息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

そして誰もいなくなる

2013-07-30 10:17:18 | 著者名 あ行
今邑彩 著

名門天川学園の創立祭で、演劇部はクリスティの『そして誰もいなくなった』を上演した。
しかしその本番で、役柄そのままの服毒死が起こってしまう。
もちろん芝居は中止されたが、それから台本通りにそれぞれの役を演じるはずだった生徒が
殺されていく。

演劇部部長・江島小雪と顧問・向坂典子は、部の存続のためにも、部員の身を守るためにも
事件の謎を解こうする。
しかし、意に反して殺人は次々と進み、ついに次は江島の番になってしまった。

とてもテンポがよくて読みやすい作品。
だが、どんどん変わり、やがてどんでん返しを迎えるストーリーはとっても説明しにくい。
即ネタバレだし。

ちょっと古い作品なので、小さな違和感がエピソードのそこここに出てしまうのだが、それでも
女子高生という揺れる心と、あふれるパワーをもつ年代をとてもうまく切り取っている。
部活に打ち込みながらも、私生活に心を悩ませていたり。
将来への漠然とした不安に苛まれていたり。
誰にもいえない小さな秘密が、いつの間にか増幅して力をもち、運命をも左右する恐怖。

ここに彼女たちとさほど違和感を感じない、若い女教師を配したことが効果的だ。

謎解きはやや後味が悪いものの、殺人の意味は明確にされる。
クリスティを読んだあとだと、より楽しめることは確実だ。