伊坂幸太郎 著
主人公のシステムエンジニア・渡辺拓海は、失踪した社員のプロジェクトを
引き継ぐように命じられた。
その日から周囲に不穏な空気が漂い始める。
行方不明の先輩、同僚の誤認逮捕、浮気を疑われた男の家の火事。
それがどうした、と思うようなバラバラの出来事なのだが、そのどこかに
関連性を感じずにはいられない。
これらに関わった人々に共通しているのは「検索」。
パソコンである言葉を検索すると、大きな渦に巻き込まれてしまう。
それはなぜなのか、渡辺と同僚、そして彼の妻、行方不明のはずだった先輩社員までも
加わった謎の解明がはじまる。
スピーディに走り抜けるように進む物語は、長編であることを忘れさせてしまう。
『魔王』の続編として書かれているのだが、読んでいなくても十分面白いけれど、
読んでからならさらに面白い。
ちょこっとした言葉の裏の意味とか、登場人物の心の動きとか、別に本筋には関係ないが、
わかるとより楽しめたり、ストーリーが理解できるからだ。
大きな組織の怖さとか、システムを使った監視とか、いかにもそこにありそうな恐怖が
じわじわと迫ってくる。
考えてみれば、犯罪現場の動画が瞬時にニュースに流れるなど、20年前に誰が想像しただろう。
それだけ記録されているということは、監視や干渉が行われても不思議はないのだ。
それにしても全速力で走りきったような読後感。
疲れたけれど、これだけひきつける文章はさすがだ。