息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

やさいのかみさま

2015-01-31 14:44:43 | 著者名 か行
カノウユミコ 著

野菜料理のカリスマといわれる著者。
この本にも一章ごとにレシピが紹介されている。が、
分量なし。
材料とざっくりした作り方のみ。
なんだか楽しくなって読んでみた。

どれも簡単で野菜そのものの味を楽しむ料理ばかり。
農家に育っただけに、野菜への愛情や知識が豊富で、
体をいつくしむ考え方も参考になる。

肉も魚も好きな私にとっては、まるごと真似をするのは難しい。
マクロビ自体、なかなか入っていけないし。
田舎の精進料理には辟易したこともある。
そんな人はたくさんいると思うし、そもそも料理に縁がない人も
いるだろう。
それでも、絶対役にたつ。
こんなふうに食べられる、という知識は、こんな風に生きていく、と
いうことにつながる。
毎日外食ばかりでも、その食材への視線が変わってくるはず。

一度読んでおくと、ちょっと世界が変わって見えるかも。

カフェ・コッペリア

2015-01-30 14:32:44 | 著者名 さ行
菅浩江 著

舞台もテーマもまぎれもなくSFなのに、漂う空気はファンタジック。
いつも著者の不思議な世界観に取り込まれてしまう。
どんなに技術が進んでも、どんなに便利な道具が一般化しても、
人間に感情があるという事実は変わらないんだなあ。

たった10年前を振り返っても、考えられないほどに世の中は進んでいる。
小さなスマホ一台でネットもテレビも支払いも開錠もできるなんて、
あの頃誰が思っただろう。
しかもその端末は、単なる眼鏡や腕時計にしか見えないくらいに
形状も進化しているのだ。
でも逆に考えると、眼鏡や腕時計の形状って、すごく早い時期に
完成してたってことだなあ。クラシカルなようでいて実はもっとも
スタイリッシュっていう。

著者の物語はそんな感じがするのだ。
変わるものと変わらないもの。
人の心を揺るがすものとそうでないもの。

現実にはまだないものたちが紡ぎだす話は、手が届きそうでいて
届かない、もどかしい不思議を秘めている。

残穢

2015-01-24 10:23:46 | 小野不由美
小野不由美 著

その部屋は不審な音がした。
重い布が畳を引きずるような、そして不可思議な気配。
調べてみても何もない。
事故も事件も、そして近所の人も。
それなのになぜか住人はいつかず、次々と変わっていく。

そんなありがちな“町の怪談”みたいなものを
徹底的に掘り下げて調べてみたら何が出てくるのか。

ごく普通のマンションが建つ前、そこには何があったのか。
誰が暮らし、どんな町が形成されていたのか。
調べても調べても手掛かりはあまりに少なく、バブルを挟んで
土地は細分化されて、もとの持ち主はわかりにくい。
それを可能な限りのつてを求めてさかのぼり、突き詰める。

どんどんどんどん進んでいるのに、何もわからない過程が
とても怖かった。こういう怖い出来事って、何らかの理由付けが
されると安心できる。それが理由だったんじゃないかとこじつけられる。
だって、それなら自分は関係ないと思えるから。

そして小さなささやかな“つながり”が少しずつ見えてくる。
関係ないかと思えるようなそのつながりは、実は大きな意味をもち、
そしてさらに広がっていく。
……つながりたくないです。

怖いという意味では著者の作品でもナンバーワンかもしれない。
夜中に読んでちょっと後悔した。

ブック・ジャングル

2015-01-23 10:57:12 | 石持浅海
石持浅海 著

閉鎖されることになった市立図書館に、5人の男女が集まった。
図書館職員を父に持つ百合香は、思い出の本を貰い受けるために
友人ふたりとともに忍び込んだ。
しばらく日本を離れていた沖田は、友人とともに一夜の思い出に
浸るために忍び込んだ。
面識のない二組は、突然襲い掛かるラジコンヘリから身を守るために
ともに戦う羽目に陥る。

図書館は大好きだ。本棚の森の中、足音を忍ばせながら目的の本を
探すのは至福の時。時間を忘れて過ごしてしまう。
なので、どうも現実味はいまいち。
ラジコンについては知らないが、こんなに緻密な操縦が可能なものなの?

まあそこらへんは置いておいて、密室の中でどこから襲ってくるとも
知れない敵と戦うスピーディな物語だ。
息つく間もなくどんどん追い込まれ、何とか生き延びるために
頭をフル回転させる。

犯人は意外であり、またそれは残酷な事実でもある。
夜が明け、戦いが一段落したところで幕が下りるが、
その先の物語を考えると、少し切ない。

古代地中海血ぬられた神話─驚異の世界史

2015-01-22 10:18:32 | 著者名 ま行
森本哲郎 著

世界史って好きだなあ。
でも年号とかって全然知らない。つまりテストでの得点はのぞめない。
ただ、大まかな流れとそれにまつわるエピソードを知っていると、
全然関係ない本が楽しく読めたり、意外な人とおしゃべりに
盛り上がったりする。

歴史なんて大嫌いという人でも、噴火で埋もれた町ポンペイとか、
クレタの迷宮とか、トロイの木馬とかは耳にしたことがあるはず。
これらの歴史的事実とそれを裏付ける遺跡の写真には、
なんていうか、現実を突きつけられる気がするのだ。
物語の一部のように読み流していたことが、かたちをもって
立ち上がってくる。

“血ぬられた”というおどろおどろしいタイトルながら、
内容はそんなでもない。
天災も戦闘もまあそんなものかという程度の描写なので、
あまり構えずに読むことができる。