「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

罌粟の花回りだしたる戦あり 菅原鬨也 「滝」7月号<飛沫抄>

2012-06-26 05:19:26 | 日記
 罌粟は未熟の果実から阿片やモルヒネを作る禁断の花。今
は、栽培禁止であるが、美空ひばりの「私は街の子」では、
いつもの道に咲いている花ように歌われている。「回りだし
たる」は回想であり、幼い頃の戦争が、真っ赤な罌粟のイメ
ージとして動き出したものと思う。戦火なのかもしれないし、
傷ついた兵士なのかもしれないし、夏の太陽かもしれない。
原子爆弾の投下で終息を見た戦争を思うと。被爆の恐さを知
っている日本で起きた震災による原発事故まで、この回想が
至ったのではないかとも思える。実体験の戦争の記憶は定か
でないのかもしれない。しかし、その後に知った戦争の知識
が、共に、あるべきではない罌粟と戦争を結びつけるに至っ
たように思った。(H)