■さて、孫子がここで取り上げているのは、敵に先んじて断然有利な立場を得る重要性と難しさです。いよいよ戦争だ!となった時に、圧倒的に有利な先制攻撃が仕掛けられる布陣が整えば、無駄な戦闘をせずに相手を降伏させる事も出来ますし、たとえ相手が破れかぶれの戦闘を仕掛けてきても短時間で撃破し、双方の被害を最小限に留めることが出来ます。今風の日本語にしてみましょう。
孫先生はこう言いました。だいたい、軍隊の使い方というのは、リーダーが王様から出動命令を受けてから、軍隊のメンバーを呼び集めて準備を整えて、戦闘が行なわれる場所に大急ぎで移動し、相手よりも強力なチームを、相手よりも有利な位置に配置するのが大切なのである。しかし、これほど難しいことは他には無いのである!それには曲がりくねった険しい道を、まっすぐで平らな道に変えてしまうような、そして、こちらにとって不利な条件を断然有利なものに変えてしまうような、高度なアイデアが無ければダメなのである!では、どうやれば良いのか?えっへん、それは頭を使ってフェイントとトリックを使って相手を騙(だま)すのが一番良いのである。こちらがもたもたしていると相手に思わせ、こちらが馬鹿みたいに遠回りをしているように見せ掛け、相手に油断させるのである。「負ける気がしないぜ!」と相手に思い込ませたら、こちらは必死の覚悟で大急ぎで戦場に走れば、万が一、相手よりも後に出発しても到着は相手よりも先になり、有利なポジションを取って十分なフォーメーションを組んで待ち構えていられるというわけなのじゃ。
■要するに相手を騙くらかして罠に嵌めてしまえ!という恐ろしい話です。真珠湾にボロ戦艦を並べて日本海軍の標的にして「着底」させて直ぐに引き上げて修理しながら、自国民の心に復讐心を植え付けるようなものでしょうか?それはともかく、この一節の後には緊急事態に際して強引な軍の移動をする場合の恐ろしさが語られていまして、豊臣秀吉が断行した「中国大返し」の集団裸マラソンを髣髴とさせる描写が出て来ますぞ!秀吉は単なるサルではなくて、ちゃんと勉強していたのでしょうなあ。
■そしてお話はいよいよ「風林火山」になります。
故に兵は詐を以って立ち、利を以って動き、分合(ぶんごう)を以って変を為す者なり。故に其の疾きこと風の如く……侵掠すること火の如く、知り難きこと陰の如く、動かざること山の如く、動くこと雷(いかずち)の震うが如く、郷を掠むるには衆を分かち、地を廓(ひろ)むるには利を分かち、権に懸けて而して動く。迂直の計を先知する者は勝つ。此れ軍争の法なり。
■尚、「知り難きこと陰の如く」という一節は、日本に流通していた宋代の写本には欠落しているのだそうですが、もしも信玄さんが正確なオリジナル本を持っていても、「風林火陰山」では長ったらしいし、「風林火陰」では締まりが無くなってしまいますなあ。と言うわけで、優れた軍隊という物は、「風のように移動」し、「林のように静かに待機」し、「燃える火のように攻撃」し、「暗闇のように見付からず」、「山のように持ち堪える」、「雷のように強襲」しなければならないのです。
■こうして並べて見ますと、碌な軍用トラックも無いのに大陸に攻め込んでうろうろしていたり、ミッドウェー海戦の前には芸者相手に前祝の酒を飲みながらべらべら喋ったり、大輸送部隊を目前にしてレイテ湾突入を中止したり、全作戦計画が書かれた書類を盗まれたり、絶対防衛圏を決めた直後から破られたり、嗚呼、我が大日本帝国の陸海軍は何をしていたのだろう?と思ってしまいますなあ。「風林火山」は本当に大切なものであります。
■武田信玄のライバルは、言わずと知れた越後の上杉謙信さんです。謎の多いちょっと神秘的な武将ですが、今回の大河ドラマでは「神秘的」を商売道具にしている中性的なキャラクターの歌手?が演じるのだそうですなあ。新潟県人が激怒するような遣り過ぎた演出は止めて貰いたいものですなあ。何せ、トンデモ歴史本では、「上杉謙信は女性だった」という奇説が有るのですからなあ。それに、以前に渡辺謙さんを上杉謙信にして、角川映画が『天と地と』という海音寺潮五郎原作を映画化しようとして、米国ロケまでやったのに、主演の渡辺謙さんは急性白血病で倒れ、代役で完成した映画はコケたばかりか、角川春樹さんは大麻で逮捕されてしまった事が有りました。くれぐれも大河ドラマが恙(つぐが)無く完成することをお祈り致します。
孫先生はこう言いました。だいたい、軍隊の使い方というのは、リーダーが王様から出動命令を受けてから、軍隊のメンバーを呼び集めて準備を整えて、戦闘が行なわれる場所に大急ぎで移動し、相手よりも強力なチームを、相手よりも有利な位置に配置するのが大切なのである。しかし、これほど難しいことは他には無いのである!それには曲がりくねった険しい道を、まっすぐで平らな道に変えてしまうような、そして、こちらにとって不利な条件を断然有利なものに変えてしまうような、高度なアイデアが無ければダメなのである!では、どうやれば良いのか?えっへん、それは頭を使ってフェイントとトリックを使って相手を騙(だま)すのが一番良いのである。こちらがもたもたしていると相手に思わせ、こちらが馬鹿みたいに遠回りをしているように見せ掛け、相手に油断させるのである。「負ける気がしないぜ!」と相手に思い込ませたら、こちらは必死の覚悟で大急ぎで戦場に走れば、万が一、相手よりも後に出発しても到着は相手よりも先になり、有利なポジションを取って十分なフォーメーションを組んで待ち構えていられるというわけなのじゃ。
■要するに相手を騙くらかして罠に嵌めてしまえ!という恐ろしい話です。真珠湾にボロ戦艦を並べて日本海軍の標的にして「着底」させて直ぐに引き上げて修理しながら、自国民の心に復讐心を植え付けるようなものでしょうか?それはともかく、この一節の後には緊急事態に際して強引な軍の移動をする場合の恐ろしさが語られていまして、豊臣秀吉が断行した「中国大返し」の集団裸マラソンを髣髴とさせる描写が出て来ますぞ!秀吉は単なるサルではなくて、ちゃんと勉強していたのでしょうなあ。
■そしてお話はいよいよ「風林火山」になります。
故に兵は詐を以って立ち、利を以って動き、分合(ぶんごう)を以って変を為す者なり。故に其の疾きこと風の如く……侵掠すること火の如く、知り難きこと陰の如く、動かざること山の如く、動くこと雷(いかずち)の震うが如く、郷を掠むるには衆を分かち、地を廓(ひろ)むるには利を分かち、権に懸けて而して動く。迂直の計を先知する者は勝つ。此れ軍争の法なり。
■尚、「知り難きこと陰の如く」という一節は、日本に流通していた宋代の写本には欠落しているのだそうですが、もしも信玄さんが正確なオリジナル本を持っていても、「風林火陰山」では長ったらしいし、「風林火陰」では締まりが無くなってしまいますなあ。と言うわけで、優れた軍隊という物は、「風のように移動」し、「林のように静かに待機」し、「燃える火のように攻撃」し、「暗闇のように見付からず」、「山のように持ち堪える」、「雷のように強襲」しなければならないのです。
■こうして並べて見ますと、碌な軍用トラックも無いのに大陸に攻め込んでうろうろしていたり、ミッドウェー海戦の前には芸者相手に前祝の酒を飲みながらべらべら喋ったり、大輸送部隊を目前にしてレイテ湾突入を中止したり、全作戦計画が書かれた書類を盗まれたり、絶対防衛圏を決めた直後から破られたり、嗚呼、我が大日本帝国の陸海軍は何をしていたのだろう?と思ってしまいますなあ。「風林火山」は本当に大切なものであります。
■武田信玄のライバルは、言わずと知れた越後の上杉謙信さんです。謎の多いちょっと神秘的な武将ですが、今回の大河ドラマでは「神秘的」を商売道具にしている中性的なキャラクターの歌手?が演じるのだそうですなあ。新潟県人が激怒するような遣り過ぎた演出は止めて貰いたいものですなあ。何せ、トンデモ歴史本では、「上杉謙信は女性だった」という奇説が有るのですからなあ。それに、以前に渡辺謙さんを上杉謙信にして、角川映画が『天と地と』という海音寺潮五郎原作を映画化しようとして、米国ロケまでやったのに、主演の渡辺謙さんは急性白血病で倒れ、代役で完成した映画はコケたばかりか、角川春樹さんは大麻で逮捕されてしまった事が有りました。くれぐれも大河ドラマが恙(つぐが)無く完成することをお祈り致します。