息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

水域(アクエリアス)

2013-07-20 10:31:13 | 著者名 ま行
森真沙子 著

「転校生」シリーズ第3弾ということなのだが、1も2も読んでない私。
なんて残念な出会いなんだ。
しかし手にとったので読む。意外に面白いというか、前作は知らなくても別にいい。

霊感がある有本咲子は、事情で転校を重ねている。
東京・深川の高校で、CDを媒介とした連続水死事件に遭遇し、
巻き込まれ、解決へとむかっていく。

継続した友人関係がないというのは、この年齢の子には大変なハンディだ。
しかし、行った先々でそれなりに居場所を見つける主人公。
その暮らしは懐かしい高校生らしさがあり、切り取られたエピソードもあって
微笑ましい。
霊感があるゆえに事件に巻き込まれてしまう咲子だが、いつのまにか周囲の人を
巻き込み、協力体制にしてしまっている。

そして湿度が高い深川の雰囲気が、梅雨という季節とあいまって
なんとも日本らしいじっとりとした空気を作り出している。
CDから流れる鉄道唱歌のノスタルジックなメロディといい、
事件の舞台としてぴったりというか、なんというか。

CDという現代的なモノと、七不思議が残るような東京の下町。
アンバランスな組み合わせなのになぜか溶け合う。
そして加えられたホラーの味わい。

ちょっと物足りなさが残るのは、目新しいアイデアが足りないからか。