息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

佐々木かをりの手帳術

2011-07-31 11:27:05 | 著者名 さ行
佐々木かをり 著

著者が経営するイー・ウーマンが発売している「アクションプランナー」という
手帳を例に、行動管理を語る一冊。

著者はやりたいことがいっぱいだった学生時代、効率的にアルバイトを入れようと
30分刻み、移動時間まで含めて考える行動術を生み出したという。

この移動時間まで、というのは大きなポイントで、青山で11:00~などという
漠然としたものでなく、どこから青山へ行くのか、その移動時間はどれだけか、
11:00~から何時間かかるのか、そこから戻る移動時間は……とすべてを
合わせて考えることで、正確な行動を読むことができる。

このすべてを合わせて、というのはほかのことにも及ぶ。
たとえば、仕事とプライベートの手帳は分ける人も多いと思うが、そこは一括する。
なぜなら体はひとつだから、まとめて書いたほうがミスが出にくい。
同様に、子どもの学校の予定などもまとめてしまう。

ありがちなTODOリストも作らない。
やりたいことは、やれそうな日にあらかじめ設定してしまうのだ。
青山のギャラリーを見たい、ということなら、先の青山での打ち合わせの日の
後に入れ込んでしまう。

仕事でお会いして、これらを直接教えていただく機会に恵まれたのだが、
目からウロコなことがポンポン出てきた。
ご本人もアタマの回転が速く魅力的な女性で、スタッフの方がまた負けず劣らずの
優秀な女性ぞろい。実に活気のあるところだった。

しかし、個人的にはこの手帳術は実践できなかった。
移動時間まで込みで考えるという習慣は身についたものの、この30分刻みの
スケジューリングは私には不向きであったし、アタマの整理をするうえで
TODOリストも不可欠である。
アクションプランナーはとてもよい手帳だが、私には大きすぎた。
……でも、それでいいのだと思う。
時間とは何か、どう管理するか、確かめる機会は得難いものであったし、
私にとってはこの本はプラスだったといえる。

毎年たくさん出される手帳や時間管理術の本。その中でもかなり優秀な
一冊ではあると思う。

総門谷

2011-07-30 11:11:18 | 著者名 た行
高橋克彦

岩手県を舞台に立て続けに起こるUFOの目撃談。
それに関係があるらしい謎の焼死体と自殺者。
主人公はその背景にある組織の存在を感じとり、自らの超能力で戦いに挑む。

これは本当に盛りだくさん……過ぎのきらいもある。
歴史、政治、超能力、UFO、古代遺跡、異星人、ありとあらゆる不可思議なものを
ぎゅっと詰めて、主人公がかき回す、みたいな感じ。
しかし、これが好きな人にはたまらないてんこ盛り。

問題は主人公がすごい超能力の持ち主でありながら、解決能力はいまいちって
ことだな。なかなか天は二物を与えないね。

ものすごく大雑把なイメージを言うと、すごく華々しいステージで、
大スターが勢ぞろいなんだけど、
舞台装置が派手すぎてよく見えなかったとか。そんな感じ。

私は正直好きですが、これはみんなが好きでないことくらいはわかります。
初めの50ページくらいで合わなければ早々にやめたほうがいいかも。
そこらへんで、なんだかワクワクしてきたら、あなたは私の仲間です。
最後まで突っ走りましょう。読み応えがある長編ですよ。

この続編は平安時代が舞台。
これはこれで、歴史ものの色合いが濃く楽しい。
いずれまた。

またまた申込み……

2011-07-29 10:00:13 | 基本情報技術者受験
5,278円。コンビニ払い。
またまた申し込みましたよ。基本情報技術者。

今回は特別試験だったので、結果が出る出ないなんて問題じゃないうちに
秋試験の申込スタートです。
絶対受かってないので、すがすがしく申し込む私。

ちなみに午前午後とも、50%台後半にたどり着いていたので結構いい気になってます。
あと一歩!
しかしその一歩が非常にでかい!というのがあらゆる試験の性。

とりあえずできなかったところの過去問からやり直しです。
できなかっただけあって、眠気が襲います。
できなかっただけあって、やっぱりできません。
あと3か月、この一歩をどこまで埋められるのか?

っていうか、結構飽きてくるよね。
休憩時間、隙間時間には勉強っていう日々……。
何かほかのことに手を出せるよう、早く卒業するのだ。

妊娠カレンダー

2011-07-28 10:08:33 | 著者名 あ行
小川洋子 著
第104回芥川賞受賞作。


妊娠した姉を見守る妹の中に潜む静かな悪意。
アメリカ産のグレープフルーツで作るジャムに込められた想いと
「おめでとう」といいそびれた小さな後悔。
表題作はある意味とても怖い話ではあるのだが、
整理しきれない感情のひだをじょうずに表現している。

そのほかに学生寮を舞台にした「ドミトリィ」と
給食室に魅せられた男が主人公の「夕暮れの給食室と雨のプール」が
収録されている。

ごくごく普通の生活を切り取っているようでいて、どこか不思議な世界観。
読んでいるとこの人は理系の人なのだなあと思う。
きちんと理論立ててものを考え、表現することができる。
感情豊かな表現の裏側には、一歩引いた冷静な目線がある。

べっぴんぢごく

2011-07-27 10:07:09 | 著者名 あ行
岩井志麻子 著

母を失い、分限者の養女として迎えられたシヲ。
体を洗い、身なりを整えてみれば彼女は絶世の美少女だった。
そこから始まる女たちの系譜。一代ごとに美醜を交互に繰り返しながら、
家系は進んでいく。

美しいことは力である。幸せをつかみやすい気もする。
しかし、それが一筋縄でいかないのが本書の魅力。
必ずしも美醜に関係なく運命は動き、時代は流れる。

著者は故郷である岡山の寒村を描くのが非常にうまいが、
ここでもその腕をいかんなく発揮し、土着・因習に絡め取られた人々と
そこにまとわりつくような物語が、淫靡な香りを漂わせている。

死と隣り合わせ、というのも、寒村に暮らす人々の特徴だ。
貧しく、文化にも遠いゆえに、ひとたび病やけが、飢饉に襲われると
ひとたまりもない。ましてや赤子などまだ体の半分はあの世にいる。
本書では黄泉の国を連想させる題材があちこちに用いられ、
命のもろさと、それに対抗しようとする魂のしたたかさを感じる。

どろどろとした醜いもの、それなのに嫌だと断ち切ることができない、
そんな不思議な感覚を持たせる世界観。
小さな村の貧しい一人の女がどう生きたか。
ただそれだけなのに、人間ってすごいと思わせる岩井志麻子がすごい。