野々池周辺散策

野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

もうすぐ鈴鹿8耐

2012-07-22 06:32:37 | モータースポーツ
「エヴァンゲリオンレーシングを応援しよう!」


7月29日(日)は日本最大級二輪モータースポーツイベント「鈴鹿8耐」の開催日。
盛り上がりにかけると言っても、出場台数は60台。全盛期でも70台強ぐらいだったから、台数だけみるとそんな悲観するほどの事もない。全盛期の二輪業界挙げてのビッグイベントに比較すれば、確かに人気度は落ちたと言えど、6万人/日も集客する二輪モータースポーツはないのだから、二輪業界や二輪ファンにとっては興味を引き付けるイベントであることに間違いない。ややもすると、二輪レース等に元々興味など無い人たちにとっては、全盛期に比べ低下した鈴鹿8耐を見て然もありなんと思うだろうけど、鈴鹿8耐、これが日本最大級の二輪モータースポーツに変りは無いし、無視して通り過ぎようとしても、業界にとっては相当に気になるものだ。そして、二輪文化の頂点の一つであることに疑いはないのだから、要は二輪企業が鈴鹿8耐をどう捉え、どう活用するかだ。


ところで、21日の神戸新聞地域経済欄に、「本田宗一郎の指導力に学べ」とする神商議の経営セミナーが報道されていた。
講演内容は、「東日本大震災後の日本の経営者に求められる資質として、本田宗一郎のようなリーダシップが必要であり、経営危機の時に世界一のレースへの参戦と経営方針を発表し、未来志向の熾烈なまでのリーダーシップがあった。このようなリーダーが増えれば、激しい経営環境は乗り越えられる」と強調したとある。

今の時代、本田宗一郎みたいな資質のあるリーダーは居ないのかと思いながら、ホンダの鈴鹿8耐に関する資料を読んでいた。
本田宗一郎、希代の変人・奇人の部類の人だが、日本の二輪業界を牽引して来たことは事実で、その時代前後の二輪業界には類似の奇人変人が時代を闊歩し活躍していた。いつの間にか奇人変人は嫌われ疎遠な存在となって、平均的な思考が次第に評価され続けてきた。結果的に、「夢の世界を描くときには奇怪とも言えるほど、ものすごく豊かな発想をするのに、現実には面白くもなんとも無い製品を開発する行動パターンを続けている。そして、それをおかしいとも思わず普通にやってしまっている違和感。そのあたりを何とかするだけで次の時代はきっとずいぶん違うと思う。」と、あるブログにあったが、その通りだと思う。

ホンダ以上の思考や行動を採らないとホンダには勝てないのに、戦う前からホンダという存在、いや「ホンダと言うブランド」に恐れを抱いてしまう。こんな場面に何度も遭遇した。

★そこで、本題の鈴鹿8耐だが、「2012鈴鹿8耐ホンダ公式サイト」に、「8耐の本質」という節がある。 その中から、成程なーと感心しながら、全く同意だと思った内容を抜粋してみた。
「ワンチャンスにすべてを賭ける一発勝負のレースである。そう考えると、不確定要素と運だけが支配するギャンブルのような勝負に思えるが、そうではない。  レースに関わるすべての要素で「100%の完ぺき」を実現することで、不確定要素やリスクを排除すれば、勝利の可能性は限りなく100%に近づく。 これこそが、レースまでに達成すべき目標であり、そこで行われる試行や努力こそがレースで勝つためのすべてである。

「レースとは、それまでに積み重ねてきた成果の発表の場に過ぎない」かつて世界GPで活躍した、とあるチームのエンジニアはこう言った。  この言葉は、レースの本質を端的に現しているのではないだろうか。それまでの研究開発で得たマシンのベストパフォーマンスや、準備期間に培った(ライダーも含んだ)チームスタッフの完ぺきな作業スキルを、レース現場で忠実に再現することがレースの本質なのだ。そして8耐こそは、年に1回しかない“成果発表の場”であるからこそ、他のどんなレースよりもすべてを“完ぺき”に遂行することが要求され、どんなレースよりもそれまで行ってきた作業の結果がダイレクトに勝敗に結びつくという、ある意味で極限のレースなのだ。つまり勝敗の行方はライバルの存在よりもむしろ、自らの“完ぺき”によって決まる部分が大きい。」

「『失敗したら、どこが悪いのか徹底的に調べる。ここが一番大切。過去の失敗の“泥”の中に未来を拓くカギがある。 先ばかり見ていては駄目だ。失敗して酷い目にあって、思い出すのも嫌なことの中にカギがある』『敗因の分析が重要なことを思い出せ。その中にたくさんの答えがある。答えをたくさん出せば、それが強みだ。その強みが自信につながる。一つひとつの計画に対して実行できたか否か、そこでの差は何が理由で生じたのか、ミスを再発させないためには何をしなければならないのか、きちんと整理することだ』この記録ノートの持ち主は、80年代の中頃から約20年にわたって、チーム監督を始めとした立場で8耐における勝利と敗北を経験してきた。8耐で負けるということが、Hondaにとって何をもたらしてきたのかを考えてみたい。」

★レースを単に美化しているだけとの声も聞こえてきそうだが、数年に渡り8耐を戦ってきた経験から言えば、ホンダの「8耐の本質」には頷く事ばかりで、企業にとって最も重要な競争力学を重視したことがわかる。 かつ、ホンダの優れている点は、戦いのなかで蓄積された人的・物的な知識・技能の伝承が組織の中に脈々と受け継がれているという点であろう。 それが、昨年の東京モーターショーにおける社長挨拶に込められていると思う。これが、本田宗一郎のDNAだろう。

加えて言えば、「失敗の本質」と言う本にも記述されているが、 「技術には兵器体系というハードウェアのみならず、組織が蓄積した知識・技能等のソフトウェアの体系の構築が必要と指摘している。  組織の知識・技能は、軍事組織でいえば、組織が蓄積してきた戦闘に関するノウハウと言っても良い。  組織としての行動は個人間の相互作用から生まれてくるとある。」

この指摘から言えば、戦いのなかで蓄積された人的・物的な知識・技能の伝承が最も必要なレース運営組織は経験的に企業グループ内で実質運営されるべきであり、 レース運営を外部団体に委託すること等は組織技術ソフトウェアの蓄積から言えば絶対に避けるべき事であろう。 こうして見ると、結果的に旧日本軍の敗因分析とホンダの8耐敗因分析が適合している点は興味を引き付ける。

本田宗一郎は、ミカン箱の上に立って従業員の前で世界一になる宣言した。
世界一、それは世界グランプリレースの頂点に立つと言う、具体的に目標を設定し、しかも達成した。この本田宗一郎の思いは、伝承と言う形で現在のホンダの企業体質の中に受け続けられており、それが、「Hondaにとってモータースポーツ活動は、チャレンジングスピリットの象徴であり、 創業当時から世界の頂点を目指してさまざまなレースカテゴリーに挑戦してきました。 これまでに培ったノウハウとチャレンジングスピリットで、2012年もより多くのお客様の期待に応え、 共感していただけるモータースポーツ活動を展開します」となった。これが、世界の多くの顧客や株主からも支持されている原点であり、「ホンダというブランド」を端的に表している。

★ところで、「大西 宏のマーケティングエッセンス」に面白い記事がある。
「ビジネスの世界の競争は、奪い合う戦闘だけではありません。もちろん局面では戦闘も起こってきます。しかし、戦闘は競争の本質ではありません。 戦闘でしか競争を考えられない企業は今日ではむしろ激しい価格競争に巻き込まれ、やがて敗者になっていくのです。 競争でもっと重要なのは、どれだけ広く、また深くお客様に好かれたか、信頼されたか、感動や共感を感じてもらえたかです。 つまりどれだけ価値を認められたかの競争です。それはコンテストというほうが分かりやすいのです。 市場のコンテストで、どれだけ顧客を引きつけるかを企業は競い合っている、だからより魅力ある価値を提供するために進化しようとするのです。」

「実務をやっていると、あまりにももろもろのビジネス環境の変化が激しく、スキルや能力また知識も書き換えが求められることが多くなり、 ほんとうに役に立つものは次第に限られてきていることを痛感します。 一方では、仕事は現場を通じて学ぶことがほとんどだというのも紛れもない事実です。 現代では現場からも新しいスキルや能力、また知識が生まれてくることのほうが必要になってきているのでしょう。」

これ等の記事から読みとれることは、戦闘という競走媒体を通じて、企業の取組を顧客に正確にアピールし信頼を得るかと言う事であって、いわゆる顧客の囲い込みの重要性を力説している。そして、それらは現場で実際に発生した事柄から学び得ることが非常に多い事と、これを確実に伝承して後輩に伝えていく事の重要性が語られていることに興味を惹かれる。

★長くなったが、鈴鹿8耐は、二輪企業にとって参加すべき価値は十二分にある。
 そして、閉塞した日本の二輪業界をもっと明るく照らす指標になるに十分な価値もあると思うし、一歩前に進むべきだと思う。
 レース好きな人達が単に参加しているだけという声を聞かぬでもなかったが、鈴鹿8耐はそんな低次元の話ではない。

★8耐に向けての最後の事前走行テストが始まった。
 それによると、8耐仕様では、
 ・ホンダの秋吉選手が2分07秒772をマークしトップ
 ・ヨシムラはジョシュ・ウォーターズが2分07秒797で2番目
 ・3番目は、ホンダハルク・プロの清成選手で2分09秒025
 ・ホンダ青山選手は2分09秒4
 ・以下、スズキ加賀山選手、カワサキを駆るトリックスターの出口選手が2分09秒台で続いたとある。

 ヨシムラがホンダに肉薄し、まだ8耐仕様で走行していないヤマハの中須賀選手や芳賀選手の8耐マシンの戦闘力も期待できる。
 ヤマハの中須賀選手は全日本JSBレースでも飛び向けて早い選手だから、8耐最右翼であることに間違いない。
 ホンダ、ヨシムラ、ヤマハのトップライダーの激突で、面白くなりそうだ。
 また、アジアの選手が8耐に出場するようになったことは今後のレース界を考えると非常に興味を引く。

★鈴鹿8耐に直接関与していた時期からもう16年が過ぎた。
今は、パソコンでレース経過を追っかけるだけの楽しみだが、側で女房から「カワサキは何処を走っている」と言われる時ほど辛いものはない。 この一声は某会社の株価下落より胸に響く。

コメント
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