息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

妖異七奇談

2014-12-31 22:15:42 | 著者名 は行
細谷正充 編

闇が存在し、あやかしが人々とともにそこにいた時代。
数々の不思議を七人の作家が描き出す。

すごく面白い、それは文句なし。
さすがのメンバーぞろいなのだ。が!

既読のものがいくつもあるのだなあ。
まあ、仕方がない。そういう趣味なのだし。
しかもこれって既刊のものからのピックアップ。
ソンした気分がぬぐえないのだ。

個人的には梶尾真治の「清太郎出初式」がすごく好き。
映画「宇宙戦争」を、極東の島国バージョンで読ませる。
ちょっとトンデモ感が漂うところが何ともいえない。

あやかしとか化け物とか不思議とか、日ごろあまり読まない人の
入門編にはいいかものアンソロジー。

すぐそこの遠い場所

2014-12-18 10:57:20 | 著者名 か行
クラフト·エヴィング商會

のどかであたたかで、ちょっと頑固で不思議。
そんな独特の世界観をもつユニット・クラフト·エヴィング商會がつくる
幻想的な一冊。

クラフト·エヴィング商會の先代・吉田傳次郎が「見るたびに中身が変わる」と
言っていたというアゾットについて解説した辞書。
孫である現在の主人は、幼いころにあこがれ続けたこの本を翻訳した。
……という設定なのだが、ごく自然に取り込まれてしまう。
アゾットとは架空の国だが、どことなく懐かしく切なくそれでいて
驚きに満ちている。

登場するものたちはどれも繊細で魅力的なのだが、
なかでも好きなのが「雲母印本」。
ページをめくればさらさらと崩れ去るはかない本であるという。
そしてそれを読むための特殊な能力をもつ人々がいるという。
その中にはたったひとことしか書かれていないものもあり、
驚くほどの文章が秘められたものもあるという。

いくら読んでも飽きない気がするのは、吉田傳次郎の言葉どおり
中身が変わっているからなのかもしれない。

手みやげをひとつ 洋の巻

2014-12-17 15:35:54 | 書籍・雑誌
マガジンハウス 編

贈り物のシーズンだ。
いつも百貨店のネットショップを利用しているものの、
どうしてもそれではありきたりだなあという想いがある。

ちょっと勉強してみようかなと手に取った一冊。
雑誌「クロワッサン」の人気連載記事がまとめられたものだ。
48人の著名人が、それぞれのおすすめの品を紹介している。

庶民的なものがあったり、とてもゴージャスなものがあったり、
ただ見るだけでもとても楽しい。
食べたことがあるものに出会ったりすると、なんだかうれしい。
これは「洋の巻」であるから、洋菓子などが主体だが、
「和の巻」もあって、こちらも楽しそう。

ただし、読んでいると非常におなかがすく。
夜中は厳禁だな。
で、結局お歳暮はまったく関係ないものになりました。

ザビエルの首

2014-12-16 10:18:01 | 著者名 や行
柳広司 著

日本にキリスト教を伝えたといわれるフランシスコ・ザビエル。
彼の首が鹿児島県で発見されたという報告が入った。
どう考えても怪しさいっぱいのこの情報を調べるべく、
雑誌記者・修平は現地へ向かった。

ザビエルの首と対面した瞬間、修平に異常が起こる。
彼の意識はザビエルに同調し時空を超えた。

ありがちなタイムトリップものなのだが、ザビエルの周辺の人の
肉体に入り込み視点を共有することで、違和感がなくかつ冷静な
傍観者となる。
またそれが時代を徐々にさかのぼって4回にも及ぶために、読者は
ザビエルの生涯を少しずつ理解していくことになる。
タイムトリップの終わりのほうになると、乗り移った人物よりも
修平の意識のほうが強くなり、そこで起こった殺人事件を解決し、
修平の言葉で説明する。

修平はその明晰な頭脳で多くのことに気づき、斬新な分析を
加えていく。その過程はとても面白い。
時代考証もよくされている。
ただ、宗教観に関してはもうひとつかな。
ザビエルは聖人だ。もう少しそのあたりの感覚を掘り下げたら、
重みのある作品になったような気がする。

お文の影

2014-12-15 14:57:21 | 著者名 ま行
宮部みゆき 著

無邪気に遊ぶ子供たちの中に混じる小さな影には、
悲しい秘密があった。
ちょっとだけ怖く、それなのにあたたかい。
江戸を舞台にした短編集。

まだまだ貧しい時代、一生懸命生きている人々の中で起こる
小さな不思議と事件。理屈では説明できないものも多いけれど、
それはそのまま受け入れられていたのだろう。
どの話もそれぞれに輝きを放つ者ばかりで飽きさせない。

しかし、本書は内容よりも“『ばんば憑き』とまるっと同じなのに、
タイトルだけ変えて出版されて騙された”という事実によって
有名なのだった。
全然知らなかった。それは怒るだろう。
すごく面白いし、宮部ワールドのいいところがぎゅっとつまって
いるのに残念。