常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

九月

2020年09月01日 | 登山
月が変わると、気分も一新する。耐えられない暑さから、この二日ほど抜け出た感じがする。折から台風が、連続して朝鮮半島方面へ。台風は新しい季節の使者なのか、九月の声を聞いて、やはり秋の到来を実感する。アメリカでは、大統領選挙が本格化し、日本では首相辞任で、新しいリーダー選びが始まった。アメリカオレゴン州ポートランドで、人種差別撤廃デモの激化が報じられている。この騒動のなか発泡事件で白人1名がの死亡。いつになったら、この社会の差別問題は解決するのか。今日、知人の二つの訃報に接した。同じ場所で生をともにした知人たちが、また一人、二人と去っていく。

オリオンを九月の深夜見るかなしさ 相馬 遷子

人生には不思議な邂逅がある。キーワードはオレゴン州ポートランド。行ったことも見たこともないアメリカ西海岸の街だ。先月の末から、新聞やテレビのニュースがこの街の高揚したデモの様子を伝える。私の本棚の一冊の小さな文庫。レイモンド・カーヴァー『夜になると鮭は』という短編集に収められている「ヴィタミン」の一節。不況で仕事がうまくいかなくなった女性との別れのシーンである。

「これからどうするんだい?」と僕は彼女にたずねた。「ポートランドに行くことになるかもね。」と彼女は言った。「ポートランドには何かあるのかしら。最近はみんな何かといえばポートランド。ポートランドの絵はがき、ポートランドがどうしたがどうしたポートランドがこうした。ポートランドだってどこだってかまやしないわ。なんだってみんな同じよ。」

ネットを見ると、ポートランドは「住みたい街№1」と喧伝されている。治安もよく、消費税のない買い物の街、スポーツのナイキやコロンビアの本社もある。カーヴァーの時代、この街は職を失った若者たちが一旗あげるのに適した新興の街だったらしい。カーヴァーは1938年にオレゴン州で生まれた短編小説の名手。翻訳は村上春樹である。この短編集を読んでいくと、アメリカに生きる人々の本音が伝わってくる。その街でいま、アメリカの社会をゆるがせるようなデモが起こっている。大統領選挙の行方はどうか、結論はあと2ヶ月後に示される。
コメント
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