「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

遺影の名読み上げられて卒業す 米澤恵美子 「滝」5月号<滝集>

2012-06-06 08:36:54 | 日記
 震災詠として読めば句意は明快。3月11日の震災で特に心
が痛むのは児童生徒の犠牲者一人一人のことである。まして、
卒業式を目の前にして元気に卒業式に出られなかった子供達
のことを思うとき、誰でも胸が張り裂ける思いになる。作者
は当事者としてその場を体験していないかもしれないが思い
は同じなのでしょう。犠牲者に同化し、心を寄せる作者に共
鳴できた。(赤間白石)


春光や太古も女耳飾る 相馬カツオ 「滝」5月号<滝集>

2012-06-06 08:35:42 | 日記
 太古とはどのくらいの大昔なのだろう。縄文時代の耳飾は
見たことがあるが石器時代の耳飾は写真でも見たことが無い。
太古とは石器時代よりも大昔を想定している。人間が誕生し
た時代まで遡るとき、理論ではなく作者の感性で女性を把握
して耳飾を直感した。春光と耳の取り合わせでエロチズムよ
りアニミズムが感じられた。(赤間白石)

沢音の響く北窓開きけり 清野やす 「滝」5月号<滝集>

2012-06-06 08:34:26 | 日記
 東北の冬は長く、特に北窓は冬の間は閉ざされたままで陰
気な部屋になってしまう。山の雪も解け始めると川底を見せ
ていた谷にせせらぎが戻ってくる。そんな沢音から春を感じ
て、北窓を久しぶりに開いた。春を迎えた喜び、冬の寒さか
ら解放される安心感が沢音の響きで良く伝わってきた。(赤間白石)

わたつみの底の遺跡や桜東風 鈴木幸子 「滝」5月号<滝集>

2012-06-06 05:15:12 | 日記
 海の底の遺跡から九州の元寇遺跡や函館戦争の軍艦遺跡が
連想され、戦乱や難破船が浮かんで来る。東風は春先の太平
洋側から西に向かう風と考えると、どの辺りを想定すればよ
いのか迷う。また、桜東風と桜があるので特別の東風かと調
べたが分からない。遺跡は謎のままの方が良いのかも知れな
い。謎解きを楽しませて頂きました。(赤間白石)