坂東眞砂子 著
『日本の憑きもの』にも登場するイヌガミ。
いわゆる憑物筋といわれる家に生まれた者が使役するという。
高知の山奥で「狗神筋」と忌み嫌われる家に生まれながらも、
表面上は穏やかに紙漉きをして暮らす女性。
あるとき赴任してきた若い教師との出会いから運命が揺らぎ始める。
似たりよったり、名字までみな同じの閉鎖的な集落であれば
すべて平等に感じるのが当然と思われがちだが、均質であればあるほど
微細な違いが注目され、そこを突いた差別がある。
憑物筋というのもさまざまないわれが伝わっているが、もとをただせば
たいしたことのない差が後年まで伝わったということだと思う。
おどろおどろしい田舎の物語を書かせると素晴らしい著者であるが、
本書は舞台設定や小道具は効いているのに、物語の構成がもうひとつ
物足りない感じ。
おもしろくないわけではないのだが、きっと求めるものが大きくなって
しまうのだろうな。
血をめぐる暗いつながり、守らなければと縛られる伝統。
そしてそれはやがて殺人や放火、過去をあぶりだすことにもつながっていく。
決して後味がいいラストではないが、この物語にはふさわしい。
『日本の憑きもの』にも登場するイヌガミ。
いわゆる憑物筋といわれる家に生まれた者が使役するという。
高知の山奥で「狗神筋」と忌み嫌われる家に生まれながらも、
表面上は穏やかに紙漉きをして暮らす女性。
あるとき赴任してきた若い教師との出会いから運命が揺らぎ始める。
似たりよったり、名字までみな同じの閉鎖的な集落であれば
すべて平等に感じるのが当然と思われがちだが、均質であればあるほど
微細な違いが注目され、そこを突いた差別がある。
憑物筋というのもさまざまないわれが伝わっているが、もとをただせば
たいしたことのない差が後年まで伝わったということだと思う。
おどろおどろしい田舎の物語を書かせると素晴らしい著者であるが、
本書は舞台設定や小道具は効いているのに、物語の構成がもうひとつ
物足りない感じ。
おもしろくないわけではないのだが、きっと求めるものが大きくなって
しまうのだろうな。
血をめぐる暗いつながり、守らなければと縛られる伝統。
そしてそれはやがて殺人や放火、過去をあぶりだすことにもつながっていく。
決して後味がいいラストではないが、この物語にはふさわしい。