息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

ふちなしのかがみ

2013-07-23 10:12:12 | 著者名 た行
辻村深月 著

ちょっとゾクリとする短編集。
舞台はすぐそこにある日常。
普通の家族に起こること、起こりそうな事の中に潜んでいる恐怖が描かれていく。

しかし決して子ども騙しではない。
しっかりとした構成と文章でじっくり楽しませてくれる。
暮らしの中に潜んだタブーや言い伝えを上手に利用し、そこに狂気が加わって
ありえない出来事へとつながっていくのだ。

ただ起承転結を求めてしまうと苦しい作品もある。
たとえば「おとうさんしたいがあるよ」なんて、どこまでが主人公の頭の中なのか
現実なのか、幻なのか、わからないままに終了する。
その非日常感まで楽しめるとハマるのであるが、結局なに?という疑問でいっぱいに
なる人も多そうだ。
それから「ブランコをこぐ足」もちょっとその傾向があるかも。

個人的には「八月の天変地異」が好き。
少年たちの友情と嘘。それをなんとか現実にしようという焦り。
そんな心の動きと成長が、真夏の田舎を舞台にいきいきと描かれている。
なんともせつなく哀しい物語でもある。

そして「踊り場の花子さん」。
学校を舞台にしながらも、教育実習生を重要人物として扱うことで、
深刻な内容をとてもうまくまとめている。
悲惨で救いのない話なのだが、学校の七不思議をキーに謎がとけていく。

好みは分かれるだろうが当たり外れはあまりないなと思った。