息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

素食美人

2014-06-26 10:55:20 | 著者名 た行
張暁梅 著

素食って何? と手に取ったのだが、なかなか面白い。
要するに「穀菜食・ベジタリアン食」アジア版なのだ。
ベジタリアンは世界中にたくさんいる。
それは宗教や思想がもとになっていたり、健康上の理由であったり、
さまざまであるし、芸能界、経済界の有名人がベジタリアンである、
という話は日常的に聞く。
どこまで厳格に行うのか、メインを何にするのか、というのは
それぞれ違うし、こだわりもさまざまだ。

やはり食生活は同じ、もしくは似た文化に育っているほうがわかりやすい。
著者は中国人で、登場する食材にも親しみがあるものが多いので、
とてもすんなり読める。

著者は美容家なので、美しさ、とくに女性の美についてかなり
多くを割いている。
洗い方、調理の仕方、レシピばかりでなく、家族とともに
素食を楽しむための工夫や、長続きの秘訣などもある。

正直、あまりにもこだわりすぎて宗教的になっているベジタリアンには
ちょっと引いてしまうときがある。
肉や乳製品の害を必死で説かれたりすると困ってしまう。
なので、このおだやかさはいい。

野菜は体にいい。それならば素材を生かした控えめの調味料で美味しく
調理してたくさん食べよう。
そのためには、野菜のことも知っておきたい。
それが自分の体の声に耳を傾ける機会になればもっといい。
そんな気持ちで手に取れる一冊。

綺羅の柩

2014-06-25 10:52:41 | 著者名 さ行
篠田真由美 著

建築探偵桜井京介の事件薄シリーズ。

タイシルクを育て上げたジェフリー・トーマスは、1967年のイースターに
マレーシアの人里離れた保養地で姿を消した。
さまざまな説がささやかれたが、彼の行方は杳として知れなかった。

その30年後、日本で一人の老人・惣一郎が死んだ。
彼は日本の養蚕の里で生まれ育ち、妻・みつはタイ人であった。
そこにはシルクをキーワードにしたつながりがあった。

京介一行はみつに招かれ、トーマスが姿を消したマレーシアへと向かう。

スケールは壮大だし、シルクにまつわる話も結構面白い。
マレーシアのリゾートも魅力的だし、タイ料理が食べたくなる。
ちょこっとしか出てこないが、建築のこともなかなか興味深い。
でも、事件簿というにはいまいち。
舞台設定ほど壮大な事件じゃないから?
惣一郎が魅力に欠けるから?

それともみんなが既知とされている登場人物たちを知らずに読む
私が悪かったの?
っていうか、癖の強い登場人物たち、あまり好きになれないなあ。
というわけで、どうも納得いかない読後感である。

真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生

2014-06-24 10:28:07 | 著者名 あ行
大沼紀子 著

真夜中のパン屋さん』の3巻目だ。
2巻目を探してはいけない。またしても、そういうことだ。
なんとなくまた読んでしまった。
夜開店するパン屋さん「ブランジェリークレバヤシ」とそこに集う人々。
そして巻き起こる事件を解決する物語。

今回は居候の女子高生・希実のクラスに転校してきた美作孝太郎。
なぜか腹話術の人形・アンジェリカを抱えて歩く彼は、希美につきまとう。
彼はなんと、「ブランジェリークレバヤシ」の常連であり、第一作にも登場した
子ども・こだまの異母兄であった。

またまた何とも変わり者で、普通に人間関係を営むのが難しい人々がてんこ盛り。
そこに医師どうしの微妙な関係やら、怪しげなおクスリの行方不明事件まで
絡んできて、話はもつれ込む。

前作のこだま同様、いやそれ以上に孝太郎はネグレクトされて育ってきた子で、
ここの兄弟の苦労ははかりしれないものがあるのだが、それでいて、
いやそれだからこそ、この人間関係を大切にする感じはよくわかる。

軽い読み物なんだけど、相変わらずのご都合主義なところも多々あるんだけど、
まあいっかという感じで読了した。

痺れる

2014-06-23 10:19:02 | 著者名 な行
沼田まほかる 著

うまいなあ。
思いもかけない方向へと突き進んでみたり、どこにでもいるような
平凡な人間の心の動きをするどく暴きたてたり。
日常の風景をぞくりとすような描写で描き出したり。
短編集なので彩りもさまざまな作品を、次々と読める。

……しかし……!
私、もしかしてこの著者の作品あまり得意じゃないかも。
面白くないわけじゃない、心をつくものもある。
しかし、根本になんだかかみ合わないものがある。
その小さな違和感が少しずつおおきなずれになるというか。
いや、何にも残らない作品だって多い中、ここまで
ひっかかりを残すってこと自体がスゴイわけだが。

それは私の精神状態なのか、それとも同世代の同性ゆえの
近親憎悪的な感覚なのか。
なんにせよ読後感はゆらゆらと揺れる。

首交換殺人―心理分析官加山知子の事件簿

2014-06-13 10:44:34 | 著者名 わ行
和田はつ子 著

六本木を舞台に起こった女性二人の殺人事件。
なぜか切断された首が交換されていた。

六本木ヒルズに住む高校非常勤講師は資産家令嬢で、犬を友に
ストイックに暮らしていた。
一方、距離は目と鼻の先ながら、麻布十番のアパートに暮らす
ホステスのほうは、売春しながらヒモに貢いでいたらしい。

まるで接点のない二人に何が起こったのか。
プロファイリングの知識をもつ知子が、二人の半人前部下とともに
捜査していく。

登場人物も捜査の舞台も興味深くて面白い。
犯人がわかってからのスピーディな進行はスリリングで
あっという間に読めてしまう。

ただ、半人前のひとり・永井の「っす」という言葉が
すごく気になって非常によみづらかった。
好みなのだろうし、実際そういう言葉を使う人もいるから
人物設定として仕方ないのだろうが、何しろ多いのだ。

シリーズ化しているらしいのだが、出版社をまたいでいるせいか、
他を知らなくても全く問題なし。
機会があれば他も読んでみようかな。