息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

カルメン

2013-07-17 10:12:13 | 著者名 ま行
プロスペル・メリメ 著

情熱的なイメージと、ビゼーのオペラで有名なカルメン。
語り手は作者と同じ考古学の研究者で、そのためにスペインを訪れる。

山の中でであった男・ホセに食事を与えた主人公。ホセが山賊の一味であることを知った
案内人は報奨金に目がくらみ、密告する。
主人公はそれに気がつき、ホセを逃がす。
しかし、彼は捕らえられ、死刑囚として投獄された。
面会に行った主人公は、ホセに身の上話を聞いた。

ホセは貴族の家に生まれながら、若い頃に出奔した。
騎兵となったとき出会った女・カルメンの罪を見逃してやったために、懲罰を受ける。
カルメンの美貌と踊りの魅力のとりこになったホセは軍を逃げ出し、結婚する。
カルメンの仲間とともに密輸に手を染め、悪に堕ちていくホセ。
一方で自由奔放なカルメンは束縛を嫌い、平然と恋愛をする。
嫉妬に狂ったホセはカルメンを刺し殺してしまった。

妖しい魅力に抗えない男たち。
ひとりの男を愛し続けることができず、それに価値を見出すこともできない女。
何にも縛られずに生きていくことを望み、カルメンとの愛の逃避行をしながらも、
しだいに絡め取られていくホセは、いつのまにか身動きする自由すら失っている。
カルメンが自分の思い通りにならなければならないほど、ホセは必死になり、
カルメンから目が離せなくなっていく。そしてその愛は究極の独占・死へと続くのだ。
独占でありながら、永遠の別れでもある死。
それゆえにホセは生涯カルメンに縛られている。

神話や歴史を下敷きにした物語は深みがあり、長く愛されているのが理解できる。