息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

草祭

2013-07-19 10:11:13 | 恒川光太郎
恒川光太郎 著

好みど真ん中。大好物。
どっぷりと美奥の世界につかってしまった。

連作短編集なので、どこかにつながりがあり、登場人物がだぶっていたりする。
人を違う角度から見るようでこれも楽しい。

世界のもうひとつ奥にある不思議な町美奥。
古い水路を通った先とか、民家の路地の向こうであったりとか、
いつの間にか迷い込んでいることもあれば、行き来ができるものもあり、
帰れなくなるものもある。
親に巻き込まれた心中から命拾いした少年、家庭の苦から逃れようとした少女、
限界の状況からここに来たものもあれば、人に連れられたきたものもある。
その姿も懐かしさを感じる町並みであったり、廃屋であったり、
草原であったりし、どこかで会ったことのある人が歩いていたりもする。

得体のしれないかすかな恐怖と、心穏やかに過ごせる安心感。
今という状況に少しでも苦しさや違和感を感じていれば、ここにいたいと思うだろう。
いられるかどうか、その先自分がどんな姿に変わっていくかはわからないけれど。

遠い昔からあった美奥。伝えられる不思議な薬。
何もかもが不思議で妖しいのに、手が届きそうに身近な感じがする。

ずっとずっと読んでいたい、この世界の中に入り込んでいたいと思えた。
そこに美奥があると分かっていれば私は必ず行き、そこにいることを望むだろう。