息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

私の小裂たち

2013-07-02 10:22:40 | 著者名 さ行
志村ふくみ 著

人間国宝である著者が、50年間にも及ぶ創作生活の中で、
染め、織ってきた布の小裂を貼りためた「小裂帳」。
宝石箱のようなこの宝物をそのまま本にしたのがこの作品だ。

著者が織物をはじめたのは1960年前後。
私が生まれるよりも前のことだ。

毎日毎日蘇芳を炊き、染め続けた日々。
茜や紅花が手に入り、夢中になった時間。
藍の奥深さにとりつかれた年月。

それも時空を超えた美しさと価値があるものなのに、
なんとも愛らしい、素朴な魅力もあるのだ。
それは実際に触れることができるものがもつ特性なのだろうか。

ふだん、あまり華やかな色や柄を身につけない私だが、
そのよさはよく理解できる。
格子柄はとくに普段縁遠いのに、こんなふうに見せられると、
その表情の豊かさに釘づけになる。
色の組み合わせと引き立てあい、というテーマで考えるとき、
格子柄は素晴らしい力を見せる。

文章も素晴らしいし、染に使う植物の話も面白い。
ただぱらぱらと眺めるだけでも手に取る価値がある。