息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

素材の味を食べる

2015-01-14 12:09:43 | 著者名 な行
野崎洋光 著

日本料理店「分とく山」総料理長である著者の料理は
とても贅沢なのにとてもシンプルだ。
料理は手を加えればいいというものではないし、調味料は足せば
おいしくなるわけではない、という大切なのに忘れがちなことを
しっかり突きつけられる。

ずっと昔著者の連載が楽しみで『CLASSY』を毎月購読していた。
当時の記事は切り抜いてファイルし、いまだに大切にしている。
そして現役で助けてもらっている。
手早くおいしく、それでいて見た目もうれしい品ばかり。

本書はレシピはあまり多くない。
それよりも料理人としての考え方や、基本となった家庭の味、
常識を覆す調理方法の見直しなど、わかりやすい文章で語られる。
よい素材をおいしく食べる、ということがきちんとわかっていれば、
あとは自分なりの方法でもいい料理はできるんだなあ、と思う。
もちろん失敗や回り道はあるだろうが。
いや、むしろ失敗しても試すくらいの冒険心がないと、
本当のおいしさにはたどり着けない。
素材は日々違うし、食べたいものも変わってくるのだから。

ここまで好きなのに、「分とく山」には行ったことがない私。
予約も取りにくいし、お値段だってなかなか……と
いつもの引きこもりっぷり全開な言い訳をしてみる。
そのうち絶対に行きたいものだ。(本気)

からくりからくさ

2014-11-04 10:23:15 | 著者名 な行
梨木香歩 著

祖母が亡くなり、蓉子には人形の「りかさん」が残された。
蓉子はりかさんとともに祖母の残した家にうつり、3人の女性とともに
新しい暮らしを始めた。

4人に共通するのは、ものをつくる人であること。
紡ぎ、染め、織り、そして食べながら、季節は移り変わっていく。
のどかでありながら、ぴんとした緊張感や厳しさを秘め、
美しいものを生み出していく暮らしは、とてもうらやましい。

りかさんの存在も独特だ。
意思をもち、それを伝えることができる人形。
おとぎ話のようで、これでちゃんと物語が進むのかと思ったけれど、
きちんと舞台を彩り、役割を果たす。

染料や織物を専門的に語る場面があったり、面に関する考察があったり、
結構ドラマティックな展開なのに、心に残るのはやはり生活の場面。
静かに流れる時間をともに過ごしたような気持ちになった。
その家がなくなってしまったから、なおのことだ。

ハッピー・プチマクロ ─10日間でカラダを浄化する食事

2014-10-04 10:15:38 | 著者名 な行
西邨マユミ 著

歌手・マドンナのパーソナルシェフをしていたことで知られる著者。
マクロビオティックという玄米菜食を基本にした食事法で、
健康的で美しい体づくりを提唱している。
一時はハリウッドスターの間でも大ブームだったマクロビオティックは、
日本人食文化研究家の桜沢如一が提唱したものだ。つまり和食が根底にある。
それなりに定着はしたもののメジャーとはいえないのはそのせいかも。
お肉メイン乳製品たっぷりが当たり前の食文化からは、あまりにも
極端な変化を求められるからなあ。いやベジタリアンもいっぱいいるけどさ。

で、内容であるが、かなりためになる。
とくに炭水化物の上手なとり方や、自分の体が求めているものをとるという
考え方は参考になった。
よい食材、それも自分が暮らすまわりでとれるものを食べる、というのは
さまざまな食事療法で言われることである。

なによりもいいなあと思ったのが「プチマクロ」の提案だ。
自分のできること、チャレンジしやすいことから、ひとつでもいいから
やってみる。体調を見ながら細く長くやってみる。
食事療法で頭でっかちになりすぎると、他のものを排除するような方向へと
突き進んでしまう。
もともとの目的を見失わないためにも“プチ”はいいのではないか。
日本人にとって“プチ”は、今の食事にちょっと目を向けるだけでも可能。
食生活を楽しく見直すのにいい。

慟哭

2014-07-04 10:38:09 | 著者名 な行
貫井徳郎 著

じっくりと物語が進む。
幼女誘拐殺人事件の捜査の息詰まる日々。
己の心の穴を埋めるために新興宗教にのめり込む男の日々。
交互に進む二つの話は、全く関係がなさそうであり、
時間の過ぎ方や物事の感じ方までも対照的だ。

そしてあまりにもじっくりと進むために、
そして私自身があまり興味をもてない雰囲気であったために
ある意味退屈であった。

しかし、最後の最後それはひっくり返った。
その意味が理解できたとき、そこにはどうにもできない
哀しさや虚しさがどっと押し寄せてきた。

人の哀しみのあり方はそれぞれに違う。
ましてや大切な娘を失ったときの喪失感は、表現しようの
ないものであるだろう。

幼い子供が巻き込まれた事件を発端に、さらなる大きな悲劇が生まれた。
タイトルは秀逸だ。
そしてこれが著者のデビュー作であることに驚きを隠せない。

西脇智代 かわいいアイデアBOOK

2014-07-02 10:18:21 | 著者名 な行
西脇智代 著

有名女優やタレントなどのスタイリングで知られる著者。
自身のブランドももっており、独自の世界観を展開している。

本書は、日々の暮らしの中で楽しくおしゃれに見せる、
アイデアや工夫が盛り込まれている。
また、若手クリエイターとその作品の紹介ページがあり、
著者の感性を刺激するつくり手の様子がのぞき見できるのも魅力。

可愛いものが好き、いくつになっても好き、という女性は多い。
でも見ていてイタくないように、それでいておしゃれにとなると
なかなかにハードルは高い。
だから、まず見ていて楽しいこんな本は嬉しいのだ。
パラパラとめくるだけで可愛いものを堪能できる。
そして、自分でも活用できる小さなアイデアが見つかればもっとうれしい。
センスがいい人って、特別なものでなくてもちょっとした着こなしで
すごく素敵に見せていたりするからなあ。

しかし、じっくり読み込む本ではないから、私にとってはやや高価。
これは借りて読んだのだが、買うとなるとためらうかなあ。