岩井志麻子 著
かの有名な「津山三十人殺し」。「八つ墓村」のモデルにもなった事件だ。
これを新たな切り口から書き上げた本書は、著者の初長編でもある。
閉鎖的空間、近親婚と常にお互いを監視しあう状況。
地方の寒村にありがちな光景は、溶け込めない者、差別される者にとって
耐えがたい。
そして徴兵検査という基準が、また新たな一線を引き、お国のためにすら
働けない失格者としての烙印が押される。
夜這いの風習は健在で、性についての鷹揚さは、それができないという
差別も生み出す。
田舎の小さな集落であるからこそ、不動のものとなった格差。
因習と苦悩の中で爆発する負のエネルギー。
読み進めるごとに起こるべくして起こった事件という気がしてくる。
一章ごとに新月から満月まで、月が丸くなっていく。
その光と影の中で、ある者はふてぶてしく、ある者は流されて
暮らしていく。
性以外の楽しみをもつ余裕もなく、無知であることの哀しさが
しみじみと切ない。
揶揄されていることがわかっても、幼い頃からその場所しか
知らなければ起死回生するチャンスもない。
犯人・辰男のやるせなさも、その緻密な計画性も、
優等生からの転落と絶望を考えると自然な流れにすら感じる。
彼に手を貸した集落の男も、度重なる妻の裏切りや、
虐げられた婿としての自らを“殺して”もらうことが
目的だったとしたら、あまりにも哀しくやるせない結末だ。
最初と最後は老婆の語りなのだが、いまひとつこれが生きておらず
残念な気がした。
かの有名な「津山三十人殺し」。「八つ墓村」のモデルにもなった事件だ。
これを新たな切り口から書き上げた本書は、著者の初長編でもある。
閉鎖的空間、近親婚と常にお互いを監視しあう状況。
地方の寒村にありがちな光景は、溶け込めない者、差別される者にとって
耐えがたい。
そして徴兵検査という基準が、また新たな一線を引き、お国のためにすら
働けない失格者としての烙印が押される。
夜這いの風習は健在で、性についての鷹揚さは、それができないという
差別も生み出す。
田舎の小さな集落であるからこそ、不動のものとなった格差。
因習と苦悩の中で爆発する負のエネルギー。
読み進めるごとに起こるべくして起こった事件という気がしてくる。
一章ごとに新月から満月まで、月が丸くなっていく。
その光と影の中で、ある者はふてぶてしく、ある者は流されて
暮らしていく。
性以外の楽しみをもつ余裕もなく、無知であることの哀しさが
しみじみと切ない。
揶揄されていることがわかっても、幼い頃からその場所しか
知らなければ起死回生するチャンスもない。
犯人・辰男のやるせなさも、その緻密な計画性も、
優等生からの転落と絶望を考えると自然な流れにすら感じる。
彼に手を貸した集落の男も、度重なる妻の裏切りや、
虐げられた婿としての自らを“殺して”もらうことが
目的だったとしたら、あまりにも哀しくやるせない結末だ。
最初と最後は老婆の語りなのだが、いまひとつこれが生きておらず
残念な気がした。