常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

大岡山

2018年11月29日 | 登山

里山も冬の準備に入った。山道には、うず高

く落ち葉が散り敷いている。落ち葉を踏みし

めて山路を歩くと、その上に雪が降り積もる

のは、もうすぐだ。夏から秋へ、木々の葉が

茂って里山の道は薄暗いが、葉が散ってしま

うこの季節は、山全体が見違えるように明る

くなる。

山形市館山地区にある大岡山は標高401m、

国道13号線を天童へ向かうと、お椀を伏せた

ような台形の山だ。もうすぐ12月だというの

に今年の秋は長い。日当たりのよい田んぼに

はたくさんのトンボがしきりにとんでいる。

田の周りの堰には、小さな魚が無数に泳いで

いる。フナかハヤか、あるいがタナゴか、少

年の頃を思い出すようような光景が山の麓に

広がっている。風間不動から一気に急坂にか

かる。カサカサと枯れ葉を踏む足音が心よい。

 

登り口から急坂を20分ほど登ると、頂上に着

く。頂上で休憩していると三々五々、登って

来る人に出会う。少し話しかけると、気さく

に答えてくれる。一日も休まずに毎日登ってい

るという。山形百名山のテレビ取材で、出演し

たか、聞いてみた。顔を出さず、インタビュー

にだけ答えたた、とのこと。登り始めの時、お

不動さんから頂上のあと、七曲りを経て下る予

定であった。頂上で、常連のおじさん達の話で

旧松茸山を経て、黄金山神社の方へ下ることを

勧められた。随分以前、その神社の方から登っ

たことを思い出した。帰りは勧められた道を下

ることにする。頂上で出会った人たちは、高齢

だが無駄肉のないいかにも元気そうな人たちで

あった。勢い、年齢の話になる。私は昭和16年

と言うと、二つ先輩の14年だよという答えが返

ってくる。再開を約束して、尾根道を松茸山へ

向かう。所々に古い松の木がある。名前の通り

この山でも、かっては松茸が採れたのだろう。

足元に積もった木の葉が枯れて、その上を歩く

とカサカサと乾燥した音が山に響く。マッチで

火をつけると、たちまち山火事になりそうな乾

燥である。 

松茸山から黄金山神社への下りは、なだらかな

長い道。ナナカマドやモチノキの赤い実が、葉

のない山を彩っている。下山口から、車を停め

た駐車場まで田んぼのなかの道を歩く。湿地の

日当たりのいい場所に飛ぶトンボ、季節を追う

ように飛び回っている。ふと藪のなかを見ると

蒲の穂が無数に残っている。このな景色を見る

のは何十年ぶりだろう。懐かしい風景だ。田に

はヒコバエが畝をなし、一部の田は来春に向け

て耕されている。

  おかん      坂本遼

久々のふるさとに帰れば

碾臼などひきたまふ母なり

田舎じやけん何もないけん

では明日はそばきりをこさへて上げよう。

暗い土間におりたちて

母は碾臼をひきたまふなり

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする