旅限無(りょげむ)

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イラクの泥沼が広がる 其の六

2007-01-29 11:48:30 | 外交・世界情勢全般

米国の航空専門誌エビエーション・ウイーク(電子版)は25日、イランが弾道ミサイルを改良したロケットで人工衛星を打ち上げる準備を行い、発射が間近に迫っていると伝えた。専門家はロケットが北朝鮮の長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の技術を利用した「シャハブ3」の改良型である可能性があると指摘した。イランと北朝鮮の協力が宇宙分野まで拡大することを意味し、核問題に加え国際社会の懸念が強まるのは必至だ。イランは2005年10月にロシア製ロケットを使って人工衛星「シナ1」を打ち上げたことはあるが、国産技術で打ち上げるのは今回が初めてとなる。イラン議会の有力者もこのほど、近く衛星を搭載したロケットが打ち上げられると語ったという。……

■「人工衛星」の打ち上げならば、北朝鮮はイランの先輩です。ただし、将軍様の栄光を讃える音楽を宇宙から流していると報道されたのに誰もその音楽を聴いたことがないという、変な人工衛星ではありましたが、大気圏外に何かを打ち上げる技術は持っていると考えられているようですから、北朝鮮としては主力商品として売り出したいところでしょう。


……イランは北朝鮮と弾道ミサイル開発で協力してきたと、米国などから指摘されている。メープルズ米国防情報局(DIA)局長は今月、上院情報委員会に提出した書面で、「北朝鮮はミサイルや関連技術を売却しつづけている。国際的孤立で顧客は減ったものの、イランとシリアとの関係は強く、主な懸念事項だ」と警戒感を示した。衛星打ち上げに成功すれば、長距離弾道ミサイルや大陸間弾道ミサイル(ICBM)にも応用可能となる。

■本当に「大陸間」を飛行出来るかどうかは分かりませんが、イランはホメイニ革命後に起こったイラクとの8年も続いた戦争で、世界中の武器商人から大量の飛び道具を売りつけらた経験が有ります。中でも、イラクとイランの両方に自慢の「シルク・ワーム」ミサイルを売って大儲けしたのは中国人民解放軍でしたなあ。同じ型のミサイルは、今でも北朝鮮軍の主力兵器となって時々日本海に向けて発射されています。イラクのフセイン大統領は、米国からの膨大な武器供与を受けながら、ソ連からミサイル技術を買い取って自分の名前を付けて得意になっていましたなあ。


……DIAは、イランが2015年までには射程4500キロのICBMを開発する可能性を指摘していた。北朝鮮は昨年7月にテポドン2号の発射実験を行った。発射実験は失敗したものの、朝鮮半島情勢に詳しい軍事筋によると、イラン技術者が実験に立ち会ったほか、テスト結果のデータなどを北朝鮮側から受け取ったという。同筋は北朝鮮とイランがミサイルの液体燃料に関する共同プロジェクトについても話し合っている可能性を指摘した。イランは北朝鮮とミサイル開発での協力関係は「ない」と否定している。
1月27日 産経新聞

■「射程4500キロ」は、欧州全域を狙える上に、全アラブ地域も標的になるという意味を持ちます。一体、何処を狙うつもりなのか、単にイスラム地域で唯一の核ミサイル保有国になりたいだけなのか、今のところは分かりませんが、少なくとも米国とは対等の外交関係を結べることだけは確かでしょう。地下核実験が成功したら、次は宇宙を舞台とした競争に参加するというのが、1960年代に確立されたパワー・ゲームの常道です。北朝鮮はそれに従っているだけの心算でしょうし、他の国でも独裁的な権力を握った者も、同じ夢を見るものです。


欧州連合(EU)議長国のドイツは23日、「中国が最近、自国のミサイルで人工衛星を破壊した兵器の実験についてEUは深く憂慮する」との声明を発表した。EUは、米国の全地球測位システム(GPS)に対抗できるEU版GPS「ガリレオ」の開発で中国の資金協力を受けるなど宇宙の平和利用では中国と協力関係にあるが、中国による宇宙の軍事利用には明確にクギを刺した格好だ。声明は「人工衛星を標的とした兵器の実験は、宇宙空間における軍拡を避けようとする国際社会の努力と相反するもので、宇宙の安全を脅かす」と批判した。
1月24日 読売新聞

■何故か日本では、中国が実施したスター・ウォーズ実験の成功を大きく取り上げるメディアがほとんど無かったようですが、これは大変な事です。日本が大金を遣って米国と共同開発をする迎撃ミサイルにしても、軍事衛星が無ければ宝の持ち腐れになる代物ですから、いざという時に肝腎の衛星がばたばたと撃ち落されてしまったら、自慢の3段構え戦法の第1段目が無力化されてしまいます。ミサイル迎撃システムに不可欠な軍事衛星を守るための迎撃ミサイルが必要になりますなあ。


台湾の国防部(国防省)は23日、米国からの地対空誘導弾パトリオット(PAC3)調達後、中南部で6つのミサイル発射基地を新設する方針を発表した。国防部によると、中国は台湾に向けて現在、戦術弾道ミサイル880基と最新鋭の国産巡航ミサイル「東海10」100基以上を配備。PAC3など軍備強化が実現しなければ、2020年から15年で中台の戦力比は2・8対1に広がるとし、ミサイル防衛力の強化を図る必要性を強調した。
1月24日 産経新聞

■こうして、地球を一周するように米中対立の構図が徐々に出来上がっているというお話になりそうです。こんなに複雑怪奇な国際情勢を辛抱強く追跡して行く作業は、「世界史」未履修だったり、「地理」の基礎教育も受けていない国民には不可能でしょう。そんな国民が主権者となっている政府に、「防衛省」が誕生したのですから先が心配なことでありますなあ。

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