息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

豚飼い王子

2013-07-05 10:36:17 | 著者名 あ行
ハンス・クリスチャン・アンデルセン 著

歌うナイチンゲールとバラの花。
この美しい組み合わせが心に残っていた。

ある小さな国の王子が、皇帝の姫と結婚しようとする。
彼は5年に一度香り高い花をつけるバラ、そして
美しい声で歌うナイチンゲールという大切な宝を姫に贈った。

しかし、姫はそれに満足しなかった。
彼女はつくりもののほうがよかったのだ。

王子は顔を汚して皇帝の城の豚飼いとなり、そこでまわりに
鈴がついたきれいな壺をつくった。
ものを煮ると「いとしのアウグスティン」を歌うこの壺は、
街中の家でつくる料理がすべてわかった。
姫はそれがどうしても欲しくて、王子の要求通りキス10回と
交換した。

王子は今度はガラガラを作った。この世で作られたあらゆる音楽を
奏でることができるこの楽器に、彼は姫のキス100回を要求した。
どうしてもガラガラが欲しかった姫はそれを承知した。
その途中で、皇帝がその姿を見てしまい、激怒する。
王子と姫は城を追い出された。

「ああ私はなんて不幸なのかしら。あの王子様と結婚していれば」
と嘆く姫に対し、顔の汚れを落とし着替えた王子は、
「あなたを軽蔑する。あなたは価値のあるものがわからず、おもちゃに対し
キスをあたえた」と言って自分の国にもどった。

こういう話は今も昔もそこらへんに転がっている。
価値観の違いやものを見る目、ある程度は仕方がないことだけれど、
結婚しようとするとき、そして結婚生活がはじまってからは、これが
とても大きな障害になるだろう。
ましてや、軽々しくキスを許した、というのはこの場合貞淑を疑われる。
というわけで、自業自得だよと言ってしまえばそれまでだが、
実際ひやりとする話でもある。

自分の無知、無教養で誰かを傷つけてはいないか、軽蔑されていないか。
自分自身の恥で終わるならそれは仕方がないことだけれど、
それがほかの誰かに苦しみを与えるのはあまりにもつらい。

童話って胸にぐっとくるものが多いなあ。
自分のバカさ、愚かさを突きつけられる。