息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

長ぐつをはいた猫

2013-07-12 10:17:40 | 著者名 は行
シャルル・ペロー 著

ペローといえばやっぱりこれをはずせない。
遺産としてもらった一匹の猫が幸運をもたらすのだが、
ユーモアも皮肉も効いていて、大人にも楽しい。

というか、子供向けの物語のおくぶかさにとりこになっている。
勧善懲悪、正直に生きなさい、という大義名分を物語化して、
擬人化された動物たちが活躍する、という曖昧な記憶にまとめられていたのだが、
じっくり読み返すととんでもない。

そこには民衆の暮らしとか、貧しさを笑い飛ばすたくましさとか、
国を治める難しさとか、高い身分への憧れとか、支配者階級への皮肉とか、
たくさんのものが詰め込まれ、口伝えされ、歌われてきているのだ。
動物だって、そこらにいるものを可愛いから擬人化しているのではない。
選ばれた理由があり、歴史的民俗学的背景がある。
そして動物の姿で語ることによって、特定のものへの非難をすることが可能となり、
言い訳が立つということにもなる。

世界中に似たりよったりの話があるというのも、人間が作り出すものの共通点と
して興味深い。
本書も、ちょっとわらしべ長者のエッセンスを感じる。

ところで“長靴”つまりブーツは、当時のヨーロッパでは貴族のあかし。
そう、だからこそ、猫が道々「ここはカラバ公爵の土地だといえ」と命じると、
農民たちはそう言ったわけだ。
猫はそれを承知のうえで、「長靴をくれ」といったのだ。
そんなこんなは知らないままに読んでいた昔。それでも面白かったけれど、
わかるともっと面白い。