旅限無(りょげむ)

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女性と米国を敵に回すか、安倍政権? 其の弐

2007-01-28 23:28:08 | 政治
■政権発足当時に安倍総理の支持率が高かったのは、平壌で威勢の良いところを見せたという話が、マスコミから大々的に流されテレビ映像にまでなった事が大きな原因だったと思われます。「対話と圧力」を「圧力の後に対話」政策に転換するのかと、多くの国民は淡い希望を持ったはずですが、肝腎の「圧力」は米国の軍事力だけが唯一の頼りですから、米国政府とのパイプを強化しなければならないことになります。就任してから中国・韓国、それに引き続いて東南アジアから欧州に回って見せた安倍首相でしたが、何故か米国には行かず仕舞いで国会が始まってしまいました。対米関係は小泉さんから丸ごと引き継いだことになっているというメッセージがほのかに漂っているかのようですが、日本が陸上自衛隊を引き揚げてからのイラクはどんどん泥沼化して、米国は再び孤立してしまっております。こういう時に家庭の事情を優先させていると、信頼関係が大きく傷つく恐れがあります。

■そんな時に初代防衛大臣が、何を勘違いしてしまったのか、安倍政権が外交でも迷走していることをあちこちで宣伝して歩いているようですなあ。


久間章生防衛相は27日、長崎県諫早市での講演で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)のキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への移設問題をめぐり「米国は政府同士が決めたのだからそれをやったらいいというが、沖縄県知事がうんと言わないとできない」と、あらためて米政府の対応を批判した。久間氏はイラク戦争をめぐる米大統領批判を含む一連の対米発言を繰り返したあと、26日に発言自粛を宣言したが、すでに米側からは不快感も伝えられており、日米同盟関係に現実の悪影響を与えかねない情勢。政府内では「安倍晋三首相も心配しており、対応を考えなければならない」(政府高官)と危機感が広がっている。

■まさか海外メディアには伝わらないとでも思っているはずは無いのですが、これから外務省から独立した情報収集と分析の両方で能力を高めて行かねばならないという大切な時期に、基本的な情報発信能力に大きく欠けた人が大臣を務めているとすると、エライことになりそうです。


講演で久間氏は、移設先の埋め立てに知事の許可が必要なことに触れ、「知事の意見を聞き入れながらやっていかなければならないのに、米国は分かっていない」と主張した上で「あまり偉そうなことを言ってくれるな。日本のことは日本に任せてくれ」と米側に伝えたと解説した。

■日米関係が突如として「対等」になったのか?と誰もが驚くような夜郎自大の響きが有る発言でありますが、ブッシュ政権が終わると見て先々の事を考えもせずに不用意な発言をしているのだとしたら、これは大変な事になりそうですなあ。


また、久間氏は24日の日本記者クラブでの会見で、イラク開戦について「核兵器がさもあるかのような状況でブッシュ大統領は踏み切ったのだろうが、その判断が間違っていたと思う」と発言したが、外務省筋によると、米側は直ちに外交ルートを通じて不快感を表明し、日本側は大統領批判ではないと釈明した。
2007年1月28日 産経新聞

■もう日本政府、少なくとも防衛省はイラク問題の部外者にでもなった気でいるような発言ですが、今でも航空自衛隊は命懸けの輸送活動を続けているのですぞ?!危険な離着陸時に必要な警戒情報がたった一回でもサボタージュされたりしたら、正体不明の小型ミサイルの標的にされるかも知れないという緊迫感が、大臣さまには伝わっていないようです。アホな事を喋っている暇が有ったら、さっさとバグダッドへ飛んで、航空自衛隊の隊員を労いに行ったらどうでしょう?

■安倍政権は、視聴率の取れないテレビにも嫌われ、日本国内の女性も敵に回わし、米国からも不信感を持たれるような恐ろしい状態で、これからの選挙戦を続けるつもりなのでしょうか?何だか、参議院選挙前に、総理大臣の交代が有るような気配になりそうですなあ。そうなれば、悲願の「政権交代」が見えてくるはずの民主党は、得意の自責点をまたぞろ増やし始めているようですから、自民党総裁が交代する前に、クラッシャー小沢の豪腕が唸って空中分解してしまうかも知れませんなあ。一体、誰が参議院選挙の投票に行くのでしょう?

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女性と米国を敵に回すか、安倍政権? 其の壱

2007-01-28 23:27:39 | 政治
■1月半ばの日本は、納豆が消える騒動がテレビ局が消えるような雲行きになりまして、衛星放送に地上波デジタルが加わって、ケーブルTVにDVD、ネット配信ソフトも無限に増えるそうですから、かつて田中角栄さんが日本中に民放テレビ局を作らせた時代の潮目を変えて、テレビ局の統廃合が始まるのでしょうか?1日24時間しか無いのですから、馴れ合いと惰性に流されてテレビと付き合っていたら、見ている方の世界像が際限もなく歪んで行くでしょうなあ。「お知らせ」と称して宣伝映像を流しているテレビ局が有るかと思えば、「情報提供番組」という名前の露骨なタイアップ宣伝番組を並べているテレビ局も有るようです。テレビ番組欄をざっと眺めるだけで、喰う・買う・泊まるの宣伝としか思えない番組名ばかりが目立っていますぞ。
 
■テレビが流すCMの中には、医師が処方しない大衆薬が季節に合わせて「良く効きます!」と年中流されていますし、誰が観ているのか分からない早朝や深夜の枠では、奇跡としか思えない「体験談」を並べたちょっと怪しい薬や健康機器を売りつけようとする番組が並んでいるそうですなあ。テレビのCMとの付き合い方が、随分と幼稚になってしまったのかも知れません。テレビの料理番組や宣伝を利用して夕餉(ゆうげ)の献立を決めるのは一つの方法でしょうが、午後のワイドショーが医学用語をまぶし付けて、全国の食品市場が混乱させるほどの影響力を持つような時代になってしまうと、テレビで見知ったゲイニンさんに過大な期待を持ってしまう人も増えるのかも知れませんなあ。ヒガシコクバル宮城県知事様も、県民が立ち直れなくなるような下卑たスキャンダルで失脚などしないことを祈るばかりでございます。

■第166回通常国会が開かれる日程に合わせるように、プロの選挙屋さんが仲間割れしたにしても、束になって掛かって学生気分いっぱいの素人集団に惨敗したのですから、さぞや夏の参議院選挙を思うと不安と恐怖が国会議事堂には満ち溢れていることでありましょう。


安倍晋三首相の昭恵夫人は28日、北九州市を訪れ、同市長選(2月4日投開票)の自民、公明両党推薦候補の応援演説を行った。安倍首相の就任以来、初の選挙応援となった昭恵夫人は、女性集会2カ所であいさつし、「選挙は女性の力だと実感している。安倍晋三がこの地域の発展のために力を合わせていくと約束する」と支持を訴えた。
2007年1月28日 時事通信

■どうして首相夫人が選挙の応援演説に引っ張り出されるのでしょう?男女平等の理想形を演出している仕掛け人がいるのでしょうが、内助の功と言うよりも、ますます安倍首相の影が薄くなるばかりで逆効果になる可能性が高いでしょうなあ。とかく安倍内閣は何をやってもちぐはぐで、絵に描いたような「船頭多くして舟、山に登る」の状態が続いているようです。折角、首相夫人が「女性の力」を力説していた同じ日に、まったく逆の発言が聞こえて来ます。


柳沢伯夫厚生労働相は27日、松江市で開かれた自民党県議の集会で講演した。講演は年金・福祉・医療問題に関するもので、出席者によると、柳沢厚労相は少子化対策に言及する中で「15から50歳の女性の数は決まっている。生む機械、装置の数は決まっているから、機械と言うのは何だけど、あとは一人頭で頑張ってもらうしかないと思う」などと述べたという。少子化対策にかかわる閣僚による、女性を「出産する機械」とも例える発言だけに、今後批判を強く受けそうだ。

2007年1月28日 毎日新聞

■厚生労働大臣が、とうとう女性を「出産マシン」と口走るのですから、内閣も末期症状ですなあ。元々、少子化対策を誤ったのは、厚生労働省が専門機関から出される将来予測が3種類になっているのに、勝手に最も高い希望的数値だけを採用して各種政策の基礎データとしたからでした。最悪の場合を考えて最も悲観的な予測値を採用したら、他の官庁やら、ばら撒き政治をしたいアホな政治家からの風当たりが強くて困るにしても、中間の数値を採用する知恵が働けば、少子化対策は20年も前に検討され始めていた事だけは間違いないようです。そんな自分の責任を棚に上げて、後先考えずに「産めよ増やせよ」と言われても、子供を産み育てるには不都合な仕組みと風景を全国に広めてしまった後始末もしない役所の思い通りにはなりますまいなあ。