思えませんから、万一、鳥インフルエンザが人へ感染でもしたら、一体、どれ程の大騒ぎが起こるのやら、心配ですなあ。04年度に韓国に襲来したウイルスが何処から来たのか、最後まで分からなかったようですが、噂としてはチャイナとヴェトナムとの国境付近で、家畜と同居している人達が多い場所が最初の発生地なのではないか?とも言われたものですが……。


2006年11月、韓国南部の全羅北道で鶏が大量死し、H5N1型鳥インフルエンザ・ウイルスを検出。続いて中国、モンゴル、ロシアでの流行。

■04年と06年に挟まれた05年はどうったかと言うと、二つの大流行の間で中国青海省の「青海湖」での渡り鳥が大量死するという事件が起こったのでした。現地には「鳥島」という観光名所が有るくらい、そこは自然の王国で人間と鳥が接近など不可能な場所なので、大騒ぎにはならなかったようです。とは言っても、「立ち入り禁止」の表示を見ると何故か血が騒いで境界線を踏み越えてしまう困った病気を持った人が居るものですから、まったく心配は無いというわけではありません。現地のチベット人は最初から鳥には宗教的な理由で近付きませんし、鳥肉も卵も食べませんから、鳥インフルエンザが大流行しても伝統的な生活をしている限りは安全と思われます。でも、食生活がどんどん漢族化していますからなあ……。

■面積4587平方メートルの巨大な塩湖である青海湖は、よくよく調べて見ると東南アジアやインドから北上する鳥たちと、シベリアや中央アジアから南下する鳥たちが交差する場所らしいので、ここで大量死が起こったからと言って、どうする事も出来ないようですなあ。青海湖に集まる渡り鳥の数に負けないのが、チャイナ南部からインドシナ半島の広大な地域で鳥やブタと同居している人間の数です。人間が風邪とよく似た症状で苦しむインフルエンザは、人とブタとの間でキャッチボール感染を繰り返すうちにウイルスの遺伝子が変異するのだそうですが、この種のウイルスと人類との付き合いは結構長いので、ワクチンが無くても発症しなかったり軽症で済んでしまう人も多いようですなあ。

福井さんの福袋 其の参

2007-01-23 12:51:14 | マスメディア

……日銀が今回、追加利上げに踏み切る背景には、「1月を逃せば好機は当面来ない」との判断がある。成長路線を重視する政府・与党は、今夏の参院選が近づけば利上げへの牽制をますます強める、と読むからだ。1カ月前、日銀は「強弱の経済指標が入り乱れている」(福井日銀総裁)として追加利上げを見送った。最大の理由が個人消費の不透明感。

■ここに「不透明感」が出ています。その直後には、「7~9月の個人消費が、前期比0.9%減とマイナス幅を拡大した」という数値が紹介されておりますぞ!


……それが一転、再び利上げの機運が高まったのは、年末に発表された昨年11月の消費者物価指数が6カ月連続のプラスとなり、家計調査でも消費の持ち直し傾向がはっきりしてきたことだ。……
1月17日朝日新聞

これでは、じわりと物価高が始まっていて、格差社会と呼ばれる経済格差の下半分に放り込まれてしまった人達は、真綿で首を絞められ始めているという事になりませんか?アホみたいに借金を積み上げて夕張市の破綻を見て真っ青になっている何処かの地方自治体の首長さんなどは、利上げとなったら辞職しようかなあ、などと考えていたのではないでしょうか?


……消費の先行き不透明感をぬぐえないとする声は日銀内に残った。金融政策を決める政策委員が「はっきり前に進んだ」と自信を深めたのは、支店長会議で「各地の消費の底堅さ」が報告された先週12日。ギリギリの段階だった。
1月17日朝日新聞

■これが、『福袋』が売れているぞ!の太鼓持ち会議の話です。ここまで畳み込むように「利上げは確実」のメッセージが並べられているのですから、記事の7割程度を読んで新聞を閉じた人は騙されました。6段の特集記事の5段目最後の行に、「だが」が出て来るのです。


……だが、景気が再び変調に見舞われれば、利上げの結果責任を問われるのは必至で、中央銀行としての信任も揺らぎかねない。福井総裁が村上ファンドへの投資問題で批判を浴びた時よりも、日銀にとって深刻な事態に陥る可能性もある。……中小企業や地域での回復は遅れ、「実感なき回復」ともいわれる。なぜ今利上げなのか。根拠を明快に説明できなければ、日銀は「政治判断からの見切り発車」との批判を浴びることになる。1月17日朝日新聞

■最後の1段にこんな締め括りが有ろうとは!「利上げの根拠を明快に説明」する義務は、マスコミにも有ったのではないでしょうか?


……15日の街頭演説で「これは我々の政治判断。利上げは許せない」と明言していた自民党の中川昭一政調会長。16日夕になって「政治が口出ししてはいけないことはわかったうえで、我々の意見も参考にしていただければありがたい」と一転、トーンダウンした。……大阪市での党の集会であいさつした公明党の太田代表と北側一雄幹事長も利上げには触れなかった。……14日には日銀法改正まで持ち出して牽制していた自民党の中川幹事長……も16日午前の記者会見では…「日銀の景気判断と政府が異なるなら、そのことを国民に説明することが必要」……
1月17日朝日新聞

■これに続けて「撃ち方やめ」の引き金として、尾身財務相の「議決延期請求権」を使わない発言が取り上げられているのです。まさか、日銀から水面下で自民党に対する裏工作が続いているとは、まったく分かりません。最後に確認しておきたいのは、17日の1面記事に付けられたリードに有った「福井総裁が利上げを提案すれば賛成多数で可決される」という一文に対応する19日の記事です。


……政策決定会合で議長の福井総裁が「現状維持」を提案したのに対し、9人のうち3人が反対。……日銀は会合直前になっても、審議会の意向が真っ二つに割れていることを把握し、「今回だけは本当に票読みが難しい」(幹部)との声が漏れていた。……
1月19日朝日新聞

■福井総裁は、「利上げ」を提案したのではないのです!「現状維持」とは「利上げをしない」案ですから、親分が利上げを考えていなかったのですぞ!反対、つまり「利上げ」を求めたのは、学習院大学教授の須田美矢子さん、外資系証券エコノミストの水野温さん、みずほフィナンシャルグループ副社長の野田忠男さんの3人だそうです。日銀の正副総裁も、東京電力副社長の春さんも、三井物産副社長の福間さんも、東大教授の西村さんも、皆が利上げに反対だったそうです。2人の大学教授が意見を異にするのは有り得る話ですが、金貸しと株屋さんが賛成して電気屋さんと商社が反対しているところに、今の日本経済の歪みがはっきりと現れていますなあ。

■気の早い金融機関のディーラーさんたちは「利上げ」を織り込んで取引を始めていたそうですし、それと足並みを揃えていたマスコミは、「来月には利上げだ!」と言い出しているそうですなあ。19日の朝日新聞紙面にも「次回へムード作り」と小見出しが付いていました。変な話ですが、次回の政策決定会合が予定されている2月、不二家製菓のおぞましい製造実態が影響して、バレンタイン・チョコレートが売れない!などという椿事が起こったらどうなるのでしょう?それはともかく、これで福井総裁には自民党が握っている手綱ががっしりと巻き付いているのははっきりしましたし、決定的な経済政策を持たない自民党は、当分の間は銀行に異常な低金利を続けさせて莫大な利益を上げて貰い、税金をマケてやる返礼としてマスコミに嗅ぎ付けられない方法での「政治献金」をたっぷりと頂戴するつもりのようであります。

■それにしましても、「利上げはない」と正確に予測したメディアは有ったのでしょうか?大本営発表と変わらないと言われる記者クラブ発表と、意図的に流される噂話などで経済予測記事を書かれたら、読者はトンデもない被害を受けそうです。ご用心、ご用心。

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福井さんの福袋 其の弐

2007-01-23 12:51:04 | マスメディア
■そもそも、「福袋」というのは、販売価格よりも中身はその数倍の価値になる商品が詰め込まれているのが普通で、店側にとっては客寄せ用の縁起物として、赤字覚悟の大盤振る舞いのパフォーマンスとして用意するものでしょう?素人判断ながら、そんな物を求めて目の色を変えて大群が集まっているという事は、決して皆さんの懐具合が温かくはない証拠ではないか?と思えてなりません。以前は400円か500円した品物が、100円ショップで手に入るのを大喜びし、誰が万引きして来たのか分からない新刊コミックを中古書店で半額で購入する、そういう吝嗇(りんしょく)気質がすっかり定着してしまうほど、下々の日常生活は長い不況状態に放置されているように思えます。

■少なくとも、六本木ヒルズに入居している人達は、寒い最中に足踏みしながら行列して「福袋」を買い求めるようなことはしないでしょう。その六本木ヒルズ族の1人だった元官僚の村上さんが、極一部の大金持ちだけを相手にして売り出した「福袋」が、『村上ファンド』でした。一口数千万円だの数億だのという高いハードルで会員を絞り込んで、莫大な資金を証券市場で運用してアブク銭を荒稼ぎしていたのが村上ファンドだそうですが、日銀総裁の福井さんは特別扱いで、一般の会員が出資する最低金額の数分の一でファンドに参加していたばかりか、その資金も親切な誰かさんが貸してくれたとも言われていますなあ。それなら、自分は何もしなくて良いわけです。電話一本で、「ああ、そういう事なら、よろしく」と言っただけで、誰かが村上ファンドに入金してくれて、一定期間が過ぎたら元本は面白いように膨らんで返って来る。カネを貸してくれた人は利息を上乗せして回収し、余った?利益分が福井さんに転がり込むという仕掛けです。これでは、まるで一銭も払わずに札束が詰まった「福袋」を買った?ようなものですぞ!

■村上ファンド側としては、「アノ日銀総裁も出資していますよ!」の一言が殺し文句になることは百も承知で、数千万円の「小銭」をプレゼントされるのは当然だと思っているエライ日銀総裁とは、阿吽(あうん)の呼吸で結び付いていたのでしょうなあ。マスコミに嗅ぎ付けられた時には、「私は金融の素人なので……」と日銀総裁が言い出したかと思えば、元官僚の村上さんは「金儲けは悪いことですか?」と記者さん達に問い返していたのが印象的でした。今年、年明け早々に、教育援助団体か何かに福井総裁が儲けた「小銭」が寄付されたという小さな記事が出ていましたが、村上さんは長い裁判を戦っている最中だそうです。福井さんは何か差し入れでもしたのでしょうか?そう、『福袋』か何かを……。

■「利上げ見送り」が決った翌日の新聞は、実に人を馬鹿にした記事を言い訳がましく掲載するハメになってしまいました。1月17日と19日の記事を並べてみると、新聞を読むことに大いなる疑問が湧き上がります。


……11月の家計調査では、実質消費支出のマイナス幅が縮小し、市場予想を上回る改善となった。今月の日銀の支店長会議でも底堅さが確認された。設備都市も引き続き堅調で……。心配された米国経済の減速も、雇用の改善など軟着陸の見通しが強まっている。
1月17日朝日新聞

■行け!行け!どんどんの雰囲気が溢れていますなあ。それが「日銀、利上げ見送り」の縦組み白抜き大見出しに続く記事の雰囲気は一片しています。


……見送りの背景にあるのが、個人消費と物価上昇の不透明感だ。福井総裁は景気の先行きについて「生産・所得・支出の好循環のメカニズムが維持される」と自信を示しつつも、足元の個人消費と消費者物価は、当初見通しに比べ「いくぶん下振れている」と述べた。1月19日 朝日新聞

「所得・支出の好循環」が確認できるのなら、「個人消費」が予想外に少ないという話とは矛盾していまします。もっと腹立たしいのが、やはり政府との裏取引?です。


……尾身財務相は16日の閣議後の記者会見で、「日本経済は全体として順調な回復過程にある。議決延期請求権を使う局面ではない」と発言。……安倍首相も同日午後の会見で「金融政策は日銀の専管事項で、日銀が適切な判断をされると思う」として反対姿勢を示さなかった。
1月17日朝日新聞

■これでは、まるで財務相も首相も「利上げに賛成」だと思ってしまいますなあ。ところが、2日後の記事では裏事情が暴露されています。


……政治圧力に屈する形では日銀の体面が保てない。政府側には利上げ回避に向けてそんな環境づくりをしようという動きもあった。日銀執行部が「見送り」に傾いた16日、尾身財務相は「議決延期請求権を使う局面にはない」と述べた。1月19日朝日新聞

同紙面の解説記事には、「……(日銀)幹部がひそかに、政府・与党に状況を伝え、政治に屈したと受け取られない形での見送りを演出しようとした」という一節が有りますぞ!17日の特集『時時刻刻』は、「政治側、土壇場で引く」という一段抜きで横組み大見出しの下には、「追加利上げへ」「日銀「この好機逃せない」」と小見出しが縦と横に配されているのです。その記事には、こんなことが書いてい有ります。


ゼロ金利解除から半年。日本銀行の追加利上げが確実となった。……政府・与党は「デフレに後戻りする可能性がある」と牽制(けんせい)してきたが、最後は消極的容認に傾いた。……土壇場で引いた政治サイドには、「後は日銀の責任」という計算も透けて見える。
1月17日朝日新聞

■一体、何が「透けて見え」ていたのでしょう?どうやら、「状況証拠」と「流言」「噂」「思い込み」がごっちゃになって、透けて見えるはずの実態が見えなくなっていたようです。でも、それを「不透明」という一言で誤魔化すのは如何なものでしょう?