息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

魔女伝説

2015-01-12 10:23:11 | 著者名 は行
半村良 著

主人公・野川には自慢の妻・瑤子がいる。
何の不満もないはずだったのに、ある日突然彼女の姿が消えた。

瑤子の逃避行と旅先での出会い、妻を探す野川の姿が物語の柱である。

なのだが、この瑤子がまったく魅力的に見えない。
古い作品なので、女性像にも変化があるといえばそれまでだし、
まあ、男性が理想とする女性なのだ、言えばそれまでであるが。
入り込めない。
確かに人をとりこにする素晴らしい人っぽいんだけどね。

結局結論としては瑤子はエスパーであり、人の心を読んだり
操ったりができる。
そしてそれを利用しようとした組織だか国家だかに追われていた。
という結構陳腐な感じ。

え~どうしよう、いいところがみつからない。

しいて言うならば、彼女を春子と呼んだ老婦人は魅力的だった。
彼女のもとで居候をしていたときの、のどかな日々も素敵だった。
なんでもかんでもできる人っていうのが鼻につく部分もあるから、
ここで登場した素晴らしい絵を描くっていうエピソードだけでも
十分だった気がする。

鷲の驕り

2015-01-11 14:05:28 | 著者名 は行
服部真澄 著

1990年が舞台だけにいろいろと古い。
しかし、今読んでもそれなりに面白いということは、著者の先を見る目は
相当なものだったといえる。

発明と特許、それを仕切る弁護士。
それだけでもスリリングな駆け引きがあるわけだが、情報化社会の中では
書類を金庫にしまう、というだけでは秘密は守られない。
厳重なセキュリティを張り巡らせていても、限度があるのだ。
天才的なハッカーの自らを試すかのような心理と、それをとらえる側との
駆け引きはスリル満点だ。

ある意味趣味的ともいえるそんな能力は、必ず付け込まれる。
金になるからだ。
それがダイヤモンドという閉ざされた市場の商品であればなおさらのこと。
ものの価値というものは、管理され調整されてこそ確定する。

特殊な世界を矛盾を感じさせず描き出し、ドラマ性をもたせる。
スピーディでのめりこむような躍動感がある。
うまいなあ、としみじみ思わせられた。

バチカン奇跡捜査官 サタンの裁き

2015-01-02 10:22:41 | 著者名 は行
藤木稟 著

どうしたことだろう。
バチカン奇跡調査官 血と薔薇と十字架』『バチカン奇跡調査官 黒の学院』であれこれ文句を言いつつも、
またしても手を出してしまったではないか。

まあ、カソリック表記問題をはじめとして、いろいろ気にしつつも、
今回は「腐らない死体」がテーマ。
イタリアのカプチン修道院とか、聖ベルナデットとか、聖マルゲリータとか、
死後も永遠に姿を保つ、という例は多くあるのだが、今回平賀とロベルトは
それがバチカンが認定すべき奇跡であるかどうかを確認に行く。

舞台はアフリカのソフマ共和国。高温多湿の気候は、今回のテーマにもっとも
不向きに思えたのだが、そこにある死体は確かに腐敗していない。
現地の怪しげな呪術や儀式、それに関連した殺人が起こり、
謎が謎を呼ぶ。
キリスト教は布教の地の宗教や習慣を巧みに取り込み、人々の心をとらえてきたと
言われているが、まさにいま、それが行われているのがソフマだった。

宗教的な考察と化学的な裏付けが組み合わさることで、読みごたえがある
作品になっている。

夏目家の福猫

2015-01-01 10:27:05 | 著者名 は行
あけましておめでとうございます。
はやいもので5回目のお正月。
よく続いたなあ。最近途切れがちだけど。
今年はいいことありますように。
縁起のよいタイトルでスタート。

半藤末利子 著

夏目漱石の長女・筆子の娘である著者が、当時の夏目家の様子を
描いたエッセイ。

表題作は「吾輩は猫である」のモデルとなった猫が、夏目家の猫と
なるまでのいきさつが語られている。
漱石の妻・鏡子は猫嫌いであったというのには驚いた。
七人の子を育て、時に荒れる漱石を支えてあれほどの文章を書かせた鏡子は、
パワフルでありながらどこか少女じみた愛らしさのある魅力的な人だった
ようだ。
しかし、長女の筆子はかなりつらい思いもしたらしい。

筆子は大恋愛の末、漱石の弟子・松岡譲と結婚し、誤解や中傷を受けながらも
生涯愛しぬいた。
彼女もまた強い女性だった。

残念ながら著者は漱石の死後に誕生しているため、直接は知らない。
それでも祖母や母から語り伝えられたエピソードは生き生きとしている。
漱石ファンとしては非常に興味深い。

妖異七奇談

2014-12-31 22:15:42 | 著者名 は行
細谷正充 編

闇が存在し、あやかしが人々とともにそこにいた時代。
数々の不思議を七人の作家が描き出す。

すごく面白い、それは文句なし。
さすがのメンバーぞろいなのだ。が!

既読のものがいくつもあるのだなあ。
まあ、仕方がない。そういう趣味なのだし。
しかもこれって既刊のものからのピックアップ。
ソンした気分がぬぐえないのだ。

個人的には梶尾真治の「清太郎出初式」がすごく好き。
映画「宇宙戦争」を、極東の島国バージョンで読ませる。
ちょっとトンデモ感が漂うところが何ともいえない。

あやかしとか化け物とか不思議とか、日ごろあまり読まない人の
入門編にはいいかものアンソロジー。