天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

さよなら北の銀河鉄道

2006-04-19 | 鉄道
 明日、北海道からひとつの鉄路が消える。

北海道ちほく高原鉄道 ふるさと銀河線

かつて網の目のように鉄道網が張り巡らされていた北海道だが、
国鉄時代末期からの赤字地方交通線の廃止の大ナタが振るわれ続けた結果、
現在では札幌を中心に各地方へ向かう主要幹線のみが残るだけとなっている。
そんな中で、ふるさと銀河線は最後まで残った北海道らしい「超長大ローカル線」だった。

 ちほく高原鉄道と地元有志はつい最近まで必死の営業活動を行っていた。
JR北海道から蒸気機関車を借りてSL列車を走らせたし、
松本零士氏とのコラボレーションで「銀河鉄道999」号を走らせたり、
更には全線高規格化の上、札幌発特急直通運転による北見・網走方面へのバイパス線化まで目論みひたすら頑張っていたが、
それでも止まぬ利用客の減少と膨大な赤字には勝てなかった。
平成18年4月20日、ふるさと銀河線は営業運転を終了し廃止される。

今から10年ほど前の春、当時大学生で北海道を休暇旅行中だった私は、
ちほく銀河鉄道の北見駅本社事務所を訪ねたことがある。
当時、ちほく銀河線を支えようと「ふるさと銀河線ファンクラブ」が発足し、支援会員を募集していた。
一口数千円で入会できて、好きな駅に星型のネームプレートを設置してくれた。
早朝に突然「ファンクラブに入りたいんですけど…」と訪れた貧乏旅行者を応対してくれた若い社員は
「どの駅にプレートを貼りましょうか?余り誰も来ないような駅?…それなら愛冠駅ですね。駅舎がハート型をしているんですよ」
と親切に応対してくれた。
私が九州から来たと告げると
「そんな遠くから…ありがとうございます!今度、愛冠駅にプレートを見に行って下さいね。それでは私はこれから保線に行かないと…」
とゲートルを巻いて事務所を出て行った。

あれから数回、実際に愛冠駅に自分のプレートを見に行った。
愛冠駅は確かに誰も来ないような原野の中にあり、周辺に人家がほとんどなかった。
列車の本数が少ないので、駅で降りてプレートを見た後も次の列車が来るまで数時間待ちになるが、
駅の周囲には全く人の気配がなく、零下10度近くまで下がった気温に駅前公園の噴水もボールペンのインクもすべてが凍りついた。
それでも駅舎の中に置かれた「駅ノート」は時々訪れる旅行者の熱いコメントで埋まっていて、
更によく読むとそれに応えてコメントの返事を書き込んでいる地元の人らしい書き込みがあった。
当時、まだインターネットのBBSなどない時代に既に「大学ノートと鉛筆」というローテク(ただし電源不要で零下数十度でも書き込める)の匿名不特定多数交流メディアが存在して機能していたのである。

今夜、最後の夜明けを待つ愛冠駅の待合室に、まだあの旅ノートはあるだろうか?
そして私の名前を刻んだプレートは、明日最後の列車を見送った後はゆっくりと北海道の大地に還っていくのだろうか…



コメントを投稿