常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

二百十日

2020年09月02日 | 日記
立春から数えて二百十日、9月1日にあたる。稲は田植えの関係もあったのか、この頃に花を咲かせた。田を見るとこの地方では、今では花は終わり、実が入って米ができつつある。しかし昔は、米の花の季節と、台風の季節が重なる。ここで大風が吹いては、米の受粉もうまくいかない。そこで、農民たちは祈るような気持ちで、稲の花が終わるまで無事に過ぎることを願った。

枝少し鳴らして二百十日かな 尾崎紅葉

紅葉の句は、農民のそんな気持ちを斟酌して詠んだものだ。台風9号は沖縄から九州をかすめ、朝鮮半島へと向かっている。今朝は、朝から日が出て、蝉しぐれとなった。太平洋高気圧が優勢であれば蝉、大陸からの高気圧が優勢になれば草むらで虫の音が高くなる。夏の蝉と秋の虫が二百十日にせめぎあう。

ところで昨日書いたレイモンド・カーヴァー。彼は詩人でもある。「夜になると鮭は」と題する一篇を紹介する。翻訳、村上春樹。

夜になると鮭は
川を出て街にやってくる
フォスター冷凍とかA&Wとかスマイリーレストランといった場所には
近寄らないように注意するが
でもライト・アヴェニューの集合住宅あたりまではやってくるので
ときどき夜明け前なんかには
かれらがドアノブをまわしたり
ケーブルテレビの線にどすんとぶつかったりするのが聞こえる
僕らは眠らずに連中を待ちうけ
裏の窓をあけっぱなしにして
水のはね音が聞こえると呼んでみたりするのだが
やがてつまらない朝がやってくるのだ

村上春樹の小説にも、空から魚が降ってくる怪奇現象が描かれる。カーヴァーのこんな詩が刺激となって、村上の小説世界が作られているかも知れない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする