息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

夫中原淳一

2013-07-06 10:31:46 | 著者名 あ行
葦原邦子 著

大きな瞳、洗練された着こなし、たおやかな仕草。
女性、とくに少女の魅力を描き出した中原淳一の絵。
きっと誰もが一度は目にしているのではないだろうか。

洗練された美意識のもと、精力的に働き、
時代を代表する「それいゆ」「ひまわり」「ジュニアそれいゆ」などの
雑誌を生み出した中原淳一を妻の目線から語る。

葦原邦子は宝塚の男役で一世を風靡したスタアだ。
とくにその歌唱力は高く評価されていた。
10年間厳しい世界で活躍した後に選んだのが、当時少女たちの憧れであった
中原淳一の妻であった。

激務の夫を支えながら4人の子を育てる。
それだけでも大変なことなのに、芸術家である夫のマイペースぶりはすごい。
自宅とは言え、仕事関係者は絶え間なく泊まり込み、出入りして
その負担は想像を絶するものだったと思う。
欲しいものがわからないほど、ファンがなにくれとプレゼントをくれ、
手を貸してくれていた日々をきっぱり捨ててそこに入り込んだ著者には
尊敬しかない。

女の仕事は……、女というものは……。
女性の美を追求する仕事の中原淳一は妻にも厳しい。
それでも、自分が自分であるためにと、歌のレッスンを続け、ラジオや舞台で
仕事をしてきた著者。それは夫が病魔に襲われたとき、生業となった。

経済的なこと、人間関係のこと、どろどろしたものは書かれていないけれど、
トラブルは多かったのだと思う。
そして中原淳一は同性愛者だった、という話もある。
というか、長男が書いている。

少女たちは純粋であればあるほど、完成した男に抵抗を感じる。
そして男装の麗人や中性的な男性にまず惹かれる。
宝塚が変わらぬ人気を保っていることも、ヘアメイクなど体に触れる職業の男性が
わざとゲイっぽく振舞うことが多いのも、きっとこれゆえだろう。
中原淳一はそんな少女たちを捉えたし、そんな彼が愛したのは
男役スタア・葦原邦子だった、というのは理解できる。