常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

冬の青空

2018年11月21日 | 日記

札幌で初雪、瀧山にはうっすらと刷毛ではい

たような雪。冬の青空は、寒い季節を連れて

来る。昭和34年、初めて山形で迎えた冬。隙

間風が入って来る部屋にある暖房は、4、5人

で囲める火鉢がひとつだけ。物置の炭を取っ

て来て、炭火が暖かくなるまでじっと寒さに

耐えていた。夏目漱石の『永日小品』に、「

火鉢」という小品がある。明治41年、漱石42

歳の時の作品である。当時の東京もまた寒さ

に耐えつつ過ごす冬であった。

「火鉢に手を翳して、少し暖っていると、子

供は向うの方でまだ泣いている。其うち掌丈

は烟が出るほど熱くなった。けれども、背中

から肩へ掛けては無暗に寒い。殊に足の先に

は冷え切って痛い位である。だから仕方なし

にじっとしていた。少しでも手を動かすと、

手が何処か冷たい所に触れる。それが棘にで

も触った程神経に応える」

漱石の2歳になる男の子は、冬の間よく泣い

た。妻は、寒いから泣く、と答えている。明

治時代、日本の冬は、誰もが寒さに耐えて冬

が過ぎていくのをじっと待った。昭和34年の

学生寮もまた同じであった。

ニッケルの時計とまりぬ寒き夜半 漱石

コメント (2)
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