akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

『淑女と髯』

2008-03-07 | 活弁
明後日9日(日)は茅ヶ崎館で楽しむ、活弁と和食ブッフェの宴『淑女と髯』
今回の小津安二郎監督の『淑女と髯』(昭和6)は初めて語る作品ですが、思っていた以上に面白いです。ストーリー、つまり北村小松の脚本がよく、ギャグマン/ジェームズ・槙(小津安二郎)のギャグが細かくちりばめられていて、天才二枚目半役者岡田時彦の演技が非常に生きています。

活弁台本を作るのがとても楽しかった…。台本づくりの時は、いつも監督や当時の時代と対話しているような気持ちになります。一回目に観る時は、あまり先入観なく普通に映画を観るように楽しむのですが、その後、何度も観ながら、今の時代とのギャップを埋めつつ、私なりに遊びつつ、作り手の意志を尊重(するつもりで)台本を肉付けしていくわけです。

小津安二郎監督とその作品群に関する書籍は古今東西たくさん出ていますが、無声時代の作品に関しては、実際の作品と「ストーリー解説」が細かく異なることが多々あります。
一様に同じ間違いなのは、あまり作品自体を観る機会がないため、出版の段階で参考にした資料が間違っているからです。出版もされていますが、現存のシナリオ集はあくまでも予定台本です。当時のキネマ旬報も、現在の小津解説本も、それを元にストーリーを記載しているからなんでしょう。

『淑女と髯』にも、検閲の関係でカットされたり、「これは小津と北村が確信犯でやっている」と見受けられる部分があります。
作品としてもとても面白いですし、小津作品を知る上でも、時代を感じる上でも、貴重な一作です。小津がとても楽しんでこの作品を撮っていて、北村には思想や反駁精神や生き方へのメッセージがあって、岡田時彦は才能を存分に生かしていて、作品全体に若きパワーがあふれている気がします。

某大学の剣道部の大将岡嶋(岡田時彦)の部屋にも注目。小津らしい、面白い小物がいっぱい。ドアの文字、例によって貼られた洋画のポスター、リンカーンの写真、火鉢や、破れた座布団など、和洋折衷で、蛮カラとモボの中間な感じが映画全体とよくマッチしています。

というわけで当日、作品をお楽しみ下さいませ。
コメント (3)
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