「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

梵鐘や風船売りの店仕舞ひ 堀内きくえ 「滝」6月号<滝集>

2012-06-24 10:16:34 | 日記
 梵鐘は、寺院が近所に時間や寺の行事を知らせるためのも
の。春祭りでしょうか、出ていた露店が店仕舞いをしている
ので夕方の鐘の音も聞こえてきますね。梵鐘の静かな余韻に、
少し前までの賑やかさも感じられます。風船を売る店がカラ
フルな風船を仕舞うと、何事もなかったように寺の風情が戻っ
てきます。ちょっぴり淋しい祭り後が思われますね。(H)


本日は5句を載せさせていただきました。

明日より赤間白石さんの鑑賞です。

被災犬みんなで撫でてあたたかし 菅原緋沙子 「滝」6月号<滝集>

2012-06-24 10:14:06 | 日記
 優しい句ですね。ご近所で被災犬を預かっているのでし
ょうか。一生懸命しっぽをふっている犬が見えてきますね。
「みんな」が、春の暖かさに誘われて外にでてきた人達の
季感であり、「撫でて」が人の気持ちの暖かさとして伝わっ
てくる「あたたかし」ですね。早く復興がすすんで被災犬
が家族の元に帰れるといいですね。(H)

墨堤を花に誘はれ一万歩 中内美知子 「滝」6月号<滝集>

2012-06-24 10:10:42 | 日記
 「墨堤」は隅田川の土手のことを言う。その川の両岸には延
々と千本もの桜並木が続く。美しさに見惚れながら歩いたのだ。
万歩計は一万歩を表示し、そんなに歩いたのかと少し驚いてい
るのだろう。調べてみると一万歩あるくには八十分から百分か
かるそうだ。花に誘われ、疲れを知らない、自分の限界を超え
た歩きに少し驚いているのですね。(H)

金網の張られし井戸や鳥雲に 佐伯時子 「滝」6月号<滝集>

2012-06-24 10:06:28 | 日記
使われていない古い井戸なのでしょう。小さい頃に覗いた井
戸は、暗い水面に映る顔が、自分とは違う視線であるような奇
妙な不安感に襲われた記憶がある。蛇口からいつでも水が出る
今。この井戸は残しておく必要があり、安全のために金網が張
ってあるのだろ。そして、近距離の井戸から、空へと視線が移
る。雲間はるかに見えなくなる渡り鳥が憂いを誘い。終の棲家
を持たない哀れさを思ったとき、井戸から、皿を数えるお菊の
声が聞こえてきそうな気がした。(H)

緋桃咲く新任保母の束ね髪 成田清治 「滝」6月号<滝集>

2012-06-24 06:05:22 | 日記
 華やかで、快活な句ですね。幼稚園に緋桃が咲いて香しい。
新任の保母さんがキリリと髪を束ねて、子供達と遊ぶ姿が賑
やかですね。健康な若さが眩しいほどです。
「春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出て立つをとめ  大伴家持」
こんな短歌を思い出しました。(H)