旅限無(りょげむ)

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鳥インフルエンザ 其の弐

2007-01-24 12:46:13 | 健康
■しかし、鳥を宿主とするインフルエンザは新顔なので、万一、人が感染するようになると人体は対抗方法を知らないままパニックに陥るという事のようです。

……ジャカルタ郊外在住の少年(14)と女性(37)が10日と11日、鳥インフルエンザウイルスに感染して相次いで死亡した。また市内の病院に入院中の別の女性(22)も感染が確認された。……インドネシアでは計77人が感染し、うち59人の死亡が確認されている。

これまでに人に感染した場所というのは、中国・ヴェトナム・タイ・カンボジア・インドネシアとなっています。ラオスからの報告が無いのは、発症自体が無いのか、貧困による通信手段や情報収集力の不足による「知らぬが仏」状態なのかは分かりません。ぽっかりとマレーシアが抜けているのは、イスラム教による衛生観念の発達が影響しているのかも知れませんが、同じイスラム教国のインドネシアでは人への感染が起きているのが不思議ですなあ。もしかすると、華僑・華人の人口がひとつの原因になっているのかも知れませんが、これは差別問題に発展する話なので、未確認のままの方が良さそうであります。

■という事で、今のところは韓国が小さいながらも鉄壁に防波堤になってくれているような状態ですから、本当ならば日本と協力して万全の協力体制を築いて欲しいところです。残念ながら、朝鮮民主主義人民共和国からの情報は皆無のようで、人への感染どころか、鳥の死亡例についての報告も有りません。しょう紅熱やら腸チフスやら、昔懐かしい深刻な感染症が大流行しいてるという報道も有りますから、もしも鳥インフルエンザによる死者が出ても、別の疫病にカウントしてしまっているのかも知れません。更に恐ろしいのは、鳥が大量死しても飢えるよりはましだ!と言って食べてしまいそうな気がしますぞ。兄貴分の中国共産党は、04年の大流行の兆しが見えた途端にエライ人達が姿を消したという笑えない事件が起こりましたから、「地上の楽園」でも平壌だけは絶対に安全な防護策を布いて清潔に保つか、別荘?のある欧州などへ一族揃って避難するのかも知れませんなあ。

■お役人という人達は、得てして想像力が乏しいものですが、鳥インフルエンザに対する制度も、危機感が欠けたものになっているようです。


……一方で、ウインドーレス型鶏舎への転換は遅れている。04年度から始まった農水省のウインドーレス鶏舎への助成事業で、これまで造られたのは十数棟だけ。養鶏農家5戸以上の共同利用という条件のため利用しにくいという声もある。今回の鶏舎を含め、国内では圧倒的に窓のある開放鶏舎が多いのが現状だ。……
2007年1月13日 朝日新聞

■野鳥との接触を避けるには、ヒヨコの頃からずっと密室に閉じ込めて育てないとダメなのです。でも、卵も鶏肉も供給過剰傾向が続いているので、無理にでも経営を大規模化して薄利多売をしなければならないのが養鶏農家の苦しいところだそうです。そんなサバイバル競争を強いられる皆さんに「5戸以上の共同利用」な助成事業を提供しても希望者はほとんど居ないのでしょう。今回の発生場所となった宮崎県は、日本でも有数の養鶏地帯だと報道されていますが、空撮で見る風景には個人で大規模養鶏場を経営している様子が見て取れましたなあ。こういう補助金はケチケチしないで出すべきではないでしょうか?

■農水省は風評被害で市場価格が暴落するのを警戒していて、感染した鶏肉や鶏卵を食べても、「人への感染した例はないので安心してほしい」と言っているようですが、米国産牛肉だってマスコミが「牛丼復活!」を煽り立ててもなかなか流通量が元に戻らないと聞きますから、ノロ・ウイルスの誤報すれすれの過熱報道で姿を消した牡蠣鍋に続いて、今度はチキン料理が減るのでしょうなあ。他に食べる物が豊富に有るのだから……という基本的な状況が続く限りは、心理的なリスクを負いながら手を出す人は居ないのではないでしょうか?

■牡蠣鍋も鶏の水炊きも食べられない冬は楽しくありません。白菜も供給過剰になってしまう暖冬ではありますが、冬の風物詩を味わう心の余裕が欲しいですなあ。牡蠣の生産者の皆さんも、養鶏農家も白菜農家も、どうか頑張って頂きたいものです。変なテレビ番組に踊らされて、納豆だの特定の野菜だのを追い回して、自分の食生活を変える様な事は慎むべきでしょうなあ。四季に応じた美味しい物が揃っている日本の食文化を落ち着いて楽しめば良いのです。

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