息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

タルト・タタンの夢

2017-01-13 09:04:07 | 著者名 か行


近藤史恵 著

飯テロ・フレンチバージョン。
パ・マルって悪くない、ってことらしい。
商店街にある小さなビストロで出される料理は、家庭的で季節感いっぱい。
飴色のキャラメリゼ、リンゴの紅、金色の泡が立ち上るシャンパン、白くとろけるフロマージュ。
こんがりと焼き目がついた黒豚のハーブロースト、とろけるほど煮込まれたカスレ。

そんなおいしそうな店に起こる小さな事件が、ひとつずつ丁寧に解決されていく。
料理に絡んだ秘密は、ささやかな嘘や心のすれ違いをきっかけにしてふくらみ、本人たちにはどうにもできない。
ヴァン・ショー(ホットワイン)を出しながら、そのきっかけを探り、秘密を解きほぐす過程は、
心をあたためてくれる。

私が既婚者だからなのか、「オッソ・イラティをめぐる不和」は印象的。
もともとはとても仲の良い夫婦なのに、夫は妻のおしゃべりを軽視し、妻はそれに絶望する。
愛情がなせる行動とはいえ、ヴィネグレットソースの皿にフォアグラを載せられる……しかも注意したのに2回も!
好きなものなら、なおさら美味しく食べたいし、そっちが食べたいなら、はじめっから自分がオーダーするし!
いや、そりゃ切れるわ……。そして夫は何もわからず、ぽかん。っていうエピソードなんて秀逸。

悪人はいない。わがままものはいる。
でもみんな食べることが好きで、おいしいものがあると幸せ。
読後感もほのぼの。いつ読んでも楽しい。


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