息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

あんじゅう

2013-07-10 10:39:33 | 著者名 ま行
宮部みゆき 著

江戸怪奇譚連作集「三島屋変調百物語」第2弾。
わけあって三島屋に預けられているおちかが、噂を聞きつけて集まる人々から聞き取る
不思議な話。

それはとてつもなく怪しかったり、あるわけがない出来事に思えたりするのだが、
おちかがじっくりと聞いたあとには、違う顔が見えてくる。
てがかりも何もなく、八方塞がりだったものが、話しながらに少しずつ別の角度が見え、
整理されてくるのだ。
そこにあるのはわけのわからないものではない。ちゃんと人の想いであったり、
哀しみであったり、願いであったりする。

江戸の商家のいきいきとした毎日の様子は、おちかの働き振りもあいまって、
忙しさまでが楽しげに見える。
町のそこここにある手習い所やお社、子どもたちが駆ける裏道や隠れる天水桶。
そして商家とはちょっと違う武家の暮らし。
丁寧な描写は江戸の町をくっきりと浮かび上がらせて、あやかしとの対比が生まれる。
こういうところがちゃんとしているから、宮部作品は楽しいのだ。

第2弾ではより大人向けというか、心の奥の奥に潜む感情をゆさぶる話になっている。
ちょっとせつなく、それでいてほっとできる物語だ。