息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

盲流―中国の出稼ぎ熱とそのゆくえ

2013-07-14 10:05:18 | 書籍・雑誌
葛象賢
屈維英 著

1993年刊と古い本だ。
まだ中国が今ほど巨大化も近代化もしていない頃。
しかし、これを初めて読んだとき、それまで抱いていたたくさんの疑問や違和感に
対する説明を受けたような気がした。

はじまりは1989年春節。
地方に住む農民たちが一気に出稼ぎへと踏み切った。
それは中国の変化が始まった時であり、これまでの封建的な縛りでは
人民を制御できなくなった証でもあった。
天安門事件が起こった年である。

あふれかえる交通機関、野宿者でいっぱいの駅前。
急激な人口増加にインフラは追いつかず、治安は悪化していく。
そして一攫千金を求めて都会へと旅立った人々にも、詐欺や雇い主との摩擦などの
苦しみが襲う。

ここには農村と都市部の大きな格差がある。
一度豊かさを垣間見てしまうと、より良い暮らしをもとめてしまうのは性。
どんなに不当な扱いを受けようとも、夢を追い求めて出稼ぎを選ぶ人はあとを絶たない。
その結果、大きなうねりが生まれ、それが政府をも動かして現在の中国へと至ったのだ。

中国人ジャーナリスト二人の渾身のルポは力強い。
そんなどっぷりと中国で暮らす人ですら、現地では知らなかったことや驚くことが
あったのにも衝撃を受けた。
そして彼らの文章だからこそ、根底に流れる中国人の考え方や暮らし、文化大革命によって
失われたわめられた文化などについても、ニュアンスがわかる。
だからこそ、日本人と決定的に違う部分があるというのもわかる。

私にとって現代中国に対する基礎知識を得るのに役だった一冊だ。
今はずいぶん事情が違うであろうが。