akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』

2008-03-22 | 映画・芸術・エンターテインメント
酒田にはご存知のとおり、映画産業全盛期の頃、知る人ぞ知る素晴らしい洋画専門館グリーンハウスがありました。淀川長治氏が「世界一の映画館」と言明し、映画人たちが遠方から度々足を運んだ映画館です。
1月に出版された『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』(岡田芳郎著/講談社)は、そんなグリーンハウスの隆盛と、映画が一番の娯楽だった頃の酒田、昭和の変遷そのものを、一人の男の人生を追う事で描き出しています。グリーンハウスを軌道に乗せた後、日本人に合ったフランス料理で大人気の店をつくった佐藤久一さんの、アイディアと行動力、先見性には驚くものがあります。
私の両親が結婚式を挙げたのは、佐藤久一さんが支配人を務めていた頃の「レストラン欅」でした。私自身が、物心ついて初めて洋食のマナーを意識したのも「レストラン欅」で、赤いビロードの絨毯と豪奢な雰囲気の中、正装をして普段食べたことのないメニューを食べるのに、緊張した覚えがあります。当時は田舎町には珍しい、本格的フランス料理店でした。その後、彼が立ち上げたのが、フランス風郷土料理「ル・ポットフ-」。庄内の豊富で新鮮な食材とフランス料理を組み合わせた斬新で懐かしい味で、開高健、丸谷才一、土門拳らがこよなく愛した店です。
NHK山形時代には、東京から山形局に転勤してきた方たちが皆「酒田のル・ポットフ-には行きたかったの」というので驚いた記憶があります。私が行ったのは久一さんが離れてずいぶん経った後の「ル・ポットフ-」ですが、雰囲気もよくおいしかったです。

非常に面白くせつない本です。出版社でたくさんの本を編集してきた大先輩も「私は酒田出身でもないけど、この本は本当に面白くて一気に読んだわね。久しぶりにこういう本に出会った」と絶賛しておりました。ぜひぜひ、ご一読下さい。
コメント (4)
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