常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

山寺

2018年11月10日 | 登山

山寺といえば、慈覚大師が開山した立石寺を擁

する東北の叡山とも言われる宗教の地。奥のほ

そ道の旅で、松尾芭蕉も訪れた県内屈指の観光

地である。10年ほど前、高校時代のクラス会を

この地で開き、階段を登って奥の院まで歩いた

思い出の地でもある。山寺の駅に降り立つとす

ぐ目に飛び込んでくるのが、怪奇な形をした凝

灰石がむき出しの山肌に、張りつくような奥の

院。この度選ばれた山行のコースは、仙山線の

電車でひと駅の奥山寺から、紅葉川渓谷の沢沿

いの細道を歩くコースだ。

今回の企画と案内役は、この地で長く働いた

Mさん。駅の前にある橋を渡り、渓流に着く

と写真のような橋や吊り橋が数多くある。写

真を注視してもらえば、橋の下の左手に黄色

い落ち葉の積もった細い沢道が見える。道は

地形を選んでついているので、絶えず沢の端

を変えている。そのために、多くの簡易橋を

必要としている。その道は細く、濡れた落ち

葉に滑って転倒すれば、冷たい水のなかに

ちてしまう。

本日の参加者は13名。うち男性5名。この地

に精通したMさんの案内がなければ見ること

のできない多くのビューポイントがあった。 

渓流に沿った道は、変化に富んだ景観がふ

んだんにある。奇岩の奥の紅葉、そして清

流はあくまでも澄みわたり、渕にはイワナ

が泳ぐ姿が見てとれる。昭和34年、初めて

山形へ来たとき乗った仙山線の汽車の窓か

らみた、この川の清流に感動したことが脳

裏をかすめる。山行でこれほど近くに渓流

を見ることは滅多にない。時の流れは60年

を経ているが、この渓谷の姿は悠久で、少

しも変わらないように感じる。

渓流の傍を歩くのが終わり、二番札所の千住

院へ行く。立石寺から東へ600m、仙山線の

線路を跨いだ山側にお堂がある。歴史家の研 

究でこの辺りに根本中堂の草創時の遺構が見

つかったと言われている。そうとすれば、こ

の辺りが立石寺の中心があったのかも知れな

い。そのお堂を抜けて山へジクザクの道を進

むと、奇岩の修験場のような場所に着く。岩

には蜂の巣のような穴が無数にある。凝灰石

の岩は風雨など自然の侵食によってこのよう

な景観になるが、祠がわりに利用したものと

見え、神仏への祀りものが置かれている。

「岩に巌を重ねて山とし、松柏年旧り土石老

いて苔清らかに、岩上の院々扉を閉じて物の

音聞えず、岸を巡り岩を這ひて仏閣を拝し、

佳景寂寞として心澄みゆくのみ覚ゆ」芭蕉が

書いた『奥のほそ道』の山寺の項には、こう

記されている。

芭蕉記念館の前にある営業を止めた店の前で

昼食。食後、この裏にあるアイスヒル・馬口

岩へ。登ること小1時間、頂上付近の展望台

からは二口峠から小東、糸岳、面白山など山

並み、山寺集落の全貌、そして終わりに近づ

いた近隣の木々の紅葉が見られた。鎖場を通

り、くぐり岩から洞窟。このコースも変化に

富んで面白い。途中、地元の女性の案内でこ

のコースを巡った若者グループに会った。自

然に触れてきたグループ同士はすぐに打ち解

ける。山形からこんなにも近い場所にある自

然の宝庫はもっともっと多くの人に知っても

らいたい。

コメント
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